どうして銀行融資の流れを知っておく必要があるのか?
銀行融資を受ける際、何も調べずにとにかく銀行に行けば良いと考えている方がいるかもしれません。
しかし、それは大きな間違いです。事前にしっかりと調べ、流れを把握しておくべきです。
では、銀行融資を申し込むにあたって、どうして流れを知っておく必要があるのでしょうか。
融資の流れを知っておくことで銀行に対して臨機応変な対応が可能
融資の流れを知っておけば、銀行に対して臨機応変な対応が可能です。
融資は借金ですので、国による補助金などとは異なり、返済の義務があります。
銀行は事業者を審査し、信頼できると判断した場合にのみお金を貸します。
審査においては、事業が長期的に継続できる見込みがあるかが重要になります。
その判断材料になるのは、売上実績や事業計画書などの書類です。
そういった書類に加え、事業主の人間性も踏まえて融資の可否が決定されるのです。
誰にでも簡単に融資を実行するわけではなく、慎重に検討されます。そのため、時には追加書類の提出を要求されるケースもあり、臨機応変な対応が必要になります。
銀行融資の流れSTEP1 申込みする銀行を選ぶ
まずは融資の申し込みをする銀行を選びます。
借入予定の銀行が自社に合っているかよく確かめる
融資を受ける際には、借入予定の銀行が自社に合っているかよく確かめることが大切です。
自社の事業規模や借入予定の融資額を基準として、適切な銀行を見定めてください。
例えば、中小企業や個人事業主の場合、信用金庫から融資を受けるのがおすすめです。
メガバンクをはじめとした多くの銀行は、利益追求を優先するため、小規模事業者とはあまり積極的に取引を行いません。
大手銀行の方が信用できるという考えで申し込んでも、審査に落ちる可能性が非常に高いです。
一方、信用金庫は地域に根付いた金融機関であり、小規模事業者とも取引を行います。
起業したばかりでも、事業計画書や資金管理表を丁寧に作成して提出すれば、融資を受けられる場合が多いです。
融資を受けた後も事業に関する相談ができるため、中小企業や個人事業主の方は信用金庫を利用しましょう。
一方、大企業の場合、メガバンクから融資を受けるのがおすすめです。
大企業で大きい金額を融資する場合、金利を優遇してもらえる場合があります。
利益になる取引を行う事業者には、良い提案をするのがメガバンクです。
社会的信用がある企業であれば、億単位の融資も受けられるため、大企業の方はメガバンクを利用しましょう。
事業規模や借入予定の融資額を踏まえ、自社に合った銀行を選んでください。
どのタイプの融資を借りるかの検討
融資の申し込みをする銀行を選んだら、どのタイプの融資を借りるかを検討してください。
融資には様々なタイプがあり、審査期間や借入金額の上限などが異なります。
例えば、信用保証協会の保証付き融資というものがあります。
この融資では、全国信用保証協会連合会が保証人になります。
仮に返済ができなくなった場合、信用保証協会が代わりに立て替えてくれるのです。
しかし、借入金額に応じて信用保証料を支払う必要があり、利用条件もあるため、安易に選ぶべきではありません。
審査期間は1ヵ月~1カ月半程度で、借入金額の上限は2億8,000万円です。
また、プロパー融資というものもあります。
この融資では、信用保証協会の保証はなく、事業者が直接銀行からお金を借りる形になります。
信用保証料を支払う必要はありませんが、審査が厳しく、融資を受けるまでに時間がかかります。
基本的に短期で返済しなければならないため、どうしてもお金が必要な場合にのみ利用しましょう。
審査期間は2~3週間程度で、借入金額の上限はありません。
他にも売掛債権担保融資や不動産担保融資などがあり、審査の厳しさや借入金額の上限に違いがあります。
長期で借りるのか短期で借りるのか、借入金額をいくらにするかを明確にしたうえで、どのタイプの融資を借りるかを検討してください。
銀行融資の流れSTEP2 銀行に融資を申込む
次に、銀行に融資を申し込みます。
融資面談の実施
融資を申し込んだら、面談が実施されます。面談では、いくつかの質問を受けます。
一つ目の質問は、融資の使い道についてです。
何に使うか分からない人にお金を貸せるわけがありません。
運転資金なのか、設備やITツールの導入に使うのか、具体的な用途を明確にする必要があります。
当然事業に適した使い方を提示しなければならず、曖昧な回答をしてしまうと、融資を受けれなくなるため注意してください。
使い道だけでなく、融資を活用することで、どれくらいの費用対効果があるのかを説明できると良いでしょう。
二つ目の質問は、返済の見通しについてです。
使い道に応じて、返済方法や返済期間が決定されますが、返済の予定が具体的であればあるほど、融資を受けられる可能性が高くなります。
例えば、ウェブ制作事業の場合です。
既に大型案件の契約が決まっていて、4ヶ月後に制作代金が入金される予定であり、そのタイミングで返済する。
こういった具体的な入金予定があれば、返済できると判断してもらえるでしょう。
一括での返済が難しい場合は、より細かい計画を立てなければなりません。
毎月の売上の中からどれくらいの金額を返済し、いつまでに完済できるか。
売上データなどを参考に、現実的な数字を提示することが重要です。
三つ目の質問は、自己資金がどれくらいあるかについてです。
自己資金が多ければ多いほど、計画的に事業の準備を進めてきたという好印象を与えられます。
起業して間もない事業者は、しばらく収益が不安定になるのは当たり前です。
しかし、それも踏まえて自己資金を用意できていれば、計画性があると判断されます。
これらの質問にしっかりと答えられるよう、入念に準備してください。
審査に必要な書類の提出
審査にはいくつかの書類を提出する必要があります。
法人と個人事業主では、書類が異なりますので注意してください。
法人の場合、次のような書類が必要です。
・経営計画書
・登記事項証明書
・資金用途資料
・決算書
・試算表
・資金繰り表
・銀行取引一覧表
・納税証明書
・借入申込書
・印鑑証明
これらの書類を参考に、審査が行われます。
個人事業主の場合、次のような書類が必要です。
・事業計画書
・試算表
・損益計算書
・貸借対照表
・資金繰り表
・銀行取引一覧表
法人でも個人事業主でも重要なのは、経営計画書及び事業計画書です。
決算書や資金繰り表など、現在の状況を表す資料をもとに、どういった事業のビジョンを描いているのか。
それを明確に示せるかどうかが鍵になります。
銀行融資の流れSTEP3 審査を受ける
銀行融資を申し込んだら、次は審査を受けます。審査においては、いくつか注意点があります。
審査の注意点①支店決裁と本部決裁があることに注意
一つ目の注意点は、支店決裁と本部決裁があることです。
決裁が支店で行われるか、本部で行われるかの基準は各銀行によって異なります。
一般的には、融資金額が大きければ本部で決裁され、小さければ支店で決裁されます。
支店決裁の場合は、融比較的容易に融資が認められます。
小さい金額の案件に関しては、上層部の承認を得る必要がないケースが多いためです。
金利や融資年数などに関する融通も利きやすいですが、融資額の上限が決まっています。
本部決裁の場合は、大きい金額の融資を受けられる可能性が高いです。
大企業は基本的に本部で決裁されることが多く、億単位の融資も可能です。
しかし、本部の審査は支店よりも厳しいと言えます。
上層部も目を通すため、確認する人の数が増え、承認が降りないというケースがあるのです。
融資額が大きいと本部決裁になり、否認される場合があることを覚えておきましょう。
審査の注意点②財務状況が悪ければ通らない可能性がある
二つ目の注意点は、財務状況が悪ければ通らない可能性があることです。
直近の数ヶ月間、売上が落ちていて、赤字が続いているようであれば、承認が降りにくくなります。
十分な利益を出せていない事業者に、積極的にお金を貸したい銀行はありません。
売上が伸びていて黒字続きでも、財務状況が良好なことをアピールする必要があります。
そのためには、審査までに自己資本比率を上げておくのが有効です。
自己資本比率は、総資産(資本+負債)のうち自己資本がどれくらいの割合を占めるかを示す指標です。
審査に備えて、申請する前から計画的に準備することが大切です。
融資を受ける前にコストを削減し、キャッシュを増やしたり他の融資を前倒しで返済したりして、自己資本比率を上げておきましょう。
審査の注意点③審査にかかる時間が長いこと注意
三つ目の注意点は、審査にかかる時間が長いことです。
融資のタイプにより審査期間は異なりますが、早くても2週間、遅ければ2ヶ月程かかる場合があります。
事業者のあらゆる情報をもとに判断するため、致し方ないことなのです。融資額が大きいと、その分時間がかかります。
審査が完了するまで入金されることはありませんので、余裕のある資金計画を立てておいてください。
1ヶ月で融資を受けられると思い込み、それを前提に仕事を進めていたら大変なことになります。
仮に審査に落ちたとしても、しばらく経営を維持できるようにしておきましょう。
融資はあくまで補助的なものという認識を持っておくべきです。
銀行融資の流れSTEP4・融資の契約をする
審査に通ったら、融資の契約をします。
契約する際には、注意すべきことがあります。
契約の注意点
契約において注意すべきなのは、金利です。融資を受ける場合には、必ず金利がかかります。
銀行にとってお金を貸すのは商売であり、利子を受け取ることで利益を出しているのです。
金利がかかるのは当然ですが、どれくらいの金利での契約になっているかを必ず確認するようにしてください。
小規模事業者にもかかわらず、審査に通って多額の融資を受けられる場合、金利が高く設定されている場合が多いです。
例えば、1,000万円の融資で金利が年間3%だとすると、毎年30万円の利子を支払わなければなりません。
融資を受けてから1年以内に事業が成功し、売上が伸びて業績が良くなれば、30万円の利子も安いと捉えられるかもしれません。
しかし、事業がうまくいかず業績が悪化した場合、30万円の負債が追加で増えたように感じてしまいます。
融資を受ければ、直近の資金状況を安定させられますが、利子という名の負債が増えることを頭に入れておきましょう。
金利の相場は金融機関によって異なります。
銀行の金利は消費者金融などよりも低いと言われていますが、事業者の財務状況や融資額によっては高くなる場合もありますので、注意してください。
銀行融資の流れSTEP5・融資実行
契約を締結したら、融資が実行されます。
実行されたからといって、終わりではありません。
融資実行後も引き続き銀行担当者と緊密な関係を築いておくことが重要
融資実行後も、引き続き銀行担当者と緊密な関係を築いておくことが重要です。
無事に受けられても、何が起きるか分かりません。1年間乗り切れると思っていても、突然売上が急落して、追加の融資が必要になる場合もあります。
具体例としては、新型コロナウイルスの影響で営業停止や時短営業に追い込まれた飲食店があります。
感染症が流行して、人と接触する仕事ができなくなるという事態を誰が予想できたでしょうか。
好調だった店舗ですら、強制的に売上を下げられてしまったのです。
こういった状況下においては、銀行担当者と緊密な関係があるかどうかが、店の継続の可否を左右するといっても過言ではありません。
パンデミック前に融資を受け、銀行と良好な関係を築けていた店舗は、きっと今も踏ん張っているはずです。
また、長期的な視点で考えても、銀行担当者と緊密な関係を続けるべきです。
融資の実行後、しっかりと売上を伸ばして金利も支払い、期日までに完済できれば、信頼できる事業者であるという実績を作れます。
その後また融資を申請する際、最初よりも低金利で、大きい金額でも問題なく審査をクリアできる可能性が高まります。
こういった観点から、融資実行後も引き続き銀行担当者と緊密な関係を築いておくことが重要なのです。
実行後、融資効果がどう現れているか、銀行に定期的に報告する
実行後、融資効果がどう現れているか、銀行に定期的に報告するようにしましょう。
審査が通ったということは、事業計画や資金繰りの正当性が認められたのです。
そのお墨付きの計画に沿って事業を展開すれば、売上を伸ばせるはずです。
順調な場合は、計画通りにうまくいっていることを報告します。融資を実行した事業者の調子が良ければ、銀行担当者も喜んでくれます。
さらに売上を伸ばすためにはどうすれば良いか、相談してみるのも良いでしょう。
また、融資を受けたにもかかわらず、業績が不調な場合でも報告してください。
うまくいかないということは、何かしらの原因があるはずです。
事業計画が良くなったのか、計画通りに進められていないのか、嘘を付かずに正直に伝えます。銀行担当者も責任があるため、一緒に打開策を考えてくれます。
自社のため、そして銀行担当者のためにも、定期的な報告が必要です。
まとめ
銀行融資の手続きの流れを知っておくことは大切です。
知っておくことで、銀行に対して臨機応変な対応ができるのです。
何も知らない状態で手続きを進めてしまったら、必要な書類などをすぐに用意できず、融資を受けられなくなる可能性があります。
銀行を選び、融資を申し込んで審査を受けた後、契約を締結する。
各プロセスにおいて、様々な注意点がありますので、必ず頭に入れておいてください。
融資において何よりも重要なのは、良い銀行担当者に出会えるかどうかです。
そのためには、自社に適した銀行を選ぶことが重要になります。
融資を借りる目的、必要な金額を明確にし、入念な準備をしたうえで申請を行いましょう。
書類を用意するには想像以上に時間がかかりますので、日頃から資金繰りをしっかり行い、計画的に融資を実行できるようにしてください。
銀行融資を受けることでピンチを乗り越え、少しでも事業が好転すれば幸いです。