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起業するには何から始めたらいいのか?起業準備の方法や手続きの流れを解説

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起業するには何から始めたらいいのか?起業準備の方法や手続きの流れを解説|資金調達メディアScheemeMAG(スキームマグ)
現在、企業にお勤めの方の中には、「近いうちに独立して起業したい」という方も少なくないと思います。とはいえ、「何から手をつけたらよいのか?」、「どんな準備が必要なのか?」など不安に感じている方もいらっしゃるでしょう。しかし、きちんとした起業の準備ができているかどうかは、事業計画を作るためだけでなく、実際の経営にも大きな影響を及ぼします。この記事では、これから起業される方にとって、どんな準備が必要なのか?、今、しておいた方がよいこととは何か?について解説いたします。
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どうして起業したいのか、理由を明確にする

起業をするには、資金の準備や物品の手配などをする前に、最初に考えなければならないことがあります。
それは「なぜ、自分は起業をしたいのか?」ということを明確にすることです。
起業する方の中には「お金儲けをしたいから」や「有名になりたいから」という理由で起業される方も少なくありません。このような考え方が悪いわけではありません。
実際、 2021年3月に日本政策金融公庫が行った「起業と起業意識に関する調査」によれば、当初の起業動機については、約37%の方が「収入を増やしたかった」を第2位の動機としてあげています。

しかし、このような即物的な動機しかない場合は、その後にモチベーションが下がったり、事業そのものに対する意欲を失ってしまうことも少なくありません。同じ調査で起業後の方に行ったアンケ―トでは、事業を始めてよかったこととして「自由に仕事ができた」や「仕事の経験・知識や資格を生かせた」、「時間や仕事にゆとりができた」などが上位を占めており、「収入が増えた」と回答した方は7位にとどまっています。
このようにはじめは収入が目的であっても、事業をしていく中で価値観が変化していることがわかります。
以上のことからも、事業を続けていくうえでは、金銭への欲求だけではなく、事業を長く続けることのできる強い動機が必要といえます。
そのため、起業前の段階では「なぜ起業したいのか?」という理由について、よく掘り下げて考えることが、その後の事業の成功にもつながるといえるでしょう。

また、創業の動機は、創業融資を利用するときに必ず聞かれる項目です。金融機関は、創業動機が何かということを重視しているため、動機が弱い、根拠がないといった場合には、審査の結果にも影響する可能性があります。
したがって、融資を利用する予定のある場合には、事業計画の評価を高めるためにも、金融機関の納得を得られるような創業理由を考えておいた方がよいといえます。
起業動機(複数回答)
自由に仕事がしたかった  53.9%
収入を増やしたかった 37.4%
仕事の経験知識や資格を活かしたかった 22.6%
自分が自由に使える収入が欲しかった 15.0%
自分の技術やアイデアを試したかった 13.1%
「事業を始めてよかったこと」(複数回答)
自由に仕事ができた 57.5%
仕事の経験知識や資格を活かせた 33.4%
時間や気持ちにゆとりができた 26.3%
自分の技術やアイデアを富ませた 23.9%
事業経営を経験できた 22.9%
「起業した業種」(複数回答)
個人向けサービス業19.7%  事業所向けサービス業16.3%  情報通信業12.4%
小売業9.6%  建設業  6.7%
「起業時の組織の形態」
個人事業 86.1% 法人企業 13.9%

ビジネスプランを考え、どんな商品を作るか、どんなサービスを提供するか、絞り込む

起業をする際に、どのようなビジネスプランで事業をするかは非常に大切な要素です。
ビジネスプランとは「これから行う事業の仕組み」です。
また、ビジネスプランは、これまでの経験や実績のない創業者にとっては、ある意味、唯一の「事業をするための武器」といえます。
ビジネスプランが消費者に受け入れられれば事業は成功しますが、これが評価されなければその事業は失敗となります。

そのため、ビジネスプランについては、次のようなことが明確になっていることが望ましいといえます。
・社会的な課題や不満にはどんなものがあるか?
・その事業で何を達成または解決したいか?
・事業の市場はあるのか?その規模や成長の見込みは?
・競合はあるのか?
・自分の事業の強みは何か?ライバルに勝てる内容なのか?
・現状での事業の弱みは何か?対策は?
・サービスの主な顧客は誰か?
・どうすれば、その顧客を集め、またはアプローチできるか?
■社会的な不満からニーズをつかむ
ビジネスのニーズの多くは、現状の不満や悩みを解消したいという欲求から生じています。
また、このニーズが強いほど、ビジネスとして成功する可能性が高いといえます。
そのため、ビジネスプランを考える際には、自分でできることだからするというのではなく、悩みを解決できるからするという発想が求められます。
まずは、自分で感じた不満や悩みなどに社会的ニーズがないかということを考えてみましょう。

■何を達成または解決したいか?
ビジネスプランでは、最終的な目的が明確となっている必要があります。
たとえば、「現在のデータの管理方法を改善して、もっと簡単にデータのやりとりができるようにしたい」、「介護負担を軽くする補助器具を開発したい」などが最終的な目標の例となります。
具体的な内容は人それぞれですが、最終的に解決したいと考える目標が明確になっていないと、次のアクションや開発につなげることが難しくなります。

■事業の市場はあるのか?その規模や成長の見込み
事業を行うには、その受け皿となる市場があることが前提となります。
市場がないまたはその規模があまりに小さいような場合には、大きく成長することが難しくなります。そのため事業を始める場合には、公的なデータや専門誌の情報などにより、事業規模を調べておくだけでなく、市場の成長性や、自分が入り込める余地があるのかなどについても確認しておきしましょう。

なお、あえて狭い市場を狙うニッチ戦略という方法もありますが、その場合には自分でその市場の大部分を獲得できるだけの技術やアイデアが必要となります。

■競合について
どんな事業であっても、必ずライバル企業が存在します。
競合企業が多いいわゆる激戦区といわれる場所での開業は、相乗効果により集客が見込みやすい反面、価格やサービスの競争が厳しくなるため、これを克服するアイデアが必須となります。
またこれとは逆に、極端にライバルの少ない地域の場合は、そもそもその事業が地域に向いていないという可能性もあるため、なぜライバルが少ないのかといった調査などもしっかりと行う必要があります。

■事業の強みについて
事業の強みは、ビジネスプランにおける最大の核といえます。
他店と同程度の価格やサービスであれば、生き残りは厳しいといえるでしょう。

また、大幅な原価の引き下げなどは、仕入先と特別な関係がある、資金力があり大量仕入れができるなどの理由でもない限り、難しいのが現実です。
そのため、創業事業では、商品やサービスのオリジナリティや差別化、意外性などが主な武器となりますが、流行を追っただけのものは短期間で競争力を失ってしまうため、長く通用する強みを作り出す必要があります。

■事業の弱みについて
それぞれの事業には、必ずといってよいほど弱みとなる部分があります。
事業の弱みの例としては、競合先が強い、立地が弱い、差別化が十分でないなどが考えられますが、それ以外にも自分では対処することができない天候、流行の変化、コロナなどの突発的な病気の発生、法制度の改変などが弱みの原因となることもあります。
これらすべてを予測することはできませんが、少なくても 開業前からリスクの存在と対策を想定しておきましょう。 

■サービスの主な顧客
ターゲットの顧客を考えるのは、 「誰が事業の収入源となるのか?」ということとほぼ同義といえます。
コンセプトを考えた段階でどのような利用客が欲しいのかは想定できているはずですが、絞り込みが甘いとプランの内容もぶれたものとなりやすくなります。
なお、顧客を絞るのは機会の損失につながるのではないか?と心配される方もいますが、 逆にこれを絞らない場合には、利用者に刺さりにくい中途半端な内容となってしまいます。

ターゲットを絞れば絞るほど、訴求力が強い広告や集客をすることが可能となるだけでなく、広告費の節約にもつながります。

■集客について
どの事業でも、最も苦労するのが集客です。
日本政策金融公庫のデータでも、「売上を安定的に確保しにくい」(41.1%)が、起業前の不安の第1位となっています。
しかし、即効性のある集客方法というものはほぼ存在しないため、安定した顧客を獲得するには、質の良いサービスの提供と集客を継続する地道な努力が必要となります。
もし、早い段階で集客に成功すれば事業が軌道にのりやすくなるため、できれば事前にある程度の見込み顧客を確保してから開業することをおすすめします。

■起業の形を考える(法人設立でいくのか、個人事業主か、フランチャイズを利用するか)
起業時の事業の形態を何にするかにより、必要となる資金やその後の経営方法などが大きく左右されます。
そのため、一つの方法にこだわらず、いろいろな事業の形態やそのリスクを把握しておくことは、最適な事業の開始のためには欠かせません。

一般的には「法人として事業を行うのか?個人事業主となるのか?」、「フランチャイズに参加するのか?独自に事業を行うのか?」という2つの形態があります。

それぞれについては、以下のようなメリットデメリットがあるため、その特性を考えて自分にあったものを選びましょう。
法人のメリット・デメリット
<メリット>
税金が安くなりやすい
社会的な信用が高い
経費にできる範囲が広い
相続税がかからない など
<デメリット>
赤字でも税金(法人住民税の均等割-7万円)がかかる
従業員の社会保険や年金を一部負担しなければならない
記帳や決算手続きが複雑になる など

個人事業のメリット・デメリット
<メリット>
自分で営業の内容を決められる
少ない資金や手続きで開業できる
記帳や申告手続きがしやすい など
<デメリット>
法人と比べると社会的な信用が低い
採用などで不利となりやすい
一定以上の利益が出た場合には税負担が重くなる

フランチャイズのメリット・デメリット
<メリット>
経営のノウハウを習得できる
仕入れを本部で代行してもらえる
フランチャイジーの看板や知名度を利用できる
定期的、継続的な経営に関するアドバイスがもらえる
<デメリット>
自由な経営がしにくい
業種によっては、設備投資が多額となりやすい
ロイヤリティーなどの固定費が発生する
本部によっては、指導やアドバイスの質にばらつきがある

■創業資金はどんな形で調達するか、計画する
起業をする際には、多額の資金が必要となります。そのため、自己資金のみでの起業が難しい場合には、外部から資金を調達しなければなりません。しかし、資金を調達するためには、自分の状況と照らし合わせて、次のようなステップで準備をする必要があります。 

起業にいくらかかるか目安を立てる

資金調達をする時には、まずは自分の事業でどの程度の資金が必要となるのかを見積もっておく必要があります。
この目安がないと、事業にいくらの経費が必要で、いくらの融資を申し込めばいいのかがわかりません。
起業に必要な資金は、事業の規模や立地、内装費、従業員の数などにより大きく異なりますが、業種ごとの平均的な額がある程度決まっているため、これを参考に考えると目安を立てやすくなります。

なお、日本政策金融公庫の「2020年度新規開業実態調査」によれば、2019年の開業費用の平均値は989万円となっており、前年度の1.055万円と比較しても少なくなる傾向にあります。
業種別の開業資金の目安
飲食店 800〜1,500万円
ラーメン店 400~1,000万円
美容室 700~1,500万円
学習塾 200~1,000万円
不動産業 500〜1,000万円
士業 50~100万

起業のための自己資金を貯める

起業するときに必要な資金を借入れだけで賄うのは危険です。借入れの比率が高いほど、返済の負担が重くなり、また期間も長期となります。
これに対して自己資金は、返済不要の資金のため、この額が多いほど安定した経営をしやすくなります。
一般的に理想とされている自己資金の割合は、開業資金の半額程度とされていますが、これが難しい場合でも3割程度の自己資金があった方が安全といえます。
なお、自己資金を貯める方法には、以下のようなものがあります。
①預金や貯金
自己資金の代表的なものは、預金や貯金などの貯蓄です。
開業に必要な資金が把握できたら、それに向けて早めに準備をしましょう。
なお、創業融資を受けるときには、金融機関により自己資金の確認が行われますが、通帳などで貯めた履歴がわかるものは自己資金と認められます。
しかし、現金をそのまま貯めたようないわゆるタンス預金は、自己資金と認められないことがあるため注意してください。
②株などの有価証券
株や国債などの有価証券がある場合には、これらも自己資金とできます。
ただし、株などは時価によりその価値が変動するため、売却のタイミングに注意が必要です。
なお、創業融資でこれを自己資金とする場合には、売却して現金化しなくても、直近の相場で評価してもらうことができます。 
③退職金
会社を退職して独立開業する場合、退職金を自己資金とすることができます。
しかし、退職金は企業によっては支給されないこともあり、また在籍期間によっても金額が変わるため、あらかじめ自分の退職時にはいくらの退職金がもらえるのかを見積もっておきましょう。
④保険の解約
生命保険に加入されている方については、これを解約して返却金を自己資金とすることができます。
ただし、保険の種類によっては返却金がないものもあるので、事前にいくらの額が戻るのかを確認しておきましょう。
また、保険の解約により無保険となってしまうと、万が一の事故のときに補償がおりなくなってしまうので気をつけてください。
⑤贈与
親や兄弟などから資金の援助が得られる場合には、これも 自己資金の一部とすることができます。
日本政策金融公庫の創業融資では、親などからもらった資金はこれを自己資金として認める扱いとなっていますが、一部の制度融資などでは自己資金にならないケースもあるため、事前に確認しておきましょう。

起業で創業資金が借りられる融資先を見つける

必要資金の見積もりや自己資金の準備ができたら、次は実際に資金を借りられる先を見つけなければなりません。
しかし保証人や担保となる不動産がある場合を除いて、創業者が資金を調達できる可能性が高いのは、日本政策金融公庫制度融資の2つだけとなります。
これらはいずれも、低金利・長期・無担保無保証の融資を創業者でも比較的簡単な手続きや審査で利用することができます。

なお、銀行などが信用保証協会などを使わずに独自の責任で貸し出す融資を「プロパー融資」といいますが、プロパー融資を利用するには 信用力や実績が必要となるため、創業者による利用は難しいといえます。

起業で創業資金に使える補助金や助成金を探す

起業時の資金調達に役立つ方法としては、補助金や助成金の利用があります。
これらは返還不要の資金のため、獲得できれば起業時の資金繰りを大幅に楽にすることができます。

厚生労働省の助成金については、一定の要件を満たせば誰でもこれを受給することができますが、補助金やそれ以外の助成金については、審査により採択される必要があるため、誰もが受給できるわけではありません。
また補助金などは、すぐにもらえるわけではなく、資金が入金されるのは事業終了後に行われる検査の確定後となるため、資金を獲得できるまである程度の時間が必要となります。

創業者が起業時に利用できる補助金・助成金としては次のようなものがあります。
・ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
・小規模事業者持続化補助金
・キャリアアップ助成金
・IT導入補助金
・ 東京都創業助成事業

起業に必要な手続きの流れを調べて動く

企業に必要なのはプランの作成や資金の準備だけではありません。法人を設立する場合には設立登記の手続きが必要となる他、 許認可や届出などについても確認しておく必要があります。また、一つの手続きの準備だけでなく、事業計画書の作成や許認可、登記といった全体を通じたスケジュールについても確認しておく必要があります。

法人設立の流れ

法人を設立する場合には、以下のような手続きが必要となります。
・法人の種類の決定(株式会社・合同会社その他)
・定款の作成と公証人による認証手続き
・登記申請手続き
通常、法人設立に必要な期間は、最短で約10日〜2週間程度ですが、設立の時期が法務局 の繁忙期に該当するときや、手続きの補正がある場合には、さらに時間がかかります。
また、設立登記後には、次のような手続きが必要となります。
・法人口座の作成及び資本金の移し替え
・開業届の提出
・必要な許認可の取得や届出

その他、起業開始前にしておくべき手続き

経理や簿記の習得

事業を始める上で、必ず必要となるのが経理や簿記の知識です。
資格を取る必要まではありませんが、簿記3級程度の知識があれば簡単な経理は自分で行うことができます。
しかし、これらの知識の習得には、最低でも2〜3ヶ月程度の期間がかかるため、時間の余裕のある時から準備をしておくことをおすすめします。

なお、経理は、従業員に任せればよいと考えている人もいるかもしれませんが、税務署への申告や融資の申し込みのときには、経営者本人が帳簿の内容を説明できなければなりません。
そのため、人任せにせずに、自分でも最低限の内容を理解できるようにしておく必要があります。

許可や手続きの流れやスケジュールの確認

事業では、業種や営業の内容により、許認可や届出が必要となることがあります。
例えば飲食店の場合には、あらかじめ食品衛生責任者の選任や営業許可の取得が、さらに深夜営業をする場合には警察への深夜酒類提供の届出が必要となります。その他にも建設業については建設業許可、中古品の販売では古物商許可などが必要となります。

これらの許可や届け出は、開業前の時点で取得しておかなければ営業ができなくなるだけでなく、融資にも影響するため、あらかじめどのような許認可が必要で、その取得にはどの程度の時間がかかるのかなどを確認しておかないと、最悪オープンに間に合わない、融資がでないということにもなってしまいます。
したがって、一つの許可や届出についてだけでなく、他の手続きとも関連させたスケジューリングをすることが重要となります。

フランチャイズの検討

自分のノウハウや今後の経営方針に不安があるときには、フランチャイズの利用も検討しましょう。
フランチャイズでは、事業経験がない方であっても専門のトレーニングにより業務のノウハウを習得できる、仕入れを本部に任せられる、継続的に経営のサポートをしてもらえるなどの特徴があるため、初心者であってもスムーズに開業することができます。

また、融資を受ける場合にも、本部のサポートを受けられる、過去の成功事例にもとづく説得力のある事業計画書を作成しやすいなどのメリットもあります。
しかし一方で、 参加時に加盟金がかかる、開業後は一定のロイヤリティが必要、本部が決めたルールを守らなければならないなどの制約があります。
また中には、加盟金だけを取ってサポートをしない悪質な業者も存在するため、加盟の際には本部の質や実績を十分に確認することをおすすめします。

集客準備 どのような方法が自分にあっているかやコスト面での比較

開業後すぐに取りかからなくてはならないことの一つに、「集客準備」があります。準備にどの程度の期間や費用がかかるかは集客の方法により異なりますが、ある程度の集客を見込むのであれば早い段階から準備に取りかかる必要があります。

一般的な集客方法としては、店舗近辺でのチラシの配布や新聞への折り込み、雑誌・タウン誌などへの掲載、HPでの告知、SNSによる宣伝などがあります。
しかし、これらすべてに手をつけるのではなく、自分の事業と予算にあったものを選択して行うようにしましょう。とくに広告には、効果がわかりにくいものも少なくないため、「費用対効果にあっているのか?」 という観点からの見直しも必要となります。

いずれの方法についても、すぐに効果が出るものは少ないため、いきなり大きな予算をかけてするのではなく、少しずつ試していくようにしましょう。 

起業したら後戻りはできない、今一度自分が本当に起業したいのか振り返ろう

一度、事業を始めてしまうとそれを途中で辞めるのは大変です。もし、廃業をする場合には、次のようなコストやリスクが発生します。

■在庫品を破棄、または2束3文で売却しなければならない
廃業するときには、いきなりすべての事業を終わらせることはできません。短期間で廃業する場合でも、仕入れ先への買掛金の清算や売掛金の回収、在庫の処分などの作業が必要となります。
とくに、在庫品などはすぐに売り切れないため、破棄や捨て値での売却をしなければならないことがほとんどとなります。

■廃業までの家賃やテナントの原状回復費がかかる
事業でテナントを利用している場合には、契約終了時まで家賃を支払わなければならないだけでなく、退去時の原状回復費用もかかります。原状回復費用については、保証金でこれをすべてまかなえればよいのですが、入居時に差し入れた額が少ない場合には、追加の出費が発生します。

■取引先や顧客など人的資産を失う
廃業は、それまでに築き上げてきた取引先や顧客といった人的資産を失うことにもつながります。
仮に、新しい事業を始める場合でも、これまでの関係を活かせないことが多く、ほぼゼロからのスタートとなってしまうだけでなく、買掛金の支払いができない取引先などからは、訴えられてしまう可能性もあります。 

■融資の一括返済を求められる
廃業をした時に、一番の問題となるのが融資の返済です。自己資金だけで開業できている場合は問題ありませんが、金融機関から借入れをしている場合には、多額の残債が残っているため、その後の返済額も大きくなります。
なお、事業廃業後の返済の見込みがないときには、金融機関から融資の一括返済を求められることがあります。

無担保無保証の借入れでも、代表者が連帯保証人となっているときには、それが事故情報として信用情報機関に登録されるため、その後の借り入れやカードの作成ができなくなります。
また、土地や建物を担保に入れている場合には、これらについて任意売却や強制競売などが行われます。

このように廃業した場合には、ケースによっては取り返しの付かないリスクや負債を負うこととなります。

パートタイム起業や副業も検討する

日本政策金融公庫のデータによれば、起業をする方の割合は減少傾向ですが、その中でも一定数のパートタイム起業家が存在します。パートタイム起業家とは、経営している事業に充てている時間が1週間当たり35時間未満の方を指します。パートタイム起業や副業のメリットは、「少ない資金で事業経験を積める」ことや「万が一、失敗した場合のリスクが少ない」ということがあげられます。

起業時に、事業に関する経験が十分にある場合でも、成功するとは限りません。なぜなら、従業員の立場では「経営」を経験していないからです。どんなに作業やオペレーションができたとしても、事業に成功するためには経営者としての判断ができなくてはなりません。
しかし、従業員の立場でこのような経験を積むことはなかなか難しいといえます。けれどパートタイムのような短時間でも、実際に経営をすることができれば、「経営に必要なものは何か?」、「自分に足りないものは何か?」ということを身をもって知ることができます。

フルスペックでの準備や設備を揃えてから開業したがる人が多いですが、小さな規模で成功しないのであれば、大きな規模で成功することは難しいでしょう。
事業では、規模の大小に関係なく、やらなければならないことに差はないため、まずは「小さく始めて経営者としての経験を積む」ということをおすすめします。

また、パートタイム起業や副業の場合には、事業に失敗した場合のリスクも小さいといえます。もし自分の事業以外に本業があり、そこから一定の収入が得られる場合には、返済をしながらその後の生活を続けることもできます。
ただし、これらの本業でない事業については、日本政策金融公庫や制度融資を利用することができない場合があるため、自己資金でできる範囲から始めるようにしましょう。

まとめ

起業を希望している方については、「すぐにでも開業したい」という気持ちが強いと思います。確かに、開業にはタイミングも関係するため、この時期を逃したくないという気持ちはよくわかります。
しかし起業をする本来の目的は、事業を始めるだけでなく、長く経営を続けるということにあります。そのためには、自分の意思や目的は明確となっているのか?、そのための手段や準備は整っているのか?などについて入念に確認しておく必要があります。

また、すぐに本格的に始めるのではなく、パートタイム起業や副業から始めるというのも、経営の経験を積むためには有効な手段といえます。
なお、自分の目標がぶれたり、事業プランに迷う時には、一人で考えるのではなく、専門家の意見も参考にするようにしましょう。
幅広く意見を取り入れることで、自分の知識の不足や間違いを早い段階で修正することができます。 

この記事の監修
Scheeme株式会社
ScheemeMAG編集部
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