美容室を開業しようとするとき、どうしても自己資金だけでは不足するため、銀行等の金融機関からの融資を考えます。しかし、銀行は実績のない企業には基本的に融資を行わないことになっているので、日本政策金融公庫などの政府系金融機関からの融資を受けたほうが得策です。特に、日本政策金融公庫には「新規開業資金」がありますので、これを積極的に利用しましょう。
美容室での経験がものを言う!店長クラスを経験していると有利
日本政策金融公庫で融資を受ける際にまずチェックされるのが、その新規事業における当人の経験です。美容室であれば、どこの美容室で何年働いてきたのか、美容室内でチーフや店長などの役職についていたか、指名客の数などがチェックされます。要するに、美容師としての力量だけでなく、美容室で責任ある立場での経験がどのぐらいあるかを見られるわけです。ですから、経営者や管理者としてのマネジメント能力やコミュニケーション能力、判断力などが重要になってきます。このように考えると、チーフや店長などの経験がない場合は、融資を受けるのは難しくなるかもしれません。
焦って美容室を開業するのではなく、前職で管理職としての立場を経験してから開業するのがよいでしょう。日本政策金融公庫の「新規開業資金」は一度しか使えませんので、十分に注意して開業の準備をすることが大切です。
日本政策金融公庫の融資制度で資金調達をするメリット
日本政策金融公庫で融資を受けるのはだいぶメリットがあります。銀行等の民間の金融機関では、業績により金利が上下することがありますが、日本政策金融公庫は低金利かつ固定金利なので、中長期の事業計画や資金繰り計画が立てやすくなります。
また返済期間については、民間の金融機関では通常、5年ほどで返済しますが、日本政策金融公庫では最長20年まで伸ばせますので、長期的な返済計画が立てられます。
日本政策金融公庫の資金調達メリット①【金利が低い】
日本政策金融公庫の資金調達メリット②【融資金額が大きい】
日本政策金融公庫の資金調達メリット③【融資スピードが早い】
自己資金はできるだけたくさん用意しよう
大切なのが、身内などから支援された資金も含め、自己資金がいくらあるかです。自己資金が100万円しかないのに1,000万円融資してもらうのは難しいでしょう。
美容室の開業には、座席のセット面が2台、シャンプー台が1台といった小さい規模で約1,000万円、中規模で2,000万円必要と言われています。融資可能な金額は、自己資金の約3倍です。1,000万円の融資を依頼するのであれば、300万円から500万円の自己資金が必要になります。あまり自己資金が少ないと、新規に美容室を開業することへの意欲や本気度が問われることになりかねません。
また、自己資金が少ないと、融資額が多くなり、自然と毎月の返済額が増えるため、経営が圧迫されるのではないかという懸念が生じます。開業のだいぶ前からきちんと計画を立て、自己資金をしっかり貯蓄しておく必要があるでしょう。
このときに、開業資金にいくらかかるのか、細かい見積もりを提出すると良いでしょう。大雑把な見積もりでは自分自身が、開業に本当にいくら必要かが把握できませんし、日本政策金融公庫の担当者を説得することはできません。家賃や敷金、機材費、内装費、広告宣伝費等、細かく出すと良いでしょう。当面の運転資金は500万円ぐらい必要でしょうから、それも含めて自己資金ではいくら不足するのか、いくら融資して欲しいのかが明確になります。ここまでの細かい資料を日本政策金融公庫の担当者に提示することが大切です。
説得力のある事業計画書を書こう
事業計画書の記入にも細心の注意を払わなければなりません。開業にあたってどのぐらいのやる気があるのか、どういう計画があるのかを明確にしましょう。
また、過去の経験をもとに、1日に何人の客が見込まれ、客単価がいくらで、月にいくらの売上が上がるかを試算し、それを明示します。前に勤めていた美容室から何人ぐらいの客が呼べるかも重要な情報になります。ですから、事業計画書の数値計画は根拠があり、現実味のある明確な数字を書かなければなりません。「この事業計画なら融資をしても大丈夫、きちんと返済してくれる」と担当者に思わせることが大切です。もし、どうしても自力で説得力のある事業計画書が書けないのであれば、税理士等の専門家に相談したほうが良いでしょう。
また、自分の個人信用情報は大丈夫でしょうか。例えば、過去5年以内に債務整理を行っていないか、過去2年以内に消費者金融等から借入をしていないか、水道光熱費などの公共料金を滞納することなく毎月きちんと支払っているか、などをチェックされます。日本政策金融公庫は国の機関であり、国民の税金が融資に使われているため、税金の未納や滞納がある場合、融資が難しくなるので注意が必要です。さらに、債務整理などを行っている場合は、それらの情報が消えるまで待ってから美容室を開業するほうがよいと言えます。
融資を受けるためには事業計画書が大事【美容室偏】
事業計画書で大事なポイント①《簡潔・明確に書く》
事業計画書で大事なポイント②《客観的なデータを用いる》
事業計画書で大事なポイント③《競合との差別化》
足りない資金を融資してもらい、美容室の開業を目指そう
融資を受けずに美容室を開業するのは難しいと言えます。そして何度も融資の申し込みをすることはできませんので、一度の申し込みで融資が可能になるためには、準備を怠ってはいけません。自分だけの考えでは偏った点があるかもしれませんので、開業したことのある先輩美容師や税理士などに相談し、美容室の開業時に安定した資金繰りができるように工夫しましょう。