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創業計画書の書き方のポイント、日本政策金融公庫の記入例を使って詳しく解説します!

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創業計画書の書き方のポイント、日本政策金融公庫の記入例を使って詳しく解説します!|資金調達メディアScheemeMAG(スキームマグ)
日本政策金融公庫の創業融資を利用する際には、 創業計画書の作成と提出が不可欠となります。 創業融資の審査では、創業計画書がほぼ唯一の判断材料となるため、単に書けているというだけではなく、金融機関が納得できる内容となっている必要があります。創業計画書には、作成にあたって注意しなければならないポイントがいくつもありますが、これらをキチンと押さえたものでないと融資の減額やお断りの原因となってしまいます。この記事では日本政策金融公庫のフォーマットを元に、創業計画書の書き方や作成上の注意点について解説いたします。
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創業計画書とは?

創業計画書とは、どんな事業を、どのように実現していくかを記載した事業の設計図です。
金融機関で商売の内容を説明したり、 創業する上での課題がやるべきことを明確にする目的で作成します。 

なぜ創業計画書は必要か?

創業者には、事業に関する実績がないため、金融機関もそのままでは計画の内容を評価することができません。
そのために必要となるのが創業計画書です。創業計画書では、創業の動機や事業の内容、収支の見込みなどについて記載しますが、金融機関では主にこれだけを参考に融資をするため、その出来・不出来は審査に大きな影響を及ぼすこととなります。
したがって、その内容が金融機関を納得させられるものとなっているかどうかということが、創業計画書を作成するときのポイントとなります。

創業計画書の書き方、日本政策金融公庫の記入例を使って解説

創業の動機

この箇所では、「なぜ創業するのか?」、「創業して何をしたいのか?」ということを、これまでの経験や体験を踏まえて記載します。
公庫の「洋風居酒屋」の記載例では「以前から、居酒屋をしたかったところ、よいテナントと仕入れ業者が見つかったため開業することにした」となっていますが、この程度ではまったく不充分です。
これらに加えて「その事業についてどのような準備(場所・設備など)をしてきたか?」や「なぜ、事業が成り立つと思うのか?」などについてもあわせて記載すると、より丁寧でわかりやすい内容となります。

また、記載にあたっては熱意を伝えることも大切です。そのため「どれだけこの事業に対する思い入れがあるか」を表現できるように工夫しましょう。

経営者の略歴等

ここでは、経営者の略歴を記載します。
しかし単に「◯年◯月 ◯◯で勤務」などと書くのではなく、そこで何をしたのか、どんな経験をすることができたのかなどについて細かく記載することをおすすめします。
また、コンテストでの入賞経験や社内での受賞経験などがある場合は、忘れずに記載するようにしましょう。
平成20年3月  ◯◯調理師専門学校 ◯◯科卒業
平成20年4月  レストラン◯◯へ入社(洋食)
調理業務及びホールでの接客業務を担当。2年目より厨房での調理をメインに従事。3年目より仕入れ業務も担当。
平成24年3月  一身上の都合により退職
平成24年4月  株式会社◯◯入社 新宿西口店配属(海鮮系居酒屋業態)
キッチン業務及びホール業務。翌年9月より店長へ昇進。業務全般の統括と経理業務に従事。平成26年に社内技術コンペにて2位を受賞。
平成28年3月  独立準備のため退職 
平成28年11月  開業予定
保有資格:調理師免許(平成20年4月都№〇〇)

取扱商品・サービスの内容

ここでは、取扱商品・サービスの内容を記載します。
なお、 記載例では、この部分のスペースは3行しかありませんが、やはりこのボリュームでは不十分です。さらに、記載例を充実させた内容としましょう。
なお、記載例にもあるように、ランチとディナーの両方の営業をする場合には、それぞれに分けて記載することをおすすめしますが、この場合には売上げや原価も別々に算定する必要があることに注意してください。
細かな内容や他との比較が必要な場合には、表やグラフなども積極的に活用しましょう。また、メニューやカタログなどを作成している場合には、これらを提出するようにします。
なお、ここで記入する商品の価格や客単価は、これにもとづいて収支予定を立てることになりますので、両者の間で食い違いがでないようご注意ください。

セールスポイント

セールスポイントを記載する際のキーワードとなるのが、「差別化」と「説得力」です。
「すでにある他店の商品やサービスとどう違うのか?」、「なぜ、それがセールスポイントになるのか?」などについて、その根拠をハッキリと伝えるようにします。
「提供する商品が本当に顧客に求められているのか?」、「他店よりも良いものなのか?」という視点を入れるとわかりやすく、説得力のある内容となります。また、その際には「その事業がどのような仕組みで、収益を生み出すのか?」にも触れられれば、さらにベターな内容となります。
セールスポイントの例
・ 開業予定地に個人的な人脈が多く、これらを活用した早期の集客が可能
・ 経験が豊富なスタッフが多いため、スムーズなオペレーションと質の高い接客が可能
・ 深夜~朝方に営業している店が少ないことから、重複しない時間での集客が見込める
・ 開業直後から、取引先と掛けでの仕入れが可能

販売ターゲット・販売戦略・競業状況

販売ターゲットは、見込み客の「年齢」、「性別」、「およその職業」および「商圏の範囲」を明確に記載します。
たとえば、「半径1km圏内の中小企業に勤務する30〜50才の男性および同伴の女性客」程度には絞り込んだ方がよいでしょう。ターゲットの設定を間違えると、メニュー内容や金額を見直さなくてはならなくなりますので、十分な市場調査をして決めましょう。

販売戦略は、公庫の記載例ではあまり明確になっていませんが、ターゲットに対して「どんなサービスを提供するのか?」「そのサービスで、どのような効果が見込めるのか?」、「その実施のために、かかるコストはいくらなのか?」という点を中心にまとめると、説得力のある内容となります。

競合状況については、自分で営業の範囲を決め、その中に同業店や類似店がどのくらいあるかを調べます。地図に自店を中心に数百m〜1キロ程度の円を描き、その中に同じような店がどのくらいあるのかをマークしたものを資料として添付するとわかりやすく、公庫の理解を得やすいものとなります。

取引先・取引関係等

販売先や取引先が既に決まっている場合には、その店名・住所、取引のシェア、かけ取引の割合だけでなく、代金の回収や支払いの条件についてもキチンと記載します。 仕入先との関係についても具体的に記載した方がよいでしょう。

もし、これから開業する方で仕入先のあてがない場合には、自分が仕入れたいと思う商品を扱っているお店に連絡し、「開業後に取引が可能かどうか?」「仕入れ条件はどうなるか?」などを確認し、それにもとづいて記載すればよいでしょう。
なお、飲食店のような立地条件が重要な業種の場合は、その立地を選んだ理由についても記載します。 

従業員

この箇所では従業員等の人数を記載しますが、従業員やパート数の数は現時点での見込み数でかまいません
なお、公庫では、雇用拡大の観点から他人を雇うことが推奨されているため、できるだけ雇用する計画とした方が評価につながりやすいといえます。
また、途中から従業員を増やす予定の場合には、その給与なども収支計画で見込んでおかないと、資金不足となってしまう可能性があります。

借入の状況

借入れやローンなどがある場合には、借り入れ残高と年間の返済額をそれぞれ記載します。
なお、個人的な車や買い物のローンなどはよほど高額でない限りあまり審査に影響しませんが、事業性のローンについては、内容によっては問題ありとされる可能性があります。

必要な資金と調達方法

「必要な資金の欄」は、設備資金と運転資金に分けて記載します。
創業時の投資額は過大になりがちなため、設備については複数の見積もりで比較するようにしましょう。 また、最初は小さく始めて大きく広げるという方向で、当初の設備はできるだけ必要最低限のものに絞ると好印象となります。
 
運転資金は、従業員の給与、家賃、商品仕入れなどに支払うために必要となる資金です。
日本政策金融公庫の調査によれば、開業後事業が軌道に乗って黒字化するまでには平均7ヶ月以上の期間がかかるとされています。 そのため、運転資金については十分な余裕を持ち、ゆとりを持った計画を立てましょう。
 
資金をどのように調達するかは「調達の方法」の欄に記載します。
まずは自己資金の欄から埋めていきますが、自己資金とは、法人の資本金や事業のために自分で貯めた資金など、返済が不要な資金がこれに該当します。
親等からの借り入れがある場合には、「親、兄弟、知人、友人等からの借り入れ」欄に記入しますか、ここで記載した額は自己資金とならないことに注意してください。
「日本政策金融公庫からの借り入れ」の欄には、今回申請する融資額を記載します。最後に、「他の金融機関からの借入れ」欄を記載しますが、ここには現在、借り入れをしている額もしくは、これから借りようとしている額(他銀行等からの借り入れ予定額など)を記載します。
なお、「必要な資金」欄と「調達の方法」欄の合計額は、必ず一致させるようにしてください。

事業の見通し

この箇所では、今後の収支の予定を記載します。 売上高などの算出方法は業種によって異なります。
例えば、飲食店やコンビニエンスストアの売り上げは、次の計算式で算定するのが一般的です。
<飲食店の場合>
客単価×客席数×回転数×営業日数
<コンビニエンスストアなどの販売業の場合>
1㎡あたりの売上高×売り場面積

売上原価は、業界平均などをもとに算出するようにします。
日本政策金融公庫のホームページには、業種ごとの売上高や原価率などの平均が掲載されているので、収支計画を作る上での参考となります。
なお、収支計画を作る時には、売り上げが多く経費は少ない甘い予測となりがちです。そのため、市場調査などのデータを利用して多角的に検討することにより、収支計画の客観性を高めるようにすることが重要となります。 

一通りの事業計画書の作成ができたらなら、いきなり提出するのではなく、まずは身近な人や専門家に説明してみることをおすすめします。
説明がうまくできない箇所がある場合には、その部分のプランが不十分となっている可能性があるため、もう一度、内容を見直してみましょう。

なお、日本政策金融公庫では、定期的に無料の創業セミナーを開催しているので、計画の作り方がわからない、計画の内容に不安があるなどの場合には、これらのセミナーへの参加も検討しましょう。
また、全国152地点で行なっている創業サポートディスクや ビジネスサポートプラザでも創業に関する相談ができます。 

創業計画書のテンプレートはどこで手に入る?

創業計画書のテンプレートは日本政策金融公庫のホームページから入手することができます。
ダウンロードしてそのまま記入すれば、融資の提出用として使用できます。また、公庫では種別に応じて9業種の計画書記入例も用意しているので、自分に最もあった業種のものを参考にするようにしてください。
創業計画書テンプレート・記載例
https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html
中小企業の経営等に関する調査
中小企業の経営等に関する調査|日本政策金融公庫 (jfc.go.jp)

創業計画書記入時の注意点

記入例を鵜呑みにしない

日本政策金融公庫では、業種に応じた記載例を多数用意していますが、これをそのまま真似するのはおすすめできません。
記入例では、内容が A 4 用紙1枚程度にまとめられていますが、実際の融資の申請で利用するにはこの内容では不十分だからです。
記載すべき項目の一つ一つについて丁寧に書いていけば、通常は A 4用紙3枚分以上の情報となります。 これをわざわざ一枚にまとめてしまう必要はありませんし、またそれでは伝えたいことが十分に書ききれません。

そのため創業計画書を作るときには、公庫のフォーマットに記載されている項目はもらさずに、内容を別紙に作成することをおすすめします。
またこの場合、公庫のフォーマットの用紙については、商号や本店のみを記載し、残りの項目については「別紙の通り」としておきますが、担当者によってはフォーマット用紙の提出を求める場合と別紙の事業計画書があれば不要とされる場合がありますので、あらかじめご確認ください。

創業計画書の書き方では数字の裏付けが重要、できるだけ添付資料を準備する

創業計画書では、売上げや原価率などについての根拠を示す必要があります。
根拠が示されていない計画は、信憑性が低く、実現性の乏しいものと捉えられてしまいます。
これらの根拠については、公庫や政府機関などの公的なデータを使用してその参照元を併記する、契約書や発注書などの書類のコピーを提出するなどの方法により示します。

なお、収支計画では、売上げの根拠が最も重要となります。
例えば飲食店の売り上げについては、前述の「客単価×客席数×回転数×営業日数」の計算式でこれを予測することができますが、ただ単にこれらを記載しただけでは根拠のある計画とはいえません。
客単価や回転数については、なぜそのように考えたのかを明確に説明できる必要があります。客単価については、自店のメニューやサービス料金表などを使用すると説得力のある説明をすることができます。
例 客単価についての根拠
これまでの経験から、来店者一人が注文するメニューの数は、主采品1.5品、副菜2品、ドリンク2杯が平均と想定しています。 これを当店のメニューに置き換えた場合、主采平均単価800円、副菜平均単価500円、ドリンク平均単価500円となります。そのため平均注文数と掛けあわせた場合、主采品1.5品×800円、副菜2品×500円、ドリンク2杯×500円となることから3,200円を平均客単価として考えています。

回転率についての根拠
日本政策金融公庫のデータによれば、同規模程度の飲食店の回転数の平均は1回となっています。
しかしこれは一般的な飲食店のデータであり、当店では創業期ということもあるため、経営を軌道に乗せるまでは約4ヶ月程度の時間がかかるものと考えています。そのためこの回転率部分についても、1ヶ月目-0.7、2ヶ月目-0.8、3ヶ月目-0.9の掛け率をかけたもので算定しています。

創業計画書は面接でも使われる、内容を把握しておいて矛盾のない受け答えをしよう

創業融資では、審査の一環として必ず公庫の担当者との面談が行われます。
そのため、これから融資を受けようとされる方の中には、金融機関との面談が怖いという方も少なくありませんが、公庫との面談はしっかりと対策をして臨めば思うほど難しいものではありません。
しかし、面談の際には、最低限の受け答えが必要となりますし、気をつけた方がよいことなどもあります。そのため、あらかじめどのようなことを聞かれるのかを把握した上で、対策をしておくことが面談を成功させるカギとなります。

公庫との面談では、次のようなことを聞かれる可能性がありますので、あらかじめ準備をしておきましょう。 
・なぜ、この事業始めようと思ったのか?
・この事業についての経験はどの程度あるのか?
・自己資金はいくらか?どうやって貯めたのか?
・なぜこの場所で開業しようと思ったのか?
・取引先や仕入先は決まっているのか?取引条件はどうなっているのか?
・借入希望額はいくらか?運転資金と設備資金の額はそれぞれいくらを予定しているか?
・想定する売上げが達成できると考える根拠は何か? など

重要なのは「創業の動機」、行き当たりばったりな動機は審査者の印象を悪くするので注意

創業計画書を作成する上で「創業の動機」は重要なポイントとなります。
これが弱いまたは根拠がないような場合は、その他の部分がしっかり書けていても減点となる可能性があります。「以前に経験したことがあるので」などの消極的な理由や、「儲かりそうだから」などの理由を動機とするのはできるだけ避けましょう。
この部分で、ポイントが高くなりやすいのが「公利」という考えをいれるということです。公利とは、「公共のために役立つ利益」のことをいいます。

例えば、飲食店を開業するにあたって「単に儲けたいから」とか「有名になりたいから」という自分本位の利益だけでなく、「料理を通して団らんの場を作りたい」、「今までにない新しい料理を作って、皆を喜ばせたい」などが公利の考えといえます。
とくに公庫などの政府系金融機関では、社会貢献や公共の利益の促進ということを重視するため、このような考えが動機に含まれている場合には、評価も高くなりやすいといえます。

まとめ

日本政策金融公庫の新創業融資制度は、大きな金額を低利、長期、無担保無保証で利用できる制度です。そのため創業融資を利用して資金の調達ができれば、有利に開業することが可能となります。
しかし、創業融資では創業計画書の提出が必須となり、その出来不出来は結果に大きく影響します。

また、事業計画書には、多くの項目について記載をしなければなりませんが、「明確な動機」、「内容の妥当性」、「数字に関する根拠」が明確となっているかがポイントとなります。さらに、面談も重要な審査の要素となるため、これらのことに注意して説得力のある計画を作成するように心がけましょう。

この記事の監修
Scheeme株式会社
ScheemeMAG編集部
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