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日本政策金融公庫とは?創業融資のメリットや審査のポイントを解説

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これから創業をお考えの方にとって、資金の準備は重要なテーマです。もし、自己資金だけで資金が十分でない場合は、銀行から融資を受けなければなりません。そんな時におすすめできるのが日本政策金融公庫の創業融資です。しかし、創業融資はメリットが多い反面、守らなければならない要件も多くあるため、しっかりとポイントを理解して取り組む必要があります。この記事では、はじめて創業融資を申し込む方でも失敗がないポイントや審査の注意点について解説いたします。
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日本政策金融公庫の新創業融資制度とは?

日本政策金融公庫の特徴

日本政策金融公庫は、民間金融機関の補完を目的として、創業者や中小企業の資金調達の支援を行っている政府系金融機関です。

国民生活事業部門と中小企業事業部門の2つに分業向けの長期事業融資については、中小企業事業がそれぞれ対応しています。

創業融資については、国民生活事業の取り扱いとなります。

新創業融資制度について

信用力や実績の少ない創業者であっても、比較的簡単な要件だけで、利用できる融資として「新創業融資制度」があります。

新創業融資制度は、新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方が利用できる融資です。ただし、新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方については、創業資金総額の10分の1以上の自己資金があること(自己資金要件)が必要となります。


なお、次のような場合には、自己資金がなくとも新創業融資制度を利用できます。

・現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、現在の企業に継続して6年以上お勤めの方、または現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方

・大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方

・「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」の適用予定の方

・民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方 など


新創業融資制度の融資限度額は3,000万円(運転資金については1,500万円が限度)となっているため、大きな資金需要にも対応することができます。

金利は2.41~2.80%(令和3年9月現在)が適用されますが、定期的に見直しが行われるため詳しくは最新の情報をご確認ください。

なお、新創業融資制度は、無担保無保証で利用することができるだけでなく、法人での申し込みの場合には、代表者が連帯保証人とならないことができます。

そのため、倒産などの万が一の事態が生じた場合でも、代表者がリスクを負うことなく、安全に借入れをすることが可能です。

返済期間は、各融資制度に定めるご返済期間以内となります。

新創業融資制度の役割

新創業融資制度は、独自の融資制度ではなく、利用する融資を無担保無保証とするための枠を設定するための制度となります。

日本政策金融公庫では、そのほとんどの融資がそのままでは無担保無保証で利用することができません。しかし、それでは中小企業や創業者が利用できないため、無担保無保証の枠を設定するためにこの制度があります。

したがって、この制度を単体で使用することはできず、この制度を利用するときには、必ずベースとなる融資制度(例えば、新規開業資金や女性、若者/シニア起業家支援資金など)とあわせて利用する必要があります。


参考:日本政策金融公庫とは?https://scheeme.com/mag/jfc_d7

日本政策金融公庫を利用するメリット

創業者の方が日本政策金融公庫を利用する場合のメリットとしては、次のようなものがあります。


銀行よりも借りやすく、利率が抑えられる

日本政策金融公庫は政府系の金融機関のため、利益を目的とした民間の金融機関よりも借りやすいといえます。また、金利も通常の融資よりも低く抑えられているため、借り入れ後の後の負担も少ないものとなります。


飲食店など開業まもなく、実績が少なくても借りやすい

通常の金融機関では、創業者のような実績のない方に対する貸し付けは原則、行っていません。(保証協会付融資などの保証付融資を除く)

しかし、新創業融資制度では、以前にその事業に関する一定の経験があれば、これを実績として融資を受けることができます。


民間金融機関で断られても借りられる

日本政策金融公庫と民間の金融機関はまったく別の組織となります。そのため、民間の金融機関公庫で融資を断られている場合でも、問題なく公庫の融資を利用することができます。

ただし、申込人について信用情報に問題がある、税金等の未納があるなどの事情がある場合には、日本政策金融公庫においても借入れが難しくなります。


事業の相談もできる

日本政策金融公庫の創業相談サービスでは、対面や電話、ビデオ通話などによる相談や情報提供を行っています。創業融資の相談や事業計画書の作り方については、各支店に設置された創業サポートデスクで、また、来店が難しい場合は、創業ホットラインを利用して創業や事業資金に関する相談をすることができます。


運転資金としても利用できる

新創業融資制度は、創業時の設備資金だけでなく、運転資金の融資にも対応しています。

しかし、運転資金については1,500万円が限度となるため、この額を超えないように注意する必要があります。


参考:飲食店開業時の融資は日本政策金融公庫がオススメな理由

https://scheeme.com/mag/jfc_a23

その他の創業融資の注意点

日本政策金融公庫の創業融資には、以上のような特徴がありますが、融資の申し込みをする場合には、以下の点についても注意する必要があります。


①融資の中には、運転資金が含まれないものがある

日本政策金融公庫の融資の中には、例外的に設備資金にしか対応していないものがあります。

例えば、食料品小売・製造業、花き小売業の方が利用できる「食品貸付」では、設備資金にしか対応していません。そのため、これらの方が運転資金の融資を受ける場合には、別の制度の融資を併用する必要があります。


②日本政策金融公庫の面談時に気をつけること

日本政策金融公庫ではじめて融資を受ける場合には、担当者との面談が必要となります。なお、面談の場所は、公庫の支店の場合の他、事業者の事務所等で行われることもあります。面談時間は、通常は30分〜1時間程度ですが、事業の仕組みが複雑な場合や面談の内容に不審な点がある場合には、この時間を超えて面談が行われることがあります。


面談では、主に創業の経緯や理由、事業の仕組みや取引条件といった基本的なことが聞かれますが、中にはかなり突っ込んだ質問をされることもあるため、あらかじめ想定問答などを用意して、しっかりと質問に答えられるようにした方がよいでしょう。


なお、面談の際には、できるだけさっぱりとした服装で臨むことをおすすめします。ムリにスーツを着る必要はありませんが、ハデな衣装や奇抜な服装は印象を悪くします。また、華美なアクセサリーの着用や高級車での来店などは、担当者の方に「金遣いの荒い人」というイメージをあたえるため避けた方が無難です。


③着金までに時間がかかる

融資は審査に通った場合でも、実際に資金が入金されるまで、ある程度の時間がかかります。創業融資のケースでは、審査結果の連絡があってから1週間~10日後に融資の契約を行いますが、資金の入金はその3~5日後となります。トータルでは2週間程度の時間が必要となることもあるため、このことも考えたうえでオープンの準備をしましょう。


参考:日本政策金融公庫で創業融資を成功させるには

https://scheeme.com/mag/jfc_a20

日本政策金融公庫の融資は運転資金も融資の中に含んでくれるのか

https://scheeme.com/mag/jfc_a21

日本政策金融公庫の融資を受けるのに必要なことは?

日本政策金融公庫で融資を受けるためには、事業計画書の作成だけでなく、その他の資料の収集や手配なども必要となります。通常、融資を申し込むときには、以下のような準備が必要となります。

事業計画書

新創業融資制度を利用する場合には、必ず事業計画書(創業計画書)の作成と提出が必要となります。事業計画書は公庫の専用フォーマットに従って作成しますが、フォーマットはA4用紙1枚分のスペースしかないため、多くの事項を記入することができません。したがって、十分な内容を伝えるのであれば、フォーマットの項目をそのまま他の用紙を使って記入することをおすすめします。


事業計画には、創業の目的やサービス・商品の内容、仕入れ・販売先などを記入しますが、ビジネスモデルの内容についてはわかりやすく、かつ具体的に記入します。可能であれば、図や表などを付け加えると、さらにわかりやすさが増します。

なお、日本政策金融公庫では、業種別に複数の創業計画書記入例の見本を用意していますが、それぞれで内容が異なるため、自分の事業にあったものをご参考ください。


参考:公庫書式ダウンロード

https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html

収支計画書

日本政策金融公庫の創業計画書のフォーマットでは、事業計画書の後半部分に今後の収支を記載する箇所があります。

しかし、記入する項目は開業当初と開業1年後の見込みの2つだけのため、できれば毎月の収支の内容を1年〜2年分記入した方が、詳細な収支の見込みや経過がわかり、審査でも好評価となりやすくなります。


なお、収支計画書の作成で重要となるのは、「現実的な数字」と「算出の根拠」です。

「現実的な数字」については、どのようにその数字を算定したのかだけでなく、実際に達成できる売り上げなどを記入することが重要です。

「算出の根拠」については、計画の数字を実現できることがわかる根拠が必要となります。

そのため、契約書や発注書などといった売り上げの数字の裏付けとなる資料を提出することがポイントとなります。

設備資金の見積書

設備を購入する場合には、該当する設備の見積書を提出します。見積書は一式などで書かれているものでなく、詳細な項目がわかるものを用意するようにしましょう。

また、見積書には有効期限があるため、この期限内のものを使用するようにしてください。

決算書などの実績書類

創業期を終了した企業については当然ですが、創業融資の場合も2期を過ぎるまで申込みをすることができるため、1期を過ぎた企業については決算書や確定申告書等の経営実績を証する資料の提出が必要となります。

なお、赤字だったから決算書を作成しないというのはNGです。たとえ成績が赤字の場合でも、決算書を作っていない場合には、審査で不利になる可能性があります。

また、創業を卒業後の融資では、申込み時に2期分の決算書が必要となるため、キチンと決算書を作成していないとその際に決算書が不足することとなってしまいます。

通帳や公共料金の支払いの領収書

融資の申し込みの時には、自己資金の入った通帳を提出します。公庫ではこの通帳の中身を遡って確認することにより、自己資金の出所や家賃、公共料金などの支払いのチェックをします。そのため、自己資金を他から借りているような場合には、その事情や経緯について詳しく確認されることとなります。また、公共料金が自動引き落としとなっていない場合には、支払いの際の控えなどの提出も必要となります。

企業概要など

企業概要は、日本政策金融公庫ではじめて融資を申し込む企業が提出するものです。しかし、創業融資の場合には、事業計画書を提出するため、通常、提出は不要となります。企業概要書に記載する項目は、企業の基本的な情報の他、事業の経緯など創業計画書の内容とほぼ同じものとなりますが、収支計画部分が省略されています。


参考:事業計画書テンプレート5つの最重要項目【無料ダウンロード】事業計画書テンプレートの書き方や見本サンプルなど事業計画書を完全網羅

https://scheeme.com/mag/jigyoukeikakusyo


創業時の融資審査が通る?事業計画書を上手に書くための3つの方法 【事業計画書の上手な書き方】

https://scheeme.com/mag/plan_a2


事業計画書<簡易Ver>ダウンロード可能!銀行向けに作る事業計画書

https://scheeme.com/mag/plan_04

もしも審査に通らなかったら?

日本政策金融公庫の融資はメリットが多い資金調達方法ですが、厳格な審査があるため、誰もが無条件で利用できるわけではありません。計画の内容や自己資金の不足などがある場合には、審査に落とされることもあります。そのため、審査で落ちる理由やその他の資金調達方法についても、あらかじめ考えておく必要があります。

新創業融資制度の審査に落ちやすい理由

日本政策金融公庫は、政府系の金融機関のため家賃や公共料金、ローンの支払いなどの滞納に対しては厳しく、これらがある場合には、原則、融資がされません。

また、自己資金が要件に定める額(創業にかかる経費の1/10以上)に満たない場合にも、融資を利用することが難しくなります。


さらに新創業融資制度の審査で落とされる原因としては、次のようなものがあります。

・事業計画の内容が不充分

・面談での失敗

・必要な書類を提出できない

・税金の未納や支払い遅れ

・代表者または役員の信用情報に問題がある

・以前に失敗してから再度の申し込みまで、あまり時間が経っていない(目安6ヶ月以上)

・フランチャイズの場合、その本部の財務内容や経歴に問題がある

フランチャイズに加盟して創業する場合には、フランチャイズ本部の信用や借入額なども審査の対象となります。

そのため、本部の財務内容や返済の経歴に問題があると、加盟店側には何の問題がなくても審査に落とされてしまうことがあります。

日本政策金融公庫で他にも注目すべき融資制度は?

日本政策金融公庫の融資に申し込んで審査に通らなかった場合でも、以下のような資金調達の方法があります。

制度融資

制度融資とは、都道府県や市町村が金融機関や信用保証協会と協力して行う融資制度です。

創業者であっても、無担保無保証で融資を受けることができます。(ただし、法人については、代表者が連帯保証人になる必要があります)

制度融資は日本政策金融公庫の融資とは別制度のため、公庫の融資に失敗した場合でも、利用できます。


融資の条件は制度融資ごとに異なりますが、中には新創業融資制度よりも低金利の融資や信用保証料の補助を行っているケースなどもあります。

ただし、制度融資は自治体が独自に行う融資のため、申し込みの条件や融資の限度額、金利などはすべて異なることに注意が必要です。

一般の金融機関の融資

一般の金融機関でも、創業者向けの融資を取り扱っている場合があります。ただし、信販会社などの保証が付いた融資であることが多く、その場合、金利などの条件は公庫や制度融資より劣ることがほとんどです。


なお、通常の金融機関では、金融機関が独自の責任にもとづいて貸し出しをするプロパー融資というものを行っていますが、これは信用が高く、実績のある方が対象となるため、創業者が利用するのは困難です。

クラウドファンディングの利用

最近では、事業の立上げに際して、クラウドファンディングを利用して資金を調達する方も増えています。

クラウドファンディングによる資金集めの方法としては、自社のサービスや商品を専用のポータルサイトで販売するというものが主流ですが、株式や出資を募って資金調達するなどの方法も行われつつあります。

クラウドファンディングによる資金調達では、資金が集めやすいというだけでなく、商品やサービスの販売を通じてファンを作れるというメリットもあります。

新型コロナウイルス感染症特別貸付

日本政策金融公庫では、現在、新型コロナウイルス感染症特別貸付を実施しており、一般の事業者に限らず、創業者でも業歴3ヵ月以上の方であればこれを利用することができます。

開業当初の資金繰りには利用できませんが、自己資金の要件を必要とせず、一定の売上の減少があれば利用できるため、新創業融資制度よりも簡単な要件で無担保無保証の融資を受けられる可能性があります。


要件 新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的な業況悪化を来している方であって、次の1または2のいずれかに該当し、業績回復の見込みがあること。

① 最近1ヵ月間等の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高が前3年のいずれかの年の同期と比較して5%以上減少していること

② 業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合等は、最近1ヵ月間等の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高(業歴6ヵ月未満の場合は、開業から最近1ヵ月までの平均売上高)が次のいずれかと比較して5%以上減少していること

 ・過去3ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高

・令和元年12月の売上高

・令和元年10月から12月の平均売上高

資金使途 設備資金および運転資金

融資限度額 8,000万円

利 率  基準金利を適用 一定の場合には、利子補給の利用が可能

※ ただし、特別利子補給制度の申請期限は、令和3年12月31日まで

返済期間 設備資金20年以内(うち据置期間5年以内)

     運転資金15年以内(うち据置期間5年以内)

担保保証 無担保無保証


参照:日本政策金融公庫で融資を受ける方必見!知っておくべき2つの貸付制度

https://scheeme.com/mag/jfc_b2


まとめ

日本政策金融公庫の新創業融資制度は、これから創業される方に最もおすすめできる資金調達方法の一つです。

しかし、融資を成功させるためには、メリットだけでなく、「必要な要件をクリアーできているか?」、「自己資金に問題はないか?」などについても、十分に確認しておく必要があります。


また、事業プランや計画書の作成が苦手という方は、専門家や認定支援機関にアドバイスをもらうこともひとつの手です。事業計画書の作成には時間がかかりやすいため、早めの着手と準備をすることをおすすめします。

Scheemeでは、融資や補助金といった創業者の資金全般のサポートをしています。融資の手続きにお困りの場合にはご相談をご検討ください。

この記事の監修
Scheeme株式会社
ScheemeMAG編集部
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