バーチャルオフィスとは?
一つの住所や場所を共同で利用するオフィスには、バーチャルオフィス以外にもいくつかの種類がありますので、その種類と概要をご説明いたします。
レンタルオフィスの種類と概要
◆バーチャルオフィスは、事務所の住所のみを提供するサービスです。
「スペースは必要ないが住所だけ欲しい」、「自宅を事務所の住所にしたくない」などの場合に便利です。
◆レンタルオフィスとは、固有のデスクとイスを持ち、コピー機などの設備は他の利用者と共有して利用できるタイプのオフィスです。
スペースが独立しているため、プライバシーがある程度守れる、集中して業務ができるという特徴があります。
◆シェアオフィスは、施設の設備だけでなくデスクやイスも不特定の人間とシェアするタイプのオフィスです。
専用スペースがなく、施設のすべてを共有するところが、レンタルオフィスとの大きな違いとなります。
それぞれのタイプについてこのような違いがありますが、中でもバーチャルオフィスは、住所だけで、施設や設備を利用しない、もっとも簡易なものとなります。
最近はバーチャルオフィスにも様々なオプションがついている場合もありますので、各社比較して検討してもてください。
レンタルオフィスやバーチャルオフィスなどを利用する際には、次のような手続きや書類が必要となります。
① 電話・メールで問い合わせ
② 現地見学 ※レンタルオフィスの場合
③ 利用申し込み
④ 審査 ※バーチャルではない場合もあり
⑤ 契約手続き、初期費用の支払い
⑦ 利用の開始
また、申込み際の必要書類としては、次のようなものがあります。
〈個人〉
・身分証明書 ・印鑑 ・事業内容のわかるもの
〈法人〉
・身分証明書 ・印鑑 ・印鑑証明書 ・履歴事項証明書 ・事業内容のわかるもの
※バーチャルオフィスでは、これより簡易な手続きでOKのところもあります。
バーチャルオフィスを利用するメリットとデメリット
企業がバーチャルオフィスを利用する場合のメリットやデメリットとしては、次のようなものがあります。
メリット
① 自宅以外の場所を住所にできる
起業した場合に、自宅を事務所にできればよいですが、さまざまな事情によりそれが難しいことがあります。
また、女性については、防犯上の問題から自宅を住所にしたくないというニーズも少なくありません。
しかし、バーチャルオフィスであれば、自宅以外に住所を持てるため、これらの制約を気にすることなく事業を開始することができます。
② 利用のコストが安い
バーチャルオフィスの場合には、レンタルオフィスなどと比べても初期費用やランニングコストが安く、数千円程度で利用が可能です。
そのため、事務所の賃貸にかかるコストを他の運転資金や設備資金に充てることが可能となります。
③ すぐに利用できる
リアルの事務所の場合は、内見や契約手続き、設備の工事、備品の配備などの手間がかかるため、事務所を決めてから利用できるようになるまでに1ヶ月程度の時間が必要となります。
しかし、バーチャルオフィスの場合には、契約手続きと利用料の支払いだけで済むため、最短、当日から利用することができます。
④ 立地の良い場所を住所にできる
銀座や渋谷といった高級地にリアルな事務所を設けようとすると、それだけで数十万から数百万円の資金が必要となります。
しかし、バーチャルオフィスの場合には、非常に安い費用で一等地に事務所の住所を持つことができるだけでなく、顧客に対するイメージアップともなります。
⑤ 付帯設備が利用できる
施設によっては、追加の費用を支払えば、バーチャルオフィスの会員でも会議室やラウンジ、秘書サービスなどといった付帯設備やサービスの利用を受けることができます。
⑥ オフィスによっては銀行の紹介が受けられる
一部の施設では、利用会員向けに提携先の金融機関の紹介を行っているところもあり、バーチャルオフィスの会員であっても、銀行の口座を作りやすくなります。
デメリット
① 自分の専用スペースがない
バーチャルオフィスは住所のレンタルなので、自分専用のスペースがありません。
そのため、そこで作業ができないだけでなく、社員などを在駐させることもできません。
② 取引先にマイナスのイメージを持たれやすい
バーチャルオフィスは、疑似オフィスというイメージを持たれることが多いため、住所がレンタルオフィスの場合には、取引先から不信感を持たれることや顧客にマイナスイメージを持たれる可能性があります。
③ 一部の許認可が取れない
一部の許認可(宅建業など)では、許認可の取得要件として、一定の広さの事務所を持っていることが条件となっていることがあります。
そのため、バーチャルオフィスでは、これらの許認可を取得することができません。
④ 郵便物の受取りがスムーズにできない
バーチャルオフィスでは、会社当ての郵便物は、バーチャルオフィス上の住所に届いたものが自宅や指定場所に転送されるシステムとなっています。
そのため、郵便物の到着に通常よりも日数がかかります。
⑤ 急な来客や会議に対応できない
バーチャルオフィスでは、あらかじめ予約をすれば、付属の応接室や会議室を利用することができるケースがほとんどです。
しかし、急な来客や会議の必要が生じた場合には、すぐに対応することができないため、別の場所を探さなくてはならなくなります。
バーチャルオフィスで銀行融資は受けにくい?
バーチャルオフィスでは融資を受けにくいという話がありますが、それは本当でしょうか?
一部の銀行等では、借入人の住所がバーチャルオフィスの場合には、融資が受けにくくなるケースがあるといわれています。
創業融資で代表的な日本政策金融公庫では、住所がバーチャルオフィスであっても融資の利用ができますが、一部の金融機関ではバーチャルオフィスであることが融資の際に問題となるケースがあるようです。
もし、それが融資申込前の段階でわかれば、他の銀行に申し込むなどという方法で対応ができますが、融資審査の段階でこのようなことが問題となると、そのために新たな住所を探さなければならなくなる可能性があります。
また、事業を始めてから、本店を変更する場合には、新たな契約手続きや賃料等が必要となるだけでなく、法人のケースでは本店移転登記もしなければならないため、時間もコストもかかります。
バーチャルオフィスでも融資を受けやすくする方法
バーチャルオフィスへの融資に一部の銀行等が消極的な理由としては、バーチャルの住所で登記をした法人の実態がつかみづらいということがあります。
しかし、その場合には、次のようなことを実行すれば、融資を受けやすくなる可能性があります。
① 知り合いや税理士経由で紹介してもらう
銀行等の金融機関では、これまでに取引のない方をとても警戒します。
なぜなら、その方の素性がわからないだけでなく、犯罪に加担している可能性もないとはいえないからです。
そのため、これまで取引がなかった方については、融資も難しくなりやすいのですが、これを解決する方法があります。
それは「その銀行等を利用している方や、税理士の紹介を受ける」ということです。
自行の顧客の紹介であれば銀行としても安心できるため、必要以上に警戒されることがなくなります。
また、税理士は国家資格を持っているので信用できるというだけでなく、職業柄、いろいろな金融機関につながりを持っています。
そのため、その税理士の取引先の銀行等へ紹介してもらうとともに、融資の申込みのサポートなどをしてもらえば、さらに銀行等の警戒心を解きやすくなります。
② 事業計画書により、不安を払しょくする
その銀行等を利用している知り合いや税理士がいない場合には、融資を申し込む際に作成する事業計画書によって信用してもらうという方法があります。
>>>日本政策金融公庫の事業計画書、融資審査の重要書類の書き方と記入例
銀行等が警戒するのは、その申込人の経歴やこれから何をしたいのかがわからないということも理由として挙げられます。
先にバーチャルオフィスということを自分から説明した上でシッカリとした事業計画書を作成して、これまでの実績や計画の内容を評価してもらえば、警戒心がなくなり融資が受けやすくなる可能性があります。
バーチャルオフィスの住所で融資が受けられるかどうかは、銀行等によって異なりますが、バーチャルの住所だからダメというところは少数です。
しかし、万が一のムダ手間を避けるためにも、具体的な手続きを進める前にバーチャルオフィスでも、問題がないかを確認しておきましょう。
銀行融資ではバーチャルオフィスで銀行法人口座が開設できることが前提
法人が融資を受けるときには、原則として、その銀行等で口座を作る必要があります。
なぜなら、融資後の返済金を引き落とすための口座が必要となるからです。
そのため、何らかの理由でその銀行等での口座開設ができない場合には、融資も難しくなってしまいます。
けれど、一部の銀行等ではバーチャルオフィスの住所では、口座の開設を認めてくれないケースもあります。
なぜこのようなことになったかといえば、それは「マネーロンダリング」と関係があります。
マネーロンダリングとは、反社会的勢力が犯罪などにより入手した資金を、通常の取引で利用できるように洗浄する行為をいいます。
普通、反社会的勢力が犯罪などにより入手した資金は、その出所に問題があるため、健全な取引で使用することができません。
しかし、それでは、その資金を使えなくなってしまうため、いったん資金を金融機関の口座に入金することで、その出所をまともなものと見せかける手口がマネーロンダリングです。
マネーロンダリングでは、一般の人間に作らせた口座や新規に設立した会社の口座を利用する手口が多く行われたため、これにより金融取引を大きく混乱する事態を引き起こしました。
そのため現在では、金融機関はその口座がマネーロンダリングや反社会的組織の代理で作られたものでないことを厳しく確認するようになったため、新規の口座は非常に作りにくくなっています。
なお、これまで銀行等と何の取引もなかった会社が新規に口座の開設を申し込んだ場合には、お断りされるか、仮に口座の開設ができる場合でも数週間〜1ヶ月以上の時間がかかることも珍しくありません。
もし、融資が決定した後に、バーチャルオフィスであることが理由で口座の開設ができないことが明らかになると、その後の手続きに支障をきたすため、あらかじめ融資を受ける銀行等に確認することをおすすめします。
どのような機関ならバーチャルオフィスで融資が受けられる?
バーチャルオフィスで融資を受ける場合の各金融機関の対応は、以下のとおりとなります。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫では、バーチャルオフィスが住所となっている場合でも、問題なく融資を受けることができます。
ただし、住所が実態と合っていない場合(ある程度の広さが必要な事業なのに、そのための場所がないなど)には、それが問題となることはあります。
また、住所がバーチャルオフィスとなっている場合であっても、融資審査のときには「賃貸契約が結ばれているか?」、「表札等があるか?」などということは調査されます。
信用保証協会
制度融資を利用する場合には、信用保証協会の審査を受ける必要がありますが、その場合でも住所がバーチャルオフィスかどうかは、ほぼ問題とはなりません。
しかし、信用保証協会は都道府県ごとに設立され、またその運営や融資の中身もそれぞれで異なるため、一部の地域では問題とされる可能性もあり得ます。
その他の金融機関
最近では、都銀や地銀、信用金庫などといったその他の金融機関で融資を受ける場合にも、住所がバーチャルオフィスであることが問題となることは少なくなっています。
しかし、この部分については金融機関やその支店ごとで判断が異なるため、中にはそれが問題となる場合もあります。
以上のように、最近ではバーチャルオフィスであることが融資に影響することは少なくなっていますが、基本的にはその金融機関や支店ごとの判断となります。
バーチャルオフィスで銀行融資を受けるときの必要書類
住所がバーチャルオフィスの場合でも、基本的には融資で必要となる書類に違いはありません。
具体的には、以下の書類が必要となります。
・本人確認資料
申込みの本人確認資料として、免許証、健康保険証などの原本を提出します。
・借入申込書
借入申込書は、融資の申込みをするときに金融機関へ提出する書類です。
銀行ごとに用意されている様式のものを利用して、「企業の基本情報」や「希望の申込額」、「資金の使い道」などについて記載します。
・創業計画書
はじめて事業をされる方が、創業融資を申しむときに提出します。
フォーマットは、それぞれの金融機関で異なるため、融資を申し込む金融機関のものを利用します。
・企業概要書
一部の銀行などでは、その企業の基本的な情報やこれまでの経歴をまとめた企業概要書の提出を求められることがあります。
・法人の履歴事項全部証明書(旧商業登記簿謄本)
履歴事項全部証明書は、会社について現在効力のある登記事項を記載した書類です。
一般的に、登記簿謄本といわれているものがこれにあたります。
これと似たものに「登記事項要約書」というものがありますが、これは登記事項の閲覧に代わるものとして発行されるもので記載の内容が異なります。
したがって、こちらではなく「履歴事項全部証明書」を提出するようにしてください。
・賃貸借契約書
事業を行う場所に関する賃貸借契約書を提出します。
この場合、自宅で事業をする場合には自宅の賃貸借契約書が、オフィスやテナントを借りて事業をする場合にはその場所の賃貸借契約書が必要となります。
・2~3期分の確定申告書または決算書
銀行等には過去2~3期分の確定申告書(個人の場合)または、決算書(法人の場合)を提出します。
なお、決算書は、貸借対照表と損益計算書だけでなく、すべての書類を提出するようにします。
・月次試算表
通常、決算月から6ヶ月以上の期間を経過している場合は、月ごとに作成された試算表の提出が必要となります。
ただし、試算表は必ずしも税理士が作成したものでなくても構いません。
また、試算表を作成できない場合は、月ごとの売上げと経費を勘定科目ごとにまとめた資料でも代用できます。
・納税証明書
融資の申し込みの際には、キチンと納税ができているかの確認のため「納税証明書」を提出します。
納税証明書にはその1からその4までの種類がありますが、銀行等の指定したものを用意します。
・印鑑証明書
個人については個人の印鑑証明書が、法人については法務局で発行する法人の代表印の印鑑証明書が必要となります。
・資金使途確認資料
融資の申し込みでは、資金使途を確認できる資料を求められるのが普通です。
資金使途とは、「具体的にどのような用途に融資の資金を使うのか?」をいい、これを証明する資料しては契約書、発注書などがあります。
・資金繰り表
資金繰り表とは、半年~1年先までの資金の出入りの見込みをまとめたものです。
貸借対照表や損益計算書では、決算日における利益を確認することはできますが、今後の見通しや現金の流れはわかりません。
しかし、資金繰り表では、現金の流れや今後の入金と支出の状況を予測することができるため、提出を求められることがあります。
・見積書や導入する設備の資料(設備資金を借りる場合)
設備を購入する場合には、その設備に関する見積書を提出します。
ただし、生産設備などの購入のために融資を申込む場合には、さらに詳しい資料として、その設備のスペックや価格、仕様などを記載した資料を求められることがあります。
・銀行取引一覧表
融資を申込む銀行以外に、すでに取引をしている銀行等がある場合には、その取引の内容を記載した資料(銀行等が発行する償還表など)が必要となります。
・会社パンフレット、役員・株主名簿等
融資申し込みのときには、会社パンフレット、役員・株主名簿等を求められることもあります。
ただし、会社パンフレットがなくとも、HPをプリントアウトしたもので代用できるケースもあります。
・担保関係資料(担保を提出する場合)
融資で担保を提供する場合に、担保となる土地や建物の履歴事項全部証明書や固定資産の評価証明書などを提出します。
まとめ
バーチャルオフィスは、「安い金額で利用できる」、「自宅を住所にしなくてもよい」などといったメリットがある反面、「自分の専用スペースがない」、「取引先にマイナスのイメージを持たれやすい」などのデメリットもあります。
バーチャルオフィスを利用する場合には起業する業種や取引する会社、顧客との関係を含めどういったオフィスが良いか検討した上で決めると良いでしょう。
また、一部の銀行等においては、住所がバーチャルオフィスの場合には、融資の際に問題となるケースもあります。
したがって、住所をバーチャルオフィスにする場合には。そのメリット・デメリットをよく考えた上で、あらかじめ銀行などにも確認するようにしましょう。