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日本政策金融公庫の新創業融資制度、起業者におすすめの融資制度を詳しく紹介します

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「これから起業したい」、「起業したばかりだけど運転資金が欲しい」などとお考えの方は少なくないと思います。そのような方にぜひ、おすすめしたいのが日本政策金融公庫の新創業融資制度です。新創業融資制度は、創業者の方でも比較的簡単な条件で借り入れができるため、最も多くの創業者の方に利用されている融資制度です。この記事では日本政策金融公庫の新創業融資制度の概要や利用時の注意点などについて詳しくご説明します。
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日本政策金融公庫の新創業融資制度とは?

日本政策金融公庫の新創業融資制度は、創業者の方のみを対象とした融資制度です。

この融資制度には、次のような特長があります。

新創業融資制度とはどういう制度か?

「新創業融資制度」とは、創業者が利用する一定の融資について、その借入れを無担保無保証で利用できるようにするための制度です。

よく勘違いされることが多いですが、そもそもこの新創業融資制度とはこれ単体で独立した融資制度ではありません。


日本政策金融公庫には、例えば「新規開業資金」や「女性、若者/シニア起業家支援資金」 などといった創業者が利用できる融資制度がいくつかありますが、いずれも原則として、担保や保証人が必要となります。 

しかしそれでは、融資を利用できる方が少なくなってしまうため、これらの融資に上乗せする形で無担保無保証による借り入れができるための枠を設ける制度が新創業融資制度となります。


そのため新創業融資制度を利用する場合には、これのみではなく必ずそのベースとなる融資(新規開業資金など)を選択する必要があります。

新創業融資制度の概要

利用対象者

新創業融資制度を利用するためには、次のすべての要件に該当する必要があります。

① 「期限の要件」

新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方

② 「自己資金の要件」

新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金に限る)を確認できること

ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」などの一定の要件に該当する場合には、自己資金がなくても申し込みをすることが可能となります。

資金使途

新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金

融資限度額

3,000万円(うち運転資金については1,500万円が限度)

返済期間

各融資制度に定めるご返済期間以内

利 率(年)

2.36%~2.85%(令和3年10月現在)

担保・保証人

原則不要

法人がこの制度を利用して借り入れをする場合には、代表者個人には責任が及ばないものとなっています。

なお、もし、法人で代表者が連帯保証人となる場合には、利率が0.1%低減されます。

新創業融資制度の利用時のポイント

申し込みの期限について

新創業融資制度では、「事業開始後税務申告を2期終えるまで」が申し込みの期限とされています。

ここでご注意いただきたいのが、期限が「2年」ではなく「2期」だということです。


例えば個人事業では、開業の時期にかかわらず決算期は12月となります。

そのため10月に開業したような場合には、1期目の期間は実質的に2ヶ月しかありません。

そのため、この場合は、2期全体を通しても1年2ヶ月程度しか申込める期間がないということになります。


これに対して法人の場合には、自分で自由に決算期を決めることができるため、いつ開業してもほぼ2年間の期間を確保することができます。

(例えば10月開業の場合には、決算期を9月にすることでほぼ2年間とすることが可能)


このように法人については開業時期による制約はほぼありませんが、個人事業主の場合は開業する月によって申し込みの期間が短くなってしまうことに注意してください。


自己資金の要件について

新創業融資制度では「新たに事業を始める場合や、事業開始後税務申告を1期終えていない場合」には、創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要となります。

ここでいう「創業資金総額」とは、実際の事業計画で使う予定となっている経費のすべてが対象となります。


たとえば、自己資金400万円、運転資金300万円、設備資金500万円の計画の場合には、300万円+500万円+400万円=1,200万円が創業資金総額となるため、その1/10の120万円以上の自己資金が必要となります。借入希望額(このケースでは、1,000万円)の1/10ではないことにご注意ください。


自己資金は、実際の事業に使用される予定の資金に限ります。

そのため、通帳に1,000万円の資金が入っている場合でも、そのうち300万円しか事業に使用しないのであれば、その場合の自己資金は300万円となります。


なお、事業をするにあたって自己資金を使わないということはできません。

したがって、先ほどの例の場合には、400万円の自己資金も使った事業計画を作る必要があります。


融資限度額について

新創業融資制度の融資限度額は、3,000万円ですが、運転資金については1,500万円が限度となっています。

したがって、1,500万円の運転資金を借りた場合には、設備資金で利用できる金額は残りの1,500万円となります。


返済期間について

新創業融資制度における返済期間は、「各融資制度に定める返済期間以内」とされています。

このように決められた期間となっていないのは、新創業融資制度がベースとなる融資制度に上乗せして利用するという特長によります。


たとえば、ベースとなる融資制度として新規開業資金を利用する場合の返済期間は、設備資金20年以内、運転資金7年以内となります。

(いずれも据置期間2年以内)また、食品貸付を利用する場合には、設備資金の20年以内(運転資金は利用不可)となります。


このように、新創業融資制度では、どの融資制度をベースとして利用するかにより返済期間が異なることとなります。


利率について

新創業融資制度の利率は、利用する方の状況に応じて、一定の範囲内の金利のうちいずれかのレートが適用されます。

また、金利の上下限も一定期間ごとに見直されるため、申込みのタイミングにより異なった金利が適用されます。


担保・保証人

新創業融資制度は、無担保・無保証の融資制度です。

とくに法人が利用する場合には、完全な無担保・無保証で利用できるところに大きな特長があります。


通常、無担保・無保証といった場合には、法人の代表者は連帯保証人となるのが一般的です。

つまり、無保証とは、第三者の保証人が不要ということを意味します。

しかし、新創業融資制度では、法人がこれを利用する場合には、代表者の連帯保証が不要となります。

(なお、代表者が連帯保証人となる場合には、金利が0.1%低くなります)


そのため、 今後の経営に不安がある場合には、法人で申込んだ方が有利となります


 新創業融資制度は自己資金なしで借りられる?

新創業融資制度を利用する場合には、一定の自己資金が必要となりますが、自己資金がなくても融資を受けることはできるのでしょうか?

また、一定の要件を満たす場合には、自己資金不要で申込める特例がありますが、この場合にはどうなのでしょうか?


この記事では、自己資金がない場合と自己資金不要の要件が利用できる場合の融資の可能性について解説いたします。

一定の条件の下、自己資金が必要となる

日本政策金融公庫の新創業融資制度では、以下のいずれかに該当する方については、創業資金総額の1/10以上の自己資金が必要となります。

・ 新たに事業を始める方

・ 事業開始後税務申告を1期終えていない方


なお、自己資金としては、以下のようなものが認められます。

・ コツコツと貯めた経緯がわかる通帳などの残高

・ 国債や株券などの有価証券

・ 退職金

・ 株式会社などの出資金

・ 相続により得た相続財産

・ 現物出資をした場合の財産(車両や各種設備など)

・ 親などから贈与されたお金

・ 開業前に事業のために支出した資金


一方、次のようなものは自己資金とはなりません。

・ 出どころの説明できないお金

・ タンス預金

・ 親や他人から借りたお金(他からの融資資金を含む)


なお、ここでいう1期とは、1回の決算を終えているかどうかが判断の基準となります。

したがって、実質半年で1回目の決算を迎えているような場合でも1期と扱われます。

一定の条件を満たしたら自己資金なしでも借りられる?

自己資金が不要で申込みができる場合

新創業融資制度を利用する場合には、原則として創業資金総額の1/10以上の自己資金が必要となりますが、次のいずれかに該当する場合には、自己資金がなくとも申込むことができます。

自己資金が不要となるケース

① 現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方

  ・現在の企業に継続して6年以上お勤めの方

  ・現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方

② 大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方

③ 産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方

④ 民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方

⑤ 技術・ノウハウ等に新規性が見られる方

⑥ 新商品・新役務の事業化に向けた研究・開発、試作販売を実施するため、商品の生産や役務の提供に6ヵ月以上を要し、かつ3事業年度以内に収支の黒字化が見込める方

⑦ 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」の適用予定の方

自己資金が不要となる場合のポイント

① 現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方について

現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、「現在の企業に継続して6年以上お勤めの方」または「現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方」の場合、前者では6年間の継続した経歴が必要となりますが、後者の場合には通算して6年あれば本要件を満たします。


したがって、前者のケースではA社に6年勤務していたことが必要ですが、後者の場合には、A社に2年勤務した後にB社に4年勤務しているような場合にも対象となります。


なお、本当に申告通りの経歴があったかどうかについては、提出された経歴の内容を確認する他に、在籍していたことを証明する資料や給与明細書などの提出を求められることがあります。


② 認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方について

「認定特定創業支援等事業」とは、産業競争力強化法により認定された自治体が行う一定の創業支援等事業のうち、経営や財務、人材育成、販路開拓などに関する知識の習得が見込まれる支援を創業者等に対して行う事業をいいます。


この事業の代表的なものとしては、創業相談やインキュベーション施設への入居、創業セミナーの実施などがあります。

なお、「認定特定創業支援等事業」による支援を受けて、一定の要件を満たした創業者は自治体から「認定特定創業支援等事業による支援を受けたことの証明書」の交付を受けることができます。


この認定を受けた場合には、自己資金が不要となるだけでなく、会社設立時の登録免許税が半額になる、無担保、第三者保証人なしの創業関連保証が事業開始の6か月前から利用可能になるなどの優遇措置を受けることができます


③ 民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方について

協調融資とは、1つの融資案件について、2つ以上の金融機関が分担して融資をするケースをいいます。

たとえば、3,000万円の融資をする場合、A銀行が1,000万円、B銀行が2,000万円の融資をするようなケースがこれにあたります。

また、民間金融機関との協調融資には、市中の銀行などを経由して制度融資を利用する場合なども含まれます。


このケースのように、協調融資として日本政策金融公庫と制度融資を利用する場合には、公庫と金融機関の両方に申請を出す必要があります。

具体的には、1,000万円の融資申込みを協調融資の形で申込むケースでは、1,000万円の事業計画書を作ったうえで、借入予定先として公庫500万円、制度融資500万円のように記載します。

それぞれの金融機関へ500万円ずつの申込みをするのではないことに、注意してください。

なお、協調融資を利用したときに、A・Bいずれかの金融機関で融資が否決となってしまった場合には、原則として、他方の融資も否決となります


④ 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」の適用予定の方について

「中小企業会計要領」は、中小企業が財務情報を活用して自社の経営力や資金調達力を強化することができるよう定められた会計ルールです。

また、「中小企業の会計に関する指針」は、中小企業が計算書類の作成に当たり、拠ることが望ましい会計処理や注記等を示したものです。

いずれも、中小企業の実務に配慮して、財務に関する事務負担を軽減できる内容となっています。


税理士や公認会計士に税務処理を依頼し、これらの基準に合致すると認められた場合には、証明書を発行してもらえます。

なお、自己資金が不要となるための条件においては、会計要領等を適用する「予定の方」でもokとなっていますが、公庫によれば、実際の審査では適用がされていることの証明書が必要になる場合もあるとのことです。


また、証明書の提出をせずに融資が出た場合でも、後日に必要な要件を満たしていないことが判明した場合には問題となりますので注意してください。

本当に、自己資金がなくても融資が受けられるか?

■まったく自己資金がない場合

「創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要」という要件は、新創業融資制度における審査要件の一つとなります。

そのため、自己資金がまったくない、または1/10以下しかないという場合には、審査のための要件を満たせていないこととなります。

したがって、このようなケースでも融資の申込み自体はすることができますが、審査の要件を満たさないものとして否決される可能性が大となります。


■自己資金がないが、自己資金不要の条件に該当する場合

新創業融資制度では、自己資金がなくても申し込みができる例外がいくつか定められており、このいずれかに該当する場合には自己資金なしで融資を申し込むことができるものとされています。


しかしこの例外に該当する場合でも、自己資金がある方と比べた場合、より審査は厳しいものとなります。

したがって、このような例外に該当するようなケースでも、ある程度の自己資金はあったほうが審査に有利となります。

新創業融資制度の申込み・審査の必要書類

新創業融資制度の申込みには、以下の書類が必要となります。

なお、これらの書類の中には事業計画書のように作成に時間がかかるものもあるため、できるだけ早めに準備することをおすすめします。


〈個人事業・法人に共通して必要となる書類や資料〉

・ 借入申込証

・ 創業計画書

・ 代表者の身分証明書

・ 自己資金の確認できる通帳や証書など

・ 設備を購入する場合は、その設備の見積書

・ 法人の登記簿謄本(法人の場合)

・ 許認可が必要となる事業の場合には、許認可証のコピー

・ テナントを利用する場合は賃貸契約書や物件・家賃などの概要がわかるもの


〈必要となる可能性のあるもの〉

・ 業務の経歴の確認できる資料

・ 公共料金の支払いの控えや家賃の納付書等

・ 源泉徴収票

・ 納税証明書 


自己資金の入った通帳は、原本を提出します。また、設備の見積書については、見積もりの有効期限内のものを提出するようにしてください。

なお、テナントを借りる場合には、必ずしも賃貸契約まで結ぶ必要はありません。

不動産屋からもらったチラシなどでも、住所や間取、賃貸の条件(保証金や家賃等)が記載されたものであれば問題ありません。


ただし、賃貸している自宅を事務所として利用する場合には、物件の使用の目的が「住居」となっている場合はNGとなります。

テナントとして利用するためには、「住居兼事務所」のように事務所利用ができる内容となっていることが必要となります。

新創業融資制度の手続きの流れ

新創業融資制度を利用して融資を申込む場合の流れは、以下のとおりとなります。

① 創業計画書の作成や自己資金の確認などの申込み準備


② 日本政策金融公庫への申込み

借入申込書に創業計画書などの必要書類を沿えて、営業予定地を管轄する日本政策金融公庫の支店へ融資を申込みます。

なお、申込みは直接の申し込みの他、郵送やインターネットでも行うことができます。


③ 日本政策金融公庫の担当者との面談

融資の申込み後1週間から約10日以内に、日本政策金融公庫の担当者との面談が行われます。

面談は公庫の支店で行われる場合と、申込人の事務所で行われる場合があります。


④ 融資結果の連絡

公庫担当者との面談が終了してから2〜3週間以内に融資の結果についての連絡があります。


➄ 日本政策金融公庫との融資契約の締結

担当との面談が終了してから、約1週間から10日以内を目安に公庫と融資に関する金銭消費貸借契約を締結します。

契約は、公庫の支店で行います。


⑥ 融資の入金

契約後1〜2週間以内に指定した口座に融資の資金が入金されます。

なお、この場合の口座はどこの金融機関のものを使用しても構いません。

まとめ

日本政策金融公庫の新創業融資制度は、創業者の方であっても最大3,000万円までの融資を低金利かつ長期で利用できる融資制度です。

また審査のハードルも通常の金融機関のものと比較して低いため、はじめて融資を受ける方にはおすすめです。


ただしこの制度を利用する場合には、原則として1/10以上の自己資金を用意する必要がある、これから行う事業について一定期間以上の経験が必要などの要件があるため、事前にこれらをクリアーできるかどうかを確認した上で申し込むことをおすすめします。


この記事の監修
Scheeme株式会社
ScheemeMAG編集部
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