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美容室の開業は自己資金ゼロでも可能?融資を含む低リスクで資金調達できる方法も紹介

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美容室の開業は自己資金ゼロでも可能?融資を含む低リスクで資金調達できる方法も紹介|資金調達メディアScheemeMAG(スキームマグ)
これから美容室の開業をお考えの方は多いと思いますが、その際に最も心配なのが「資金」ではないでしょうか。はじめての経験で、「開業にはどれくらいの資金がかかるのだろう?」、「いくらの資金を準備すればよいのか?」などと不安に思われることも多いと思います。しかし、これらが正確にわからないと、スムーズに開業することはできません。この記事では、美容室の開業にどのくらいの資金が必要となり、どうすればより多く借りられるかについて解説いたします。
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美容業界の現状と開業のステップ

最近、全国的に美容室の開業数が増えています。

そのためスムーズに開業をするには、美容業界の現状を認識した上で、正しい開業のステップで準備することが不可欠となります。

美容業界の現状について

厚生労働省は2021年2月に発表した「令和元年度衛生行政報告例」によれば、全国の美容室の件数は254,422軒で過去最高を更新する一方で、理容室は117,266軒に減少しました。

また、美容室の店舗数は、前年比3,282軒増の254,422軒(前年度比1.3%増)と増加の一途をたどっており、とくに東京については、対前年比で606件と他県と比較しても著しく増加しています。

最近の傾向としては、毎年3,000〜3,500件の美容室が新規に出店していますが、廃業する数も他の業種より多く、1年以内に約半数の店が廃業や事業停止になっているとされています。


このように美容室は人気業種ですが競争も激しいため、十分な資金を準備してはじめの苦しい時期を乗り切ることが、失敗しないための第一歩といえます。

美容室開業のステップ

一般的に、美容室の開業には、次のような準備が必要となります。

①事前準備

美容室の開業にあたっては、「どんな美容室にしたいか?」という全体的なコンセプトの他に、「どのような場所で、どのような層に対して、どのようなサービスを、いくらで提供するのか?」という具体的なビジネスプランが必要となります。

また、それと同時に「開業のためにはどの程度の資金が必要となるのか?」ということについても、シッカリ考えておかなければなりません。


「ビジネスプラン」と「資金」の2つは車の両輪の関係となるため、どんなにコンセプトが優れていても、それを実現できるだけの資金がなければ意味がありません。

また、手持ちの資金が少ない場合には、その額にあわせてビジネスプランを変えていく必要があります。

とくに資金の見積もりは、どんぶり勘定ではなく、「自己資金はどのくらい準備できるのか?」、「父祖分の手当てはどこでするのか?」といった現実的な計画をできるだけ細かく立てる必要があります。

②物件探し

通常、美容室を開業する場合には、テナントを借りることが多いと思います。

その場合に重要となるのがテナント選びです。

テナントの立地は、その後の売上げに大きく影響するため、自分の好みだけで決めるのではなく、集客面での効果などを考えて選ぶようにします。


また、単に家賃が安いからとか、居抜き物件だからなどという理由で決めるのではなく、周囲の競合の状況なども十分に検討した上で決定するようにしましょう。

③テナントの賃貸契約の締結

気に入った物件が見つかった場合は、できるだけ早く物件の賃貸契約を結びましょう。

手付金を支払った場合でも、通常は1ヶ月程度しか物件を抑えておくことができません。

また、手付を打った場合でも他に即決する候補者が現れた場合には、そちらに決まってしまうこともあります。


なお、テナントの賃貸契約をする場合には、保証金や当座の家賃などの費用を一括して支払わなければなりません。

内外装工事をする場合には、施工業者への着手金の支払いも必要です。

これらの資金は融資では間にあわないため、契約時には、最低でもこれらの支払いができるだけの自己資金を用意しておく必要があります。

④店舗設計・施工業者選び

テナントの契約ができたら、次にするべきことは店舗のデザインや施工業者選びです。

同じ工事をする場合でも業者によっては金額が大きく異なることもあるため、3社程度の業者から見積もりを取ることをおすすめします。

なお、店舗デザインのプランニングから工事完了までには1ヶ月〜1.5ヶ月程度の時間がかかりますが、この間に営業許可の取得手続きや融資の申込みなどもしなければならないため、緻密なスケジュールが不可欠となります。

➄融資申込み

融資の申し込みをする場合には、このくらいのタイミングで申し込み手続きをしておきましょう。

一般的には、融資の申し込みから資金が振り込まれるまで、約1〜1.5ヶ月の時間がかかります。

さらに、事前に事業計画書も作成しなければならないため、トータルでは2ヶ月程度の時間が必要となります。


とくに事業計画書の作成に慣れていない場合には、予想外の時間がかかることも少なくないため、余裕を持った準備をしてください。

⑥保健所による検査

美容室を営業するには、保健所への営業許可の届出が必要となります。

現地の検査は半日もかからずに終わりますが、検査日程については事前に保健所と打ち合わせをしておかなければなりません。

また、検査を行うためには、最低でも電気設備や水道設備、衛生設備が仕上がっている必要があるため、これらの部分については先に工事をしておく必要があります。


なお、スケジュールについては、施工業者とも十分に打ち合わせをしておきましょう。

⑦オープン準備

美容室をオープンするには、備品の取り寄せや従業員の採用、オペレーションの確認、集客作業など複数の作業を同時にすすめていく必要があります。

しかし、オープン予定日をあまりギリギリのタイミングにしてしまうと、融資の手続きが遅れたり、許可の手続きに不具合が生じたようなときには、予定に間にあわないこととなってしまいます。


したがって、開店準備に係る時間を正確に見積もり、過日なオープン日を設定するようにしてください。

 美容室の開業資金の相場は?トータルでいくらかかる?

美容室の開業にかかる資金の額は、地域や立地、設備、スタッフの数などで大きく変わってきます。


一般的には、美容室開業のためにかかる資金の相場は、約1,000万~2,000万円とされています。

また、日本政策金融公庫総合研究所の「2019年度新規開業実態調査」のアンケートでも、開業費用の平均値は1,055万円となっていることから、1,000万円程度の資金は準備しておいた方がよいといえます。


この記事では、開業時に必要となる資金の内容と相場について解説します。

運転資金

運転資金とは、美容室を経営していく上で継続して必要となる資金です。

一般的には、次のような費用がこれに該当します。


・毎月の家賃や水道光熱費

・従業員の給料

・宣伝広告費

・電話などの通信費

・シャンプーなどの仕入れ代

・その他雑費


開業当初は十分な集客が見込みにくいため、安定した経営ができるまでの3〜6ヶ月分程度の運転資金を確保しておいた方がよいでしょう。

また、その際には、生活費の手当てについても考えておく必要があります。

店舗内外装工事費

店舗の内外装工事費は、高額となりやすいだけでなく、まとめて支払わなければならないため、不足が生じないように注意しましょう。

とくに美容室の場合は、給排水設備に大きな費用がかかるため、シャンプー台の数により工事額が左右されやすいという特長があります。 


なお、スケルトン物件の場合には、自由度は高くなりますが、工事費用は割高となります。

一方、居抜き物件の場合は、デザインや内装は限定的となりますが、以前の設備をそのまま使えるため工事費用を抑えることが可能です。

ただし、居抜きを利用した場合には、状況によっては設備がそのまま利用できないケースもあるため、十分な確認が大切です。


一般的な広さの場合の内装費としては、400~800万円が相場となりますが、居抜き物件の場合にはその約半分以下で抑えることも可能です。

また、業者による工事費の差も大きいため、できるだけ複数箇所から見積もりを取るようにしましょう。

テナント賃借費用

テナントを利用して美容室を開業する場合には、保証金・礼金・仲介手数料の他に管理費や保険料などが発生します。

各項目につき必要となる金額の目安としては、以下のとおりとなります。


・保証金    家賃3〜10ヶ月分

・当座の家賃  家賃1ヶ月分

・礼金     家賃1ヶ月分

・仲介手数料  家賃1ヶ月分

・保証料    家賃1~2ヶ月分(保証会社を利用する場合)    


もし、テナントの家賃が20万円ならば、150~300万円程度の費用がかかることになります。

実際の金額は、店舗の広さや立地などで変わってきますが、以上のことを踏まえて、物件取得費は開業資金の20〜30%を見込んでおくようにしましょう。

機械什器備品等の購入費(含む美容器具、薬剤・美容商材費)

美容室の開業には、この他にも次のような費用がかかります。


●理美容器具機材

美容院の開業ではパーマ機、カット用イス、ミラーなどの機材も必須となります。

必要な機材は、サービス内容によって変わりますが、これらの機材の購入には100〜200万円程度の資金が必要となります。


●その他備品

上記以外にも営業をするにあたっては、以下のような備品類が必要となります。

・レジスター

・パソコン

・電話

・接客用の椅子やテーブル

・ワゴン

これらはすべて新品で揃えるのではなく、中古品などを利用すると経費の節減となります。


●消耗品・備品

施術にあたっては、パーマ液・カラー剤などの薬剤やシャンプーやトリートメント剤なども20~30万円程度必要となります。


●雑費

その他に雑費代もかかるため、5〜10万円程度を用意しておくことをおすすめします。

融資も受けず自己資金ゼロで美容室は開業できる?

「面貸し」とは?

「融資が受けられないけれど、自己資金もない」という場合には、美容室の開業はできないのでしょうか?

本来であれば資金を貯めて開業するのが理想的とはいえ、このようなケースでも開業が可能な場合もあります。

その方法が「面貸し」です。


面貸しとは、美容室で空いている時間や余っている席を他の美容師にレンタルする、いわば「場所貸し」のことをいいます。

これにより、美容室のオーナーは無駄な時間や席を有効活用することができ、また、借りる側としても少ない経費で開業することができます。


最近では経営が上手くいかない美容室が増える中で、このような面貸しを積極的に行っている店舗も増えており、専門求人誌などで検索すれば比較的簡単に見つけることができます。


このように面貸しを上手に活用すれば、店舗をもたなくとも、それに近い感覚で経営をすることができるだけでなく、多額の借入れをして開業するというリスクを負う前に、実際の経営を体験してみることもできます。


‐面貸しに必要な費用‐

面貸しは、美容室のオーナーとの雇用契約ではなく、あくまでも場所や設備のレンタル契約であり、決まった時間の中で売り上げた金額から取り決めた代金を支払う形となります。


契約の内容はオーナーごとで異なりますが、「売上げの〇%を支払う」というケースの他、「利用した時間に応じて料金を支払う」などの方法があります。面貸しの場合は、物件の取得費や備品の購入代などがかからないため、手持ちの資金が少ない方であっても簡単に始めやすいというメリットがあります。


しかし一方で、「収入の保証がない」、「集客を自分でしなければならない」、「同じ場所で長期間続けられる保証がない」、「トラブルについては自分で対応しなければならない」などといったデメリットもあることに注意が必要です。


なお、面貸しの料金の相場としては、成果報酬制の場合では売上げの30%~50%、時間貸しの場合は1,500円~2,000円をオーナーに支払うというのが一般的です。

そのため、面貸しで開業した場合には、支払う手数料なども考慮したうえで、利益が出るのかどうかをシュミレーションすることをおすすめします。

自己資金があっても融資を借りて美容室を開業した方が良い理由

十分な自己資金がある場合でも、できれば融資は利用しておいた方がよいといえます。

なぜなら、その方が後々のメリットが大きいからです。

逆に、自己資金があるからといって、融資を利用しないとデメリットを生じることもあります。

ここでは、自己資金があっても融資を利用しておいた方がよい具体的な理由や、融資を利用しないことによるデメリットについて解説いたします。

なぜ、自己資金があっても融資を受けた方がよいのか?

自己資金があっても融資を受けた方がよい理由としては、次のようなものがあります。

① 急に多額の資金が必要となることがあるから

事業を行っているときには、急に多額の資金が必要となることがあります。

代表的な例としては、「経営の読みが外れて多額の損失を出してしまった」、「天候が不順で仕入れ価格が大幅に上がった」、「コロナなどの外的要因により売上げが大幅に下がった」などが考えられます。


これらの理由により大幅に売上げや利益が減ってしまった場合には、経営を立て直すまでに時間がかかることが多く、そのため手持ちの資金だけで持ちこたえ続けるのは難しい場合が少なくありません。

しかし、あらかじめ融資を受けてその資金をストックしておけば、このような急な事態にも対応することができます。

② 資金が欲しいと思っても、すぐに調達することができないから

資金繰りが厳しくなって資金が欲しいと思っても、融資を申し込んでお金が振り込まれるまでにはある程度の時間が必要となります。

はじめての借り入れの場合には 融資を申し込んでから資金が振り込まれるまでには、約1ヶ月から1ヶ月半ほどの時間がかかるため、従業員への給与や取引先への支払いの期限に間にあわないということもあります。


しかし2回目以降の借入れでは、すでに企業の基本的な調査が済んでいるため、早ければ10日から2週間程度の短期間で融資が行われるのが普通です。

このように1度融資を受けておくと、次回以降の借入れでは短期間で資金を調達しやすくなります。

③ 早めに融資を借りることで金融機関への実績をつくることができるから

金融機関では、はじめて取引をする方を警戒します。

また、取引の実績のない初回の申込みではあまり大きな金額が借りられないのが一般的です。

しかし、以前に融資を利用しており、その間に支払いの遅れがなかったような場合には、それが企業の実績として評価されるため、2回目以降の融資では大きな額を借りやすくなります。

④ 今後の取引の参考になるから

融資の手続きは思っている以上に複雑なため、いざ借入れをしようとしてもなかなか思い通りに手続きができないことがあります。

とくに、事業計画書の作成などはそれまでに経験がないと、完成させるまでに多くの時間がかかるだけでなく、十分な内容の計画を作れないケースも少なくありません。


また、融資では金融機関の担当との面談なども必要となりますが、未経験の場合にはポイントがわからず、思わぬ失敗をしてしまうこともあります。

しかし、一度、融資を利用しておけば、以降の申込みの際には迷うことなく手続きをすることができます。


以上のようにあえて融資を利用することで、急な事態に備えることや、早くから金融機関への実績を作ることができるため、十分な自己資金があっても多少の額の融資を利用しておくことをおすすめします

できるだけ低リスクでお金を借りる方法

開業資金の調達には、メリットだけでなく、さまざまなリスクもあります。

しかし、あらかじめどのように資金を調達するかを考え、対策をしておくことで、これらのリスクを大幅に減らすことが可能となります。

日本政策金融公庫の創業融資を借りる

開業者にとってリスクの低い資金調達の代表的なものとしては、日本政策金融公庫の融資の利用があります。

とくに創業融資は、実績のない創業者であっても、最大3,000万円の金額を長期、低金利、無担保無保証で利用することができるため、まず、はじめに利用を検討したい方法の一つです。


また、日本政策金融公庫以外にも、自治体と信用保証協会、金融機関の3者が協調して行っている制度融資があります。

この制度融資は自治体ごとに行っている制度のため、具体的な内容はそれぞれで異なりますが、たとえば東京のケースでは新創業融資制度よりも大きな融資を利用することができます。

さらに、自治体によっては、金利の補填や信用保証協会の保証料の免除などの優遇を行っているところも多くあります。


このように日本政策金融公庫をはじめとした公的融資では、いずれも長期・低金利・無担保無保証での利用ができるため、資金調達に関するリスクを減らせるだけでなく、資金調達のための時間や手間も少なくて済みます

自己・家族所有の担保物権があれば金融機関に提供する

開業する方に所有している土地や建物などの不動産がある場合には、それを担保に入れて借入れをすることも検討しましょう。

担保を提供した融資の場合には、「大きな額の申込みができる」、「融資審査で有利になる」などのメリットがあります。


なお、「担保に入れる」とは、所有する不動産に抵当権や根抵当権などの担保物件を設定することを意味します。

仮に不動産に抵当権が設定された場合でも、その不動産を売却したり、追加の担保に利用するのでなければ、これまで通りに使用することができるため、不動産の有効活用にもつながります。


また、自分に土地や建物といった不動産がない場合でも、親や家族が所有する不動産がある場合には、これらを担保に提供して借入れをすることもできます。

このように他人所有の不動産に担保権を設定することを「第三者による担保提供」といい、この場合の担保提供者を「物上保証人」といいます。


物上保証人は、連帯保証人と違って、万が一債務者が返済できなくなった場合でも、その担保を限度とした責任を負うだけにとどまり、それ以外の財産に対して請求されることがありません

とはいえ、親や家族から担保を提供してもらう場合には、必ずその不動産の所有者の同意が必要となります。

国の助成金・補助金も活用する

できるだけ資金を使わずに開業するのであれば、国や自治体の補助金や助成金の利用も検討しましょう。

これらは返還不要でもらえるものなので、資金繰りの改善に役立ちます


資金調達の方法としては、第三者から投資を受けるなどの方法もありますが、出資を受けた場合にはその割合に応じて株式等を保有されるため、経営権が低下したり、自由な経営ができにくくなったりする可能性があります。

しかし、補助金などではそのようなリスクがないため、自由度を維持したままで経営をすることができます。


さらに、補助金や助成金を受給することは、国や自治体から事業の内容についてのお墨付きを得たということを意味します。

そのため補助金を受給した場合は、対外的にその企業の実力をアピールできるとともに、金融機関や取引先からの信用を増すこととなります。


創業者の方が利用できる補助金としては、以下のものがあります。

・小規模事業者持続化補助金

「小規模事業者持続化補助金」は、小規模事業者が行う販路開拓や生産性向上の取組みに要する経費の一部を支援する制度です。

この補助金の申請では、商工会や商工会議所のサポートを受けながら経営計画書、補助事業計画書を作成する必要があります。

<一般型>

補助率:補助対象経費の3分の2以内

補助額:50万円(単独申請) 500万円(共同申請)


<低感染リスク型ビジネス枠>

補助率:補助対象経費の4分の3以内

補助額:100万円


・ものづくり補助金

ものづくり補助金は「一般型」、「グローバル展開型」の2種類からなり、通常枠については、優先的に支援される特別枠として「低感染リスク型ビジネス枠」が新たに設けられています。

なお、以前は「ビジネスモデル構築型」がありましたが、現在、公募は行われていません。

<一般型>

補助率:[通常枠]  2分の1以内(小規模企業者・小規模事業者 3分の2)

            [低感染リスク型ビジネス枠特別枠]  3分の2以内

補助額:100万円〜1,000万円


・子育て女性起業支援助成金

子育て期にある女性自らが起業し、起業後1年以内に労働者を雇用し、雇用保険の適用事業の事業主になった場合に支給される助成金です。

補助率:創業支援金 3分の1以内

補助額:創業支援金 200万円


・東京都創業助成金

創業助成金は、東京都内で事業を営む経営者、または起業予定の人を対象とした補助金です。

補助率:補助対象経費の3分の2以内

補助額:100万円〜300万円


以上のように補助金や助成金は、多額の資金を返還不要で利用できる制度ですが、これらを受給するためには一定の審査に合格して採択をされる必要があります。

また、事業が完了するまでの経費を事業者が立て替えて支払わなければならないため、補助事業の実行にはある程度まとまった資金が必要となることにも注意が必要です。

一時的に家族・親戚から借りる

家族や親戚などに資力のある方がいる場合には、それらの方から一時的に資金を借りるということも開業のリスクを下げる方法の一つです。

これらの方から借入れた資金であれば、長期かつ低金利で利用できるため、その後の資金繰りの安定につながります。


しかしどんなに親しい関係であっても多額の資金を借りるのですから、十分に事業の内容を説明し、賛同を得た上で協力してもらう必要があります。

また、後日のトラブルを避けるためにも、契約書を作成して取り交すなどといった誠実な対応を心がけましょう。

なお、家族等から借りた資金は、もらったものではないため、日本政策金融公庫の新創業融資における自己資金には該当しないことに注意してください

融資の申込みに際して、自己資金ゼロの開業者がやっていけないこと

日本政策金融公庫の新創業融資を利用する場合には、一定の自己資金が必要となります。

そのため、自己資金がないまたは少ない方の中には、借りたお金を使って自己資金があるように見せようとする方がいます。

しかし、このような行為が発覚した場合には、融資の返金だけでなく、その後の借入れに重大な悪影響を及ぼしますので、決してしないようにしてください。 

一時的に消費者金融等から借入れして自己資金に見せかける

一時的に消費者金融等から借入れをして、自己資金に見せかける行為は「見せ金」といわれ、金融機関がとくに警戒するものです。


しかし、融資の面談の際には必ず自己資金の入った通帳や資料を過去6ヶ月〜1年程度まで遡って確認され、もし、そのときにそのような形跡がある場合には、その経緯を確認されることとなります。

その時に公庫の担当者が納得できる理由を説明できない場合には、通帳等にいくらの金額が入金されていたとしても、それは自己資金として認めてもらえません。


そのため、消費者金融などから一時的に資金を借りてきたとしても、それが自己資金として認められることはないだけでなく、公庫からの信用を失うこととなります。

知人からの借用金を自己資金として申告する

日本政策金融公庫の新創業融資制度を申込む方の中には、知人からの借用金を自己資金として申告する方もいますが、これについても消費者金融からの一時的な借入れと同様、自己資金とみなしてもらうことはできません。


日本政策金融公庫では、親などからもらったお金についてはこれを自己資金として認めていますが、それが借りたものである場合には、たとえ親からの資金であっても自己資金とは認められません。

そのため、このようなケースでも出どころが説明できない以上、その資金が自己資金として認められることはありません。

美容室開業後の融資は日本政策金融公庫の「新創業融資制度」が利用できる

これから美容室の開業をされる方に最もおすすめできるのは、日本政策金融公庫の新創業融資制度の利用です。

新創業融資制度では、最大3,000万円(うち運転資金については1,500万円が限度)の融資を長期かつ低金利で利用することができます。

新創業融資制度の概要は以下のとおりとなります。


融資限度額 3,000万円(うち運転資金1,500万円)

返済期間 各融資制度に定めるご返済期間以内

利率(年) 2.36~2.85%(令和3年10月現在)

担保・保証人 原則不要 

とくに法人でこの融資を受ける場合には、代表者が連帯保証にならなくともよいという特例が適用となります。


なお、日本政策金融公庫では、美容院の営業は「生活衛生関係営業」となります。

「生活衛生関係営業」とは、厚生労働省が所管する法律「生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律」(昭和32年6月法律第164号、略称:生衛法)で規定する飲食業、理・美容業などの総称です。


この生活衛生関係営業を行う方が日本政策金融公庫で500万円を超える一般貸付や振興事業貸付の申込みをする場合には、事前に生活衛生営業指導センターが発行する知事の推薦書を取得し、これを融資申込書に添えて提出しなければなりません。


そのため、美容院の営業を行う方で一般融資などを利用する場合には、日本政策金融公庫に申し込む前に、知事の推薦書を取得する必要があることに注意してください

なお、これは日本政策金融公庫だけの制度なので、信用保証協会付融資(制度融資)を利用する場合には必要ありません。

まとめ

美容院の開業をする場合には、まとまった資金が必要となるため、余裕を持った準備をしておく必要があります。

もし、自己資金だけでは資金が不足する場合には銀行からの融資や家族などからの借入れ、補助金の利用などもあわせて検討しましょう。


とくに日本政策金融公庫の新創業融資制度は、無担保・無保証、長期、低金利といった有利な条件で借入れをすることができるため、はじめて融資を利用する方におすすめできます。

この記事の監修
Scheeme株式会社
ScheemeMAG編集部
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