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開業支援でおすすめの補助金・助成金は?最適な相談先も紹介

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開業支援でおすすめの補助金・助成金は?最適な相談先も紹介|資金調達メディアScheemeMAG(スキームマグ)
開業時には、設備を購入するための費用の他、テナントの契約費、備品代などがかるため、多額の資金が必要となります。また、開業後には家賃、仕入れ代、人件費などといった経費も発生します。これらの経費を自己資金だけで賄えない場合、通常は融資を利用しますが、返済が始まった後の負担は重いものとなります。このような場合に利用したいのが補助金や助成金です。これらには返済義務がないため、受給できれば開業時の負担を大きく減らすことができます。しかし、補助金等の申請には、複雑な手続きや事業計画書などの作成が必要となるため、入念な準備が欠かせません。この記事では、開業時に利用できる補助金や助成金の種類や申請のポイントについて解説いたします。
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開業時に相談などができる機関

創業者が開業時に利用できる相談場所としては、以下のようなものがあります。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫では融資の支援だけでなく、創業希望者が創業支援の情報をワンストップで入手できるように、市区町村、商工会議所・商工会、大学などの創業支援機関と連携した創業支援ネットワークを全国912ヵ所で構築しています。


また、全国15カ所に創業支援センターを設置して創業に関する相談に対応している他、各支店での相談受付や創業セミナーの開催などをしています。

なお、全国6カ所に設置された「ビジネスサポートプラザ」では、土曜、日曜、夜間の相談を行っています。 ※祝日は除きます。また、相談は完全予約制となります。

参考:創業支援センター 

https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/sougyou10.html

東京ビジネスサポートプラザ

https://www.tokyo-sogyo-net.metro.tokyo.lg.jp/soudan/tokyo_bsp.html


商工会議所・商工会

商工会議所は「商工会議所法」を根拠とする経済産業省経済産業政策局の管轄であり、主に市および特別区に設置された組織です。

一方、商工会は「商工会法」を根拠とする中小企業庁の管轄組織であり、主に町村に設置されています。このように管轄や対象地域に違いはありますが、いずれもその目的は地域の中小企業の振興と支援であり、行っている事業の内容に大きな差はありません。

商工会議所等の主な事業としては、経営相談、専門家派遣、セミナーの開催などがあり、これらは創業者の方でも利用することができます。


また、商工会議所等は特定創業支援事業の実施機関となっています。この特定創業支援事業とは、商工会等が行う創業塾やセミナーといった創業支援事業のうち、国の「産業競争力強化法」にもとづき認定を受けた創業支援のことをいいます。そのため、商工会議所等のセミナーを受講し証明書を取得すると、「創業融資の申し込みが通常は事業開始2カ前からのところを事業開始6カ月前から申し込める」、「日本政策金融公庫の新創業融資制度を自己資金なしで利用できる」などの特典があります。

税務署

一般的に、税務署は納税のための役所と思われていますが、税に関する相談を行うこともできます。

国税庁では、「タックスアンサー」や「チャットボット」などのシステムによる相談を行っていますが、地域の税務署でも相談ができます。

とくに、開業時には、次のような届出が必要となります。

・ 法人設立届出書

・ 青色申告の承認申請書

・ 給与支払事務所等の開設届出書

・ 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

・ 棚卸資産の評価方法の届出書・減価償却資産の償却方法の届出書

これらの中には、状況によって記載する項目が異なるものもあるため、迷ったときには税務署に確認した方がよいでしょう。なお、相談にあたっては事前の予約が必要な場合もあるため、あらかじめ相談先の税務署にご確認ください。

インキュベーション施設

インキュベーション施設とは、起業予定や創業したばかりの方を支援するための施設で、市町村などが運営する公営の施設と、民間企業が運営する施設の2つがあります。

インキュベーション施設では、入居者への事務所スペースの提供の他、セミナーの開催、アドバイザーによるアドバイスなどを行っています。共有スペースや小さく区画されたスペースを使うため、通常の事務所より割安に利用できるといった特徴があります。また、法人を設立した場合の住所の登録ができる、来客用の応接スペースを利用できる、郵便物を受け取れるなどのサービスが用意されているところもあります。


なお、相談機関ではありませんが、ケースによってはフランチャイズへの加盟も効率の良い開業手段となります。これから行う事業についての経験がない場合には、開業準備に時間がかかりますが、フランチャイズに加盟してトレーニングを受ければ、基本的な実務を習得できるだけでなく、フランチャイザーの看板や仕入れルートを利用して営業ができるため、スムーズなスタートを切ることができます。


また、日本政策金融公庫では創業融資において、過去の事業に関する実績を重視するため、これがない場合には審査で不利となってしまいます。しかし、フランチャイズに加盟してシッカリとしたトレーニングを受ければ、これを事業経験として認めてもらえることがあります。

開業資金に利用できる補助金や助成金

開業時に補助金や助成金を利用できると、その後の資金繰りを格段に楽にすることができます。しかし、補助金などは種類が多く、また、利用できる要件もそれぞれで異なるため、あらかじめ自分が利用できる補助金等のポイントを押さえ、早めの対策をしておくことが重要となります。

補助金と助成金の違い

補助金と助成金は、どちらも返済義務のない公的な資金による援助ですが、法律でその使い分けが決められているわけではなく、その定義もあいまいです。

補助金は、主に経済産業省やその他省庁が行う給付が対象となります。また、審査の内容は、一定のテーマについて、その課題を解決できる技術やスキームを提供できるものかどうかということが重視されます。


一方、助成金は、主に厚生労働省が行う給付についてこのように呼ばれますが、それ以外のもの(例えば東京都の助成金など)でもこの名称が使用されています。なお、厚生労働省の助成金は、主に人の雇用や労働環境の改善、人材教育などについて助成をするという特徴があります。


そのため、補助金が内容の優劣を競うコンテスト形式であるのに対して、厚生労働省の助成金は、必要な要件を満たしていれば誰でも受給できるというところに大きな違いがあります。

開業時に利用できるおすすめの補助金や助成金

開業時に利用できる補助金や助成金には、以下のものがあります。

創業支援等事業者補助金(旧地域創造的起業補助金)

「創業支援等事業者補助金」は、産業競争力強化法に基づき、国からの認定を受けた創業支援等事業計画に従って民間事業者等が行う、創業支援の取り組みに要する経費の一部を補助する制度です。以前は、「地域創造的起業補助金(創業補助金)」という名称でしたが、令和元年度から現在の名称に変更されました。

補助率:補助対象経費の3分の2以内

補助額:最低50万円〜最大1,000万円

補助対象経費:人件費、旅費、設備費、広報費、外注費、委託費など

小規模事業者持続化補助金

「小規模事業者持続化補助金」は、小規模事業者が行う販路開拓や生産性向上の取組に要する経費の一部を支援する制度です。この補助金の申請では、商工会、商工会議所のサポートを受けながら経営計画書、補助事業計画書を作成する必要があります。

一般型と低感染リスク型ビジネス枠の2種類があり、それぞれ要件や補助額が異なります。

<一般型>

補助率:補助対象経費の3分の2以内

補助額:50万円(単独申請) 500万円(共同申請)

補助対象経費:チラシ作成、ウェブサイト作成、商談会への参加、店舗改装 等


<低感染リスク型ビジネス枠>

補助率:補助対象経費の4分の3以内

補助額:100万円

補助対象経費:ポストコロナを踏まえた新たなビジネスやサービス、⽣産プロセスの導⼊等

地方再生中小企業創業助成金

「地方再生中小企業創業助成金」は、地方再生事業(雇用失業情勢の改善の動きが弱い地域において、地方再生のための雇用創出効果が高い重点産業分野に該当する事業)を行う法人を設立又は個人事業を開業し、就職を希望する者(65歳未満)を1人以上雇用した場合に支給される助成金です。

補助率:創業支援金 2分の1~3分の1以内

補助額:創業支援金 150〜500万円  雇入れ奨励金及び追加雇入れ奨励金 30~60万円

補助対象経費:法人等の設立に関する事業計画作成経費、職業能力開発経費、設備・運営経費など。ただし人件費を除く。

子育て女性起業支援助成金

子育て期にある女性自らが起業し、起業後1年以内に労働者を雇用し、雇用保険の適用事業の事業主になった場合に支給される助成金です。ただし、被保険者期間が5年以上あること、12歳以下の子と同居していること、指定された地域に在住していることなどの要件を満たす必要があります。

補助率:創業支援金 3分の1以内

補助額:創業支援金 200万円  

補助対象経費:法人等設立の計画作成のために要した経営コンサルタント等の相談費用、登記費用、事務所等の改装および賃借に要した費用(賃借料を除く)、知識、技能を習得するための講習または相談に要した費用など 

生涯現役起業支援助成金

「生涯現役起業支援助成金」は、中高年齢者(40歳以上)が起業した場合に、労働者の雇用に関する募集・採用や教育訓練費用の一部を助成するものです。「雇用創出措置助成分」と「生産性向上助成分」の2種類があります。

補助率:<雇用創出措置助成分> 3分の2以内

<生産性向上助成分> 雇用創出措置助成分の助成額の1/4の額を別途支給

補助額:<雇用創出措置助成分> 200万円  

補助対象経費:募集・採用に関する費用、教育訓練に関する費用


以上のように開業時に利用できる補助金や助成金には多くの種類がありますが、これらは先にもらえる資金ではないため、当面の運転資金や補助事業を行うための資金が必要となります。

そのため、自己資金だけでこれらを賄うことができない場合には、融資を受けるということも検討すべきです。融資を受けた資金を使って補助事業を行えば、自己資金が少なくとも十分に補助事業を行うことができます。

開業時に支援を受ける際の注意点

補助金や助成金はスタート時の資金繰りに役立ちますが、受給にあたっては厳格な審査や要件があります。また、補助金等の申請に共通した注意点もあるため、確実な受給のためには、これらのポイントをシッカリと理解しておく必要があります。


■返済の義務がないが、支給は原則、「後払い」となる

補助金と助成金は、どちらも返済義務がありません。助成金には、一定の要件を満たせば受給できるものがありますが、これに対して補助金は、事業者がすべての費用を立て替えた上での後払いの給付となります。そのため、あらかじめ事業をやり遂げられるだけの資金の準備が必要なことや、すぐに必要となる資金繰りには利用できないということに注意が必要です。


■すべての人がもらえるわけではない

補助金や助成金は、すべての方がもらえるわけではありません。とくに補助金については、採択率の低いものが多くあります。そのため、自分にあったものを選んで申し込まないと、時間と労力の無駄となってしまいます。また、補助金等には、併給制限といって、一度、補助金等を受けた場合には、しばらく他の補助金の需給ができなくなることがあるためご注意ください。


■補助金や助成金は提出資料が必要。時間もかかる

通常、補助金の支給は、公募→申請→審査→交付決定→補助事業開始→終了検査→清算手続き→交付という流れで行われます。そのため、補助金の支給には3~6ヶ月以上かかるものも少なくありません。また、申込みにあたっては、事業計画書など多くの書類の提出が必要となりますが、これらの作成には、一定の時間がかかるため、そのための時間も見込んでおく必要があります。


なお、補助金の審査に合格した場合には、「交付決定」がされますが、これで決定された額はあくまでも受給できる最大の額となります。したがって、その後の終了検査で経費に認められないものがある場合には、受給額が減額されることもあることに注意してください。


■会計検査院の検査が入る可能性がある

会計検査院は、国会及び裁判所に属さず内閣からも独立した憲法上の機関として、国や法律で定められた機関の会計を検査し、会計経理が正しく行われるように監督する機関です。


補助金や助成金は、国の税金を使って行われる給付のため、これらを受給した企業については、後日、会計検査の対象となる可能性があります。補助金の受給をしたすべてが検査の対象となるわけではありませんが、検査が入った場合には、必要書類の準備や立ち合いに時間と手間がかかるだけでなく、不正な利用があった場合には追徴などの処分が行われる可能性もあります。


■補助金や助成金の申請には、自己資金も必要

補助金や助成金を受給するには、事業主がいったん事業にかかる経費の全部を建て替え払いすることになります。そのため、補助事業を最後まで行うには、あらかじめそれらの資金を準備できる必要があります。

この場合、融資を利用して資金を集めることもできますが、融資についても資金が出るまでにはある程度の時間がかかるため、トータルにこれらのスケジュールを考えた計画が必要となります。


補助金や助成金の申請では、事業計画書を作成することが多く、また、制度の内容も短期間で変更されることが少なくありません。そのため、事業計画書の作成に不安がある、最新の情報を知りたいという場合には、専門家や認定支援機関にアドバイスをもらうこともひとつの手です。


Scheemeでは、融資・補助金の両方について実績があり、経験豊富なアドバイザーが多数在籍しています。もし、補助金等についてのお悩みがあるときには、お気軽にご相談ください。

まとめ

補助金や助成金は、返還不要でもらえる資金のため、獲得できれば開業時の資金繰りの改善に大きく役立ちます。しかし、いずれについても厳格な審査や要件があるため、これらを獲得するためには、それぞれの制度にあった準備と知識が必要となります。

なお、補助金等は、必要な事業の資金調達の手段として利用するものですが、補助金が欲しいから事業を行うといったケースでは、事業そのものの失敗にもつながりやすくなります。そのため、まずは補助金等が本当に事業にあったものなのかをよく考えて申し込むことをおすすめします。


なお、事業計画書の作成や手続きの内容に疑問や不安がある場合には、早めに補助金の窓口やハローワーク、専門家などにご相談ください。


この記事の監修
Scheeme株式会社
ScheemeMAG編集部
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