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新創業融資制度では据置期間は設定できる?据置期間の意味と取扱いについて徹底解説

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日本政策金融公庫の融資では、元本の返済の開始を遅らせることのできる「据置期間」という制度が設けられています。これを利用すると、返済や資金繰りの負担を軽減することが可能となります。しかし、据置期間の利用にはデメリットもあるため、その使い方には工夫や注意も必要です。この記事では、新創業融資制度における据置期間の意味や使いかた、メリット・デメリットについて解説いたします。

そもそも据置期間とは?

「据置期間」とは、融資の借入れをしたときに「元本の返済が猶予される期間」を意味します。

据置期間中は、利息だけを払えばよいため、資金繰りの負担が軽減されます


通常、融資を受けた場合には、その翌月から元本と利息の支払いが始まります。

しかし、創業時や新たな計画を始めたばかりの頃は、事業がすぐに軌道にのらないため、すぐに元本と利息の両方を支払うと、資金繰り上の大きな負担となります。

そのため、日本政策金融公庫をはじめとする一部の金融機関では据置期間を設定し、借入人の返済負担の軽減を図っています。


なお、据置期間の設定をするかどうかは申込人の任意となるため、その存在に気付かなかった場合や、申込書の適用箇所への記入を忘れた場合などは、据置が適用されないことがあります。

また、据置が適用されるのは、元金についてだけであり、据置期間中であっても利息の支払いの軽減や延長はできないことに注意してください

据置期間は返済期間に含まれる?据置期間に係る2つの注意点

据置期間を利用する場合には、その期間は返済期間に含まれるのでしょうか?

また、据置期間を利用する場合には、どんな点に注意が必要なのでしょうか?

ここでは、据置期間を利用するときの注意点について解説します。

注意点① 据置期間は返済期間に含まれる

据置期間の適用を受ける場合、その期間は返済期間に含まれます。

つまり、据置期間は、返済期間全体の内数となります。


たとえば、返済期間60ケ月の借入れについて6ヶ月の据置をした場合の返済期間は60ヶ月のままとなります。

ただし、この場合は、はじめの6ヶ月については元金の支払いが据え置かれ、7ヶ月目から支払いが始まります。


このように据置期間を設定した場合でも、その分返済期間が延びるわけではありません。

注意点② 利息の支払総額が据置期間なしより高くなる

据置期間を利用した場合には、最終的に支払う利息の総額が大きくなります。 


たとえは、600万円を60回、利率2.5%、元金均等方式で計算した場合の利息の総支払額は381,218円となりますが、据置期間を6ヶ月利用した場合の利息の総支払額は418,724 円と大きくなり、据置期間が長いほど利息の総支払額は大きくなります。


   元金総支払額 利息総支払額        

据置なし 6,000,000円      381,218円

据置3ヶ月 6,000,000円 399,972円

据置6ヶ月 6,000,000円  418,724円

据置12ヶ月 6,000,000円 456,226円


これは据置期間を設けたことで、支払いをしていない期間の元金にかかる利息の支払い額が増えるためですが、このように据置期間を利用した場合には、利息の支払総額が増えることになります。

据置期間の設定、そのメリット・デメリット

据置期間にはメリットがある一方、デメリットも存在します。

デメリットに気づかずに過剰な据置期間を設定してしまうと、その後の返済が困難となりやすくなるため、メリットとデメリットの両方をよく考えて設定するようにしましょう。

据置期間設定のメリット

据置期間を利用すると、次のようなメリットが得られます。


〇 資金繰りに余裕ができる

据置期間を設定することの最大のメリットは「資金繰りに余裕ができる」ことです。

開業当初などの資金が十分でないときには、融資の返済は重い負担となります。

通常、事業が軌道にのるまでには、早くて3ヶ月、平均的には6ヶ月程度の時間がかかりますが、融資の返済は借入れをした月の翌月から始まります。


また、借入れの際には3~4ヶ月程度の運転資金を調達するのが一般的ですが、この運転資金のなかには、融資返済の元金は含まれません。

]そのため、この返済分については、借りたお金を当てにせず、自分の事業の利益の中からねん出する必要がありますが、これなども、融資後の資金が不足しやすくなる原因の一つとなります。


しかし、据置期間を設けることで、この最も資金繰りが厳しい時期に元金の支払いをしないで済み、また、その分の資金を他の運転資金に回すことができるため、余裕のある資金繰りをしやすくなります。


〇 精神的な余裕ができる

事業開始後に、最も経営者の負担となりやすいのが、「返済をしなければならない」というプレッシャーです。

ただでさえ、開業時には支払わなければならないものが多く、また、見込んでいた売り上げも予測に届かないということが起こりがちです。


そのため、資金繰りがうまくいかない場合には、経営者の精神的な負担は大きなものとなります。

また、金融機関への返済を遅らせてしまうと、評価が落ちるだけでなく、次回以降の借入れにも影響する可能性もあることから、その支払いには神経質にならざるを得ません。


しかし、一定の据置期間を設けることで、その期間については、精神的にも余裕を持った資金繰りができるだけでなく、支払いをしなければならないというプレッシャーからも逃れることができるため、経営に集中することができます。

据置期間設定のデメリット

据置期間を利用した場合のデメリットとしては、次のようなものがあります。


〇 据置期間を利用すると、その後に支払う元本の負担が重くなる

据置期間を利用した場合、融資の返済期間そのものが短くなるわけではないため、据置期間が長ければ長いほどその後の元金の支払いの負担が重くなります。


例えば600万円を5年(60回)で返済するケースの場合、毎月の元金の支払額は以下のとおりとなります。

     元金総支払額  1回あたりの元金支払額        

据置なし 6,000,000円      100,000円

据置3ヶ月 6,000,000円    105,263円

据置6ヶ月 6,000,000円    111,111円

据置12ヶ月 6,000,000円   125,000円


この理由は、元金を支払わなかった期間分の額が後倒しで加算されるために起こることによります。

このように、据置期間を利用しても元金自体の総支払額には影響はありませんが、据置期間が長いほど1回あたりに支払う元金額は大きくなります。


〇 据置を希望しても、必ず適用されるわけではない

据置期間は申し込んだから、必ず希望通りの期間になるというわけではありません。

具体的な期間は、申込人の資力や経験、事業計画書の内容などを総合的に考慮して、審査により決められます。

そのため、6ヶ月の期間を希望している場合でも、3ヶ月に短縮されたり、据置期間そのものが認められないということもあります。


したがって、事業計画書を立てる際には、あまり据置期間に頼ることなく、通常の返済でも問題のない計画をベースとしておくことも必要です

なお、据置期間は返済開始後には変更ができないため、据置期間を決める時にはその後の返済額なども十分に考慮して決めるようにしましょう。

適切な返済期間の決め方

融資においては、据置期間と返済期間には密接な関係があります。


返済期間が短期間の場合には毎月の返済額が大きくなりますし、逆に長期間の場合には、毎月の返済額は少なくなります。

また、据置期間がないまたは短い場合には、初期の支払い負担は大きくなりますが、総額での利息の支払額は少なくなります。

逆に据置期間が長い場合には、返済当初の支払いは楽になりますが、利息の支払総額は増えることとなります。 


そのため、返済期間を決めるときには、これらの関係を考えながら、最適な設定をする必要があります。


適切な返済期間を決めるには、まずは今後の事業でどのくらいの利益を上げられるかを正確に予想することが不可欠となりますが、通常、金融機関では、次の計算式を使って、企業が返済できる利益から妥当な返済期間を算定しています。


 融資額 / (経常利益+減価償却費)


たとえば、融資額が600万円の場合、予想される経常利益が100万円/年、減価償却費が20万円/年の場合は、600万円÷120万円=5となるため5年が妥当と判断します。


このように、適切な返済期間を何年にすればよいかは、どのくらいの利益を生み出せるかということから計算することができます。

ただし、まだ事業実績のない創業者については、事業計画書で予測する利益を使って算定することとなります。


なお、一般的に金融機関では、長すぎる返済期間を嫌います。

そのため、融資に成功する確率を高めるには金融機関が妥当と思う期間を設定する必要がありますが、返済期間の設定に困った場合には、この考えを使って算定すれば金融機関の納得を得やすくなります。

新創業融資制度における据置期間の取扱いについて

据置期間は、各融資制度ごとに決められているため、融資の種類によってその長さも異なります。

また、新創業融資制度は、単独の融資制度ではないため、新創業融資制度自体には据置期間を設定できないことにも注意が必要です。

新創業融資制度単独では据置期間の設定はできない、併用して利用する各制度融資の返済期間の中で決まる

据置期間の上限は、各融資制度の中で、それぞれ決められています。

そのため、融資の種類が違えば、その長さも異なります。

日本政策金融公庫では、一般的には、運転資金については7年、設備資金については20年というケースが多いですが、融資の種類によってはこれと異なる期間が設定されていることもあります。


なお、新創業融資制度は、これ単体で独立した融資制度ではありません。

新創業融資制度の役割は、通常の融資制度に無担保無保証の枠を設定するための特別なものです。

そのため、新創業融資制度を利用するときには、そのベースとなる融資制度と併せて利用することが不可欠となります。


よく、据置期間は新創業融資制度に設定するものと勘違いされる方がいますが、据置期間の設定をする対象はベースとなっている融資制度であり、新創業融資制度ではありません。

そのため、新創業融資制度を利用しない場合であっても、個別の融資に据置期間を設定することが可能です

併用する各制度融資の返済期間と設定可能な据置期間一覧表

新創業融資制度が利用できる、主な融資の種類と返済期間および据置期間は、次のとおりです。


「一般貸付」 

運転資金 5年以内(特に必要な場合7年以内)<うち据置期間1年以内>

設備資金 10年以内 <うち据置期間2年以内>

特定設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>

「新規開業資金」 

運転資金 7年以内 <うち据置期間2年以内>

設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>

「女性、若者/シニア起業家支援資金」 

運転資金 7年以内 <うち据置期間2年以内>

設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>

「再挑戦支援資金」(再チャレンジ支援資金)

運転資金 7年以内 <うち据置期間2年以内>

設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>

「新事業活動促進資金」 

運転資金 7年以内 <うち据置期間2年以内>

設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>

「中小企業経営力強化資金」 

運転資金 7年以内 <うち据置期間2年以内>

設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>

「IT活用促進資金」

運転資金 7年以内 <うち据置期間2年以内>

設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>

「食品貸付」

設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>

据置期間以外の元金の減額方法について

日本政策金融公庫では、原則として、融資後の据置期間の短縮や伸長を認めていないため、後日になってこれを変更したいと思ってもすることができません。

しかし、以下の方法を使えば、元金の据え置きをしたのと同じような効果が得られます。

一括返済

「一括返済」とは、当初に決められた返済計画によらずに、その時点の残高を一括して返済する手続きをいいます。繰上償還とも呼ばれます。

一括返済は、当初予定していた約定と異なる返済となることや、金融機関側で予定した金利が得られなくなる、手続きが増えるなどの理由から、多くの金融機関ではあまりこれを歓迎していません。


しかし、相談をすれば、たいていのケースでこれを認めてもらうことが可能です。

ただし、金融機関によっては、一括返済をした場合には、別途に手数料を徴収する場合もあるため、気をつけてください。


なお、日本政策金融公庫には、国民生活事業と中小企業事業がありますが、このうち、中小企業事業の融資について一括返済をする場合には手数料が発生します。

(弁済手数料がかかるのは中小企業だけで、国民生活事業の融資については対象外)


(日本政策金融公庫HPより)

平成8年7月1日以降の契約による新規ご融資について、公庫の承諾を受けて繰上償還をされる場合には、所定の算式による期限前弁済手数料をお支払いいただきます。

(公庫の承諾のない場合、期限前弁済手数料をお支払いいただけない場合には、繰上償還はできません)

期限前弁済手数料=繰上償還額の約定期限までの平均残高×公庫が定める金利の差×約定期限までの残期間


一括返済は、当初の条件を変更する取引であるため、これを行った場合には公庫の印象を悪くする可能性があります。

したがって、その後の追加借り入れなどを予定している場合には、安易に利用せず、やむを得ない理由がある場合にのみ行うことをおすすめします。

リスケジュール

事業の途中で資金がなくなり、予定額の返済ができないという場合には、金融機関の了解を得て返済期間を長くし、1回あたりの元本の返済額を少なくすることができます。

このような手続きを「リスケジュール」といいます。


リスケジュールでは、その時点の債務者の資力に応じてその後に支払う元本の額を決めるため、それに応じて返済期間も変化します。

リスケジュールの例としては、それまで返済期間5年、毎月20万円の元本の支払いをしている場合に、これを毎月の返済額を5万円にし、返済期間を10年に延ばすようなケースが考えられます。


なお、リスケジュールでは見直しがされた返済計画がそのままずっと適用されるわけではなく、1~2年ごとのタイミングで債務者の返済力に応じた見直しが行われます

また、返済期間についてもそのときに新たな期間が設定されます。

ただし、リスケジュールは、金融機関にとって不利な支払い条件の変更となるため、これを行った場合には債務者区分が低下し、新規の融資の借入れがしにくくなることに注意してください。

複数の融資を一本化して返済期間を延ばす

その他として、「複数の融資を一本化して返済期間を延ばす」ということができる場合があります。

これもリスケジュールと似た方法ですが、リスケジュールが単独の融資の元金支払額を抑えて返済期間を延ばすのに対し、この方法は、複数の融資を一本化するところに違いがあります。


たとえば、

A借入れ:残債額600万円、残存返済期間5年、毎月の返済額10万円

B借入れ:残債額840万円、残存返済期間7年、毎月の返済額10万円

という借り入れがあったとします。

この場合、この2本の借入れを

C借入れ:残債額1,440万円、残存返済期間8年、毎月の返済額15万円

へと一つにするのが複数融資の一本化となります。


この一本化は既存の借入れ分だけでなく、新規の借入れをする場合にも活用できます。

たとえば、前述のA・B、2つの借入れがある場合に、新たにDという借入れをした際にこれらを一つにまとめるなどがこれにあたります。

A借入れ:残債額600万円、残存返済期間5年、毎月の返済額10万円

B借入れ:残債額840万円、残存返済期間7年、毎月の返済額10万円

D借入れ:借入額560万円(新規)

              ↓

E借入れ:借入額2,000万円、残存返済期間10年、毎月の返済額16.6万円


このように複数の借入れを一本化し、返済期間を延ばすことで一回当たりの返済額を抑えることが可能です。

ただし、通常の融資と時限立法にもとづく融資などのように、融資の種類によっては一本化をすることができないケースもあるため、詳しくは金融機関にご相談ください。

まとめ

据置期間は、創業時や新事業の開始時などの資金繰りが厳しいときに利用すると、余裕を持った経営がしやすくなります。

しかし、据置期間を利用した場合は、返済期間がその分長くなるわけではなく、実質的な支払い回数の減少となるため、据置期間終了後の元金の支払額が増えることとなります。

また、それとともに利息の総支払額も増加します。


このように据置期間の利用にはメリットがある半面、デメリットもあることに注意して利用してください。


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この記事の監修
Scheeme株式会社
ScheemeMAG編集部
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