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開業のための資金調達、必要額の目安、調達方法と注意点

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開業のための資金調達、必要額の目安、調達方法と注意点|資金調達メディアScheemeMAG(スキームマグ)
どんな事業であれ、開業をするときには多くの資金が必要となります。そのため自己資金だけで足りない場合には、融資などの方法で資金を調達しなければなりません。しかし、事前に「事業にどの程度の資金が必要となるのか?」、「資金調達の方法にはどのようなものがあるのか?」ということを把握しておかないと、 十分な資金を確保することが困難となってしまいます。 この記事では開業時に必要となる資金の調達方法と、資金調達をする際の注意点について解説いたします。
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開業資金の必要額とメリットとは?

効果的に資金調達をするためには、まずは自分の事業にどれくらいの資金が必要となるのかということが正しく把握できていなければなりません。この見込みがいい加減だと、開業後に資金が足りなくなってしまったり、または逆に不必要な借り入れをしてしまうことになります。

会社を設立して開業するとき

会社を設立して開業するときには、通常の開業資金の他に、法人設立の費用が必要となります。一般的に開業時には、以下のような経費がかかりますが、設立する法人の種類によっても金額に多少の差がでます。
■法人設立関連費用
・登録免許税(株式会社の場合15万円〜、合同会社の場合6万円) ※いずれについても資本金額×0.7%と比較した高い方の額となります
・公証人の定款認証手数料(5万円)
・収入印紙代4万円(電子定款の場合は不要)
・雑費 2,000~3,000円(定款の謄本代等)
・専門家への報酬 5万円~

■事業関連費用
<設備資金>
・内装工事費
・厨房機器
・備品
・看板代
・車両代

<運転資金>
・テナントの契約料(保証金、仲介手数料、礼金等)
・当座の家賃
・人件費
・仕入れ代
・水道光熱費
・宣伝広告費(チラシやHPの作成など)
・フランチャイズの加盟料(フランチャイズに加盟の場合)
・雑費

法人の設立費用は、設立する法人の種類により異なります。株式会社の場合、登録免許税は最低15万円からですが、合同会社の場合には6万円〜で済みます。また、合同会社の場合には、定款に公証人の認証を受ける必要がないため5万円の節約となります。なお、定款を紙で作成している場合は4万円の収入印紙代が必要となりますが、電子定款で作成した場合には収入印紙代は不要となります。(株式会社、合同会社ともに不要)
電子定款の手続きは個人でも電子定款作成キットを購入してこれを行うことができますが、作成キットの費用が2万円〜かかるため、一度の利用であれば専門家にまとめて手続きを依頼した方がよいでしょう。

なお、会社を設立して開業する場合には、次のようなメリットが考えられます。 
・税金が安くなりやすい 
一般的に、法人の方が節税しやすいといえます。例えば資本金1億円以下・所得800万円の法人に課せられる法人税は15%ですが、個人事業主の所得が800万円の場合の所得税は23%となるため、控除分を差し引いても個人の税額のほうが高くなります。
ただし、所得の額によっては、個人事業の方が税金が安くなることもあります。
・社会的な信用が高い
個人事業主は、法人と比べると社会的信用度が低いといえます。中には個人事業主との取引をしない、取引に制約を設けているといった企業もあります。
また、人材の採用などにおいても、法人には社会保険や年金の一部を企業が負担といった就業者側のメリットがあるため、人材を集めやすいといえます。
・経費にできる範囲が広い
法人の場合は、家族に給与を支払える、自宅を事務所にできる、退職金を支給できるなど、経費として認められる範囲が広くなります。とくに、家族への給与は、個人事業では青色専従者給与の届出をしたときにしか認められませんが、法人の場合は制限なく家族に給与を支払うことが可能なため、所得税や住民税の節税につながります。
・決算月を自由に決定できる
個人事業の場合は一律に12月が決算月と決められていますが、法人の場合はこれを自由に決めることができます。そのため、決算月を任意の月とすることで、初年度の営業期間を調整することが可能となります。
たとえば、開業月が10月の場合、個人事業では実質3ヶ月で決算を迎えることとなるため、売上げがあまりない場合には、その年の決算は不利となってしまいます。しかし、法人では、決算月を9月とすることで、初年度の営業期間をほぼ1年間とすることができます。
その他
法人の場合にはその他のメリットとして、相続税がかからない(ただし、経営者が所有していた株式には、相続税がかかる)、代表者と個人の責任が分離されるなどがあります。

また、日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用する場合には、代表者の連帯保証が不要になるという特典が使えます。
ただし、「赤字でも税金(法人住民税の均等割-7万円)」、「従業員の社会保険や年金を一部負担しなければならない」、「記帳や決算手続きが複雑になる」などのデメリットがあります。

個人事業主として開業するとき

個人事業の場合には、法人設立費用は不要ですが、それ以外の開業に必要な資金は法人の場合とほぼ同様となります。
個人事業で開業する場合には、次のようなメリットが考えられます。

簡単な手続きで開業できる

個人事業の開業では、税務署に「開業届」を提出するだけで、すぐに事業を始めることができます。また、法人のような設立手続きが不要なため、設立関連の経費や手間がかかりません。

自分で自由に営業の内容を決められる

法人の場合はあらかじめ定款の「事業の目的」の中で、営業内容を決めておく必要があります。そのため、定款に記載されたこと以外は、正式な会社の事業としてこれを行うことができません。
これに対して個人事業の場合には、営業内容に関する制約がないため、いつでも自由に自分の好きな営業をすることができます。 

記帳や申告手続きがしやすい

個人事業の場合には、比較的、小規模な取引が多いため、法人と比べるとその分記帳や申告の手続きが簡単に済みます。また、専門家に依頼しなくても自分でできるケースも多いため、その分経費の節約となります。
 
なお、会社や組織から独立して個人事業(自営業・フリーランス)として開業するときには、以前の会社と良好な関係を継続することで、外部委託先として受注ができる可能性があります。融資を利用する場合には、開業当初の売上げをどうやって作るかということが重要な審査のポイントとなりますが、外部委託先として安定した売上げが見込める場合には非常に有利となります。
ただし個人事業では、「法人と比べると社会的な信用が低い、「採用などで不利となりやすい」、「一定以上の利益が出た場合には税負担が重くなる」などのデメリットがあります。

法人と個人どちらが融資を受けやすいか? 

事業を始めるときに「法人と個人では、どちらが融資を受けやすいのか?」ということを心配される方がよくいらっしゃいます。しかし、結果からいえば、「どちらであっても、融資の審査における有利不利はない」といえます。

以前は株式会社の設立をする場合は1,000万円、 有限会社の場合には300万円の最低資本金が必要だったため、融資の審査においても法人の方が有利とされていました。しかし現在ではこのような制約はなく、法人であっても1円から設立できるようになったため、法人と個人事業を規模で区別する意味がなくなりました。 
よくWEBサイトの情報では、「信用面で法人の方が借り入れをしやすい」という記載が見受けられますが、実際には審査の上での差はありません。ただし、ビジネスローンなどでは、個人事業では利用できないケースもあるため、この点については法人の方が有利といえます。

なお、日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用する場合、法人には代表者の連帯保証が不要というメリットがあります。個人事業の場合には借入人と保証人が同一のため、万が一の場合には、本人が返済責任を負わなければなりません。しかし、法人では借入人は法人となりますが、連帯保証人が不要のため、代表者個人が責任を負わずに済みます。そのため、この点を重視する方にとっては、法人で開業するメリットは大きいといえます。

開業の資金調達方法7つ

開業時に自己資金が十分でない場合には、外部から資金の調達をしなければなりません。しかし資金の調達には多くの方法があるため、いかに事業の目的や用途にあったものを選択するかがスムーズな調達をするカギとなります。

1.自己資金(含む家族・親戚からの援助)を準備

開業をする際に最も望ましいのが「自己資金での開業」です。自己資金であれば返済義務や利息を支払う必要もなく、出資の場合のような資本関係を気にする必要もありません。
しかし、開業する業種によっては、開業資金が高額となることもあるため、自己資金のみで開業するには、早い時期から必要となる資金の見積もりや確保の準備を始める必要があります。
なお、日本政策金融公庫では、事業のために親や兄弟から贈与された資金は、これを自己資金として認めているため、周囲に協力してもらえる方がいないかを検討してみましょう。

ただし、制度融資などの信用保証協会付き融資の場合には、親などからの贈与を自己資金として認めてもらえない場合があるため注意してください。

2.銀行・信用金庫からの開業資金融資(信用保証協会付き融資の活用)

開業資金の調達を外部で行う場合には、銀行や信用金庫などから融資を受けるという方法もあります。 銀行や信用金庫が独自の責任にもとづいて行う融資を「プロパー融資」といいますが、プロパー融資は、信用力や実績のある企業でないと無担保無保証での利用ができないため、開業当初の方がこれを使うのはかなり難しいといえます。
これに対して、信用保証協会の保証のついた融資を「保証付き融資」といいます。この融資で信用保証協会の保証が受けられる場合には、その信用にもとづいて銀行や信用金庫から有利な条件で融資を受けることが可能となります。

3.日本政策金融公庫の創業資金融資

開業資金の調達方法として最も広く利用されているのが、日本政策金融公庫の融資です。
日本政策金融公庫では、中小企業や創業者であっても低金利、長期の融資を無担保無保証で利用することができます。
また、日本政策金融公庫では創業者向けの融資が充実しており、とくに新創業融資制度では無担保無保証で最大3,000千万円までの借入れをすることが可能です。 これから開業資金の調達をお考えの方には、最初におすすめできる方法といえます。

4.地方自治体の起業支援制度を利用

多くの各自治体では信用保証協会とタイアップをして、独自の融資制度を設けています。このような融資を「制度融資」といいます。
制度融資は、自治体と金融機関、信用保証協会の三者が協調して行うタイプの融資です。具体的には、自治体が制度の設計や運用を行い、金融機関が資金を貸し出し、信用保証協会が保証の提供を行います。ただし、制度融資は各自治体がそれぞれ独自に行っているため、その内容は自治体ごとで異なります。
そのため、自分の所属する自治体以外の制度融資を利用することができない、個別に融資条件の設定ができない(制度融資では融資条件はすべて一律のものとなります)ということに注意してください。

5.創業補助金・助成金を申請

開業時の資金を節約するのならば、創業者でも利用できる補助金や助成金の利用も検討してみましょう。
補助金や助成金は返還不要の資金であり、中には、3分の2以上の資金を補助してもらえるものもあるため、上手に活用すれば開業時の経費削減に役立ちます。
ただし、補助金や助成金には、「誰もがもらえるものではない」、「事業者が事業資金を立て替える必要がある(補助金の支給は、事業完了後のため)」、「資金を受け取るまでに時間がかかる」という特徴があるため、計画やスケジュールを十分に考えて申し込む必要があります。

なお、創業者が利用できる補助金や助成金としては、小規模事業者持続化補助金、地域創造的起業補助金、地域中小企業応援ファンドなどがありますが、それぞれで特徴や要件が異なるため詳細については事前に確認しておきましょう。

6.ベンチャーキャピタル・他企業から出資を受ける

事業の内容に自信があるという場合は、ベンチャーキャピタルや他企業から出資を受けるという方法も検討してみましょう。とくにベンチャーキャピタルの場合は、大きな金額の出資にも対応しているところが多く、高額な資金調達も可能となります。
ただし、他から出資を受ける場合には、出資の比率によっては自由な経営ができなくなる、配当に関するトラブルが生じるといった可能性もあることに注意が必要です。

なお、ベンチャーキャピタルについては、将来的な出口戦略として「上場後に株を売却する」、または「出資はそのままにして配当のみを受け取る」ということを予定していることがほとんどです。
しかし民間系のベンチャーキャピタルでは前者のパターンが多いことから、将来的な事業取扱いについても事前に確認しておきましょう。

7.クラウドファンディングで開業資金を募集する

金融機関から融資を受けるのではなく、クラウドファンディングを利用して一般の方から資金を集めるという方法も、最近では広く行われています。
クラウドファンディングによる資金調達においては、自社の商品やサービスを購入してもらうという方法が一般的ですが、最近では出資を利用した支援なども行われています。

クラウドファンディングによる資金調達には、実際にやってみないといくらの金額が集まるのかがわからないという 不確実な要素はありますが、一方で、早い段階でファンや見込み客を集めることができるというメリットがあります。 

 開業資金を調達するときの注意点

開業資金の調達をする時には、事前に知っておいた方がよい知識や手順があります。

以下であげたポイントは、資金調達に共通するものですので、しっかりと理解しておきましょう。 
□開業資金の調達は簡単でない、自分に合った方法を選ぼう
複数の資金調達の方法があるとはいえ、開業資金の調達は簡単ではありません。資金調達のハードルを下げるためにも、自分にあった方法は何かをよく考えて選ぶようにしましょう。
なお、創業者の方については実績や信用が少ないため、それ以外の部分で問題がないことをアピールできる必要があります。
そのためには、事業プランに差別化ができていることや 今後の経営に問題がないことをどこまで具体的に伝えられるかが重要なポイントとなります。 

□開業に伴う当面の運転資金、まずは最低3ヶ月分を確保しておく
開業後には家賃や人件費などの運転資金が必要となります。
また、開業してすぐの頃はなかなか売上げも上がりにくく、経営が軌道にのりにくいため、その間の運転資金を確保しておく必要があります。最低でも3ヶ月分の資金が確保できていないと、支払いに支障をきたしたり、途中で追加の借り入れが必要となる可能性が高くなります。
したがってまずは、1ヶ月に必要となる運転資金の額を把握した上で、当面の経営のためにはどのくらいの資金が必要なのかを考えて計画を作る必要があります。

□業種によって開業のため必要資金額は異なる
業種によっても必要となる資金の額は大きく異なります。とくに、飲食店のような仕入れのあるな業種や販売業のような在庫を必要とする業種では、運転資金が大きくなりやすくなります。
また、多くの従業員などを使用する業種では多額の人件費が発生しますが、 これについては営業の途中での削減や増員が難しいため、綿密な人員計画にもとづく資金の調達が重要となります。 

□資金調達には創業計画書が必要、中身が充実していればいるほど資金調達しやすい
創業者が資金調達をする場合には、通常、創業計画書が必要となります。実績や経験が少ない創業者にとって創業計画書はほぼ唯一の拠り所となるため、その出来不出来は結果に大きな影響を及ぼします。

金融機関等に評価してもらえる事業計画を作るためには、以下のポイントを押さえた計画となっていることが望ましいといえます。
・ 事業に対する熱意が感じられる内容となっているか?
・ 計画の内容や目標の数字は、他と比べて妥当なものとなっているか?
・ 実際に実現ができる計画内容となっているか?
・ コンセプトや仕組みなどで他との差別化やオリジナリティがあるか?
・ 数字を裏付ける根拠やエビデンスなどがあるか?

□補助金・助成金は返済不要だが、その分審査が厳しい
補助金や助成金は返還不要の資金ですが、その分審査が厳しいものが少なくありません。
厚生労働省が管轄する助成金は、原則として、必要な要件を満たせば誰でも受給することができるため、比較的利用しやすいといえます。
しかし補助金の場合には、一定のテーマについて内容の優劣を競うコンテスト形式で行われるため、誰もが受給できるわけではありません。したがって、補助金をメインの資金調達手段としてしまうと、審査に通らなかった場合に大幅な計画の変更が必要となってしまいます。

そのため補助金や利用する場合には、申し込みまでにかかる時間や締め切りまでの期間、応募の条件などを最新の公募要領などによって確認しておく必要があります。

□ベンチャーキャピタル・他企業から出資を受けたら利益から配当を払う必要があることを知っておこう
 ベンチャーキャピタルや他企業から出資を受けた時に、忘れてはいけないのが「配当の支払い」です。 中には、株式上場時の売却利益で清算するというパターンもありますが、基本的には 出資に対して一定の配当を支払う必要があります。
この配当の割合が高い場合には、その後の経営の足かせとなる可能性があるため、「無理な配当金額となっていないか?」、「配当が支払えない場合の取り扱い」などについて十分に確認しておく必要があります。
 
□金融機関との交渉や創業計画書の作成は手間がかかる、融資の専門家に依頼するのも選択肢のひとつ
 外部から資金の調達をする際には、ほとんどのケースで事業計画書の作成が必要となります。どんなに熱意があったとしても、その事業の内容が客観的に説明できないのでは十分な資金を調達することはできません。
とはいえ、このような作業に慣れていない方にとっては事業計画の作成は難しいと感じることも少なくないと思います。また、勝手な思い込みで計画を作ってしまうと、後から大幅な修正が必要となることもあります。

そのため思うように計画を作ることができない時には、専門家のサポートを受けることをおすすめします。専門家の適切なサポートを受けることにより、融資などの審査に通りやすい計画を作ることができるだけでなく、作成にかかる時間を大幅に短縮することができます。

まとめ

開業資金の調達方法にはいくつもの種類がありますが、利用する方の状況や事業の内容などにより最適な選択肢は異なります。その中でも融資は最も一般的な方法となりますが、それだけでなく補助金や助成金、出資などの方法も検討してみましょう。
しかし、資金調達の方法には、それぞれ一長一短があるため、デメリットも把握して利用する必要があります。

また、資金調達をする際にはあらかじめ知っておいた方がよい知識や戦略などもあるため、具体的な行動を起こす前に、これらについても確認しておくことをおすすめします。

この記事の監修
Scheeme株式会社
ScheemeMAG編集部
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