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日本政策金融公庫「新創業融資制度」と「新規開業資金」の違いとは?

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日本政策金融公庫「新創業融資制度」と「新規開業資金」の違いとは?
皆さんは、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」と「新規開業資金」の違いをご存知でしょうか?どちらも創業者が利用できる制度ではありますが、この2つは使いかたや位置づけそのものが異なります。なので、この関係をシッカリ理解しておかないと、せっかくの制度を有効に使いこなすことができません。この記事では、新創業融資制度と新規開業資金の関係や、内容の比較、使いかたについてご説明いたします。
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「新創業融資制度」と「新規開業資金」概要を一覧表で比較してみるとこうなる

「新創業融資制度」と「新規開業資金」の概要を比較した場合には、以下のとおりとなります。

〇 融資の目的

新創業融資制度  創業者向けの融資に無担保・無保証の枠を設定するための制度

新規開業資金   創業者向けの融資制度

〇 利用できる方

新創業融資制度  新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていな方

         新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、

         創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方

新規開業資金   新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方

〇 資金の使い道    

新創業融資制度  新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金  

新規開業資金   新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金及び運転資金

〇 限度額

新創業融資制度  3,000万円(うち運転資金1,500万円)

新規開業資金   7,200万円(うち運転資金4,800万円)

〇 返済期間   

新創業融資制度  各融資制度に定めるご返済期間以内    

新規開業資金   設備資金 20年以内  運転資金   7年以内

〇 据置期間

新創業融資制度  なし

新規開業資金   設備資金・運転資金ともに据置期間2年以内

〇 利率

新創業融資制度  2.36~2.85%

新規開業資金   1.06〜2.15% ※担保を提供する場合

         ただし、一定の要件に該当する場合は特別利率が適用

〇 担保・保証

新創業融資制度  原則、不要

新規開業資金   原則、必要

〇 優遇措置

新創業融資制度  法人が借入れをした場合には、代表者個人には責任が及ばない。

ただし、代表者が連帯保証人となる場合には、利率が0.1%低減される。 

新規開業資金   技術・ノウハウ等に新規性がみられる方など、一定の要件を満たす方に         

ついては金利が優遇される。

両者の関係は「新規開業資金」>「新創業融資制度」

「新創業融資制度」と「新規開業資金」とでは、新創業融資制が、新規開業資金や女性、若者/シニア起業家支援資金などといった

創業系の融資制度に無担保無保証とする枠を設定するものであるのに対し、

規開業資金は創業者向けの融資制度の一つとなります。


そのため、この両者は並列的なものではなく、「新規開業資金」>「新創業融資制度」といった補完的な関係となることに注意が必要です。

「新規開業資金」は日本政策金融公庫の創業融資そのもの

新開業資金は、「女性、若者/シニア起業家支援資金」や「一般貸付」などと同様、日本政策金融公庫が扱っている数ある融資制度の一つです。

この融資については、「新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方」という利用条件しかありません。

そのため、新規に事業を始める方であれば、ほとんどの方が利用できます。


ただし、

1. 地域おこし協力隊の任期を終了した方であって、地域おこし協力隊として活動した地域において新たに事業を始める方

2. Uターン等により地方で新たに事業を始める方

3. 産業競争力強化法による認定特定創業支援等事業を受けて新たに事業を始める方

4. 技術・ノウハウ等に新規性がみられる方

5. 地方創生推進交付金を活用した起業支援金の交付決定を受けて新たに事業を始める方

などの一定の要件を満たす場合には、金利が優遇されます。

また、融資後に利益率や雇用に関する一定の目標を達成した場合に利率を0.2%引下げる「創業後目標達成型金利」が適用されます。

「新創業融資制度」は制度に過ぎず融資そのものではない、各創業融資のオプションとして利用できる

以上のように新創業融資制度は、新規開業資金などの創業系の融資制度を無担保無保証で利用するための、いわばオプションです。


意外に思われる方もいると思いますが、日本政策金融公庫の融資制度を利用するときには、担保か保証が必要となるのが原則です。

しかし、それでは、担保や保証の用意が難しい創業者や中小企業では、利用が難しくなってしまいます。

そのため、日本政策金融公庫では新創業融資制度などの特別制度を設けて、創業者が無担保無保証での借入れができるためのサポートを行っているわけです。


そのため、新創業融資制度を単独で利用するとはできません。この制度を利用する場合には、

必ずそのベースとなる融資制度と併せて利用する必要があります。


なお、「新規開業資金」と「女性、若者/シニア起業家支援資金」のように、一人について適用できる融資制度が複数ある場合には、

日本政策金融公庫側で最も金利が低くなる制度を選んでくれることになっています。

日本政策金融公庫「新創業融資制度」と「新規開業資金」の違い

日本政策金融公庫の新創業融資制度と新規開業資金とでは、以下のような違いがあります。

違い1:新規開業資金は担保・保証人が必要、新創業融資制度は担保・保証人が不要

日本政策金融公庫において、新規開業資金を利用する場合には、減速して担保または保証人が必要となります。

ただし、この融資を利用する時に新創業融資制度を併用することにより無担保無保証で借り入れをすることができるようになります。

したがって、新規開業資金を無担保無保証で利用したいという場合には、新創業融資制度も併せて利用する必要があります。

違い2:新創業融資制度の利用には、一定の自己資金と担当者を納得させる事業計画書の作成が必要

新創業融資制度を利用する場合には、「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方については、

創業資金総額の10分の1以上の自己資金を保有していること」が条件となります。

これが新創業融資制度における「自己資金要件」といわれるものです。


自己資金として認められるものとしては、以下のようなものがあります。

・ これまでにコツコツ貯めたことが分かる預貯金の残高

・ 退職金

・ 相続などにより得た資金

・ 親などから贈与された資金

・ 株式や有価証券を売却して得た資金


しかし、次のようなものは自己資金として認められません。

・ 一時的に借りた資金 ※親などから借りた資金であっても NG

・ 出所の説明ができない資金

・ タンス預金(家にある現金などを通帳に入金したもの)


なぜ、タンス預金が自己資金として認められないかといえば、それは「その資金を貯めた経緯がわからないから」です。

この経緯がわからないと、一時的に借りてきた資金であっても自己資金となってしまいます。

そのため、出どころの説明ができない資金の一種として、タンス預金は自己資金と認められないわけです。

もし、タンス預金を自己資金として認めてもらうのであれば、通帳に入金後6ヶ月以上入金したままとしておく必要があります。


なお、自己資金は、創業計画で使う予定の資金である必要があります。

そのため通帳に500万円の残高がある場合であっても、そのうちの300万円しか事業に使用しないのであれば、

残りの200万円については自己資金として認められません。


また、担当者を納得させる事業計画書を作成するためには、自己資金と借入額のバランスも重要となります。

新創業融資制度では、1/10以上の自己資金があればよいこととなっていますが、

これはあくまでもこの制度に申し込むための最低条件にすぎません。

したがって、1/10以上の自己資金が用意できたからといって残りの9/10の融資が受けられるわけではないことに注意してください。


では、自己資金に対してどの程度の融資が可能かについては、一般的に融資が受けやすいとされている額は「自己資金の3倍から4倍程度」となります。

300万円の自己資金がある場合には、900万円〜1,000万円を少し超える程度あたりがバランス的には限界といえます。

事業計画書を作る場合には、自己資金を使わない計画とすることはできないため、

この場合には、自己資金の300万円を加算した1,200万円〜1,300万円の事業計画を作成する必要があります。


以上のように新創業融資制度を利用する場合には、自己資金の額や割合にも注意しながら、バランスの取れた事業計画書を作成する必要があります。

違い3:新規開業資金は単体で利用できるが、新創業制度は単体で利用できない

新規開業資金は、単独の融資なので単体でこれを使用することができます。

しかし新創業融資制度は、あくまでも他の融資制度に無担保無保証の枠を上乗せするための特別の制度のため、これのみで利用することができません。

したがって新創業融資制度を利用する場合には、「新規開業資金」や「女性、若者/シニア起業家支援資金」 などといった、他の創業系の融資制度とあわせて利用する必要があります。


新創業融資制度を利用するときの注意点

新創業融資制度は、他の融資に無担保無保証の枠を設定するという特別な制度のため、利用にあたってはいくつか注意しなければならない点があります。

新創業融資制度と新規開業資金は、どちらの利率が適用される?

前述の新規開業資金と新創業融資制度の比較でもお分かりいただけるとおり、

新規開業資金と新創業融資制度とでは、それぞれ異なった金利体系が採用されています。


新創業融資制度の場合には、新創業融資制度独自の金利(「2.36〜2.85%」:令和3年11月現在)が適用されますが、

これに対し新規開業資金については通常の「基準金利」が適用されることとなっています。

しかし、日本政策金融公庫の金利欄を見ると、新規開業資金のみについて適用される金利というものはありません。


以前の日本政策金融公庫では、詳細に融資ごとの金利を定めていたのですが、現在では創業系の方に適用される金利は

「新創業融資制度を希望される方」と「担保を提供する融資を希望される方」のどちらかを選ぶこととなっています。

そのため、もし、新規開業資金を利用する方が新創業融資制度を使う場合には、新創業融資制度の基準金利が適用されることとなります。


けれど、新規開業資金だけで新創業融資制度を利用しないということであるならば、

「担保を提供する融資を希望される方」の基準金利が適用されることになります。

つまり、担保を提供して新規開業資金を利用する場合には、1.06~2.15%の基準金利が(担保を提供する融資を希望される方向け)適用されますが、

無担保無保証とするために新創業融資制度を併用した場合には、新創業融資制度の基準金利である2.36~2.85%が適用されることになります。


このように現在の日本政策金融公庫の金利体系では、個別の融資制度ごとに金利を決めるのではなく、

新創業融資制度を利用する方とそうでない方(つまりは担保を提供する方)という、大きな区分のどちらかを選択する仕組みとなっています。

新創業融資制度を申込むにはどうすればよい?

新創業融資制度を申込むには、日本政策金融公庫の借入申込書の所定欄に利用する旨のチェックを入れて提出します。


借入申込書には、表面の下段箇所に「担保・保証の条件をご選択ください」と書かれた箇所があり、

A:新型コロナウイルス感染症特別貸付

B:担保の提供を希望しない

C:不動産などの担保の提供を希望する

という3つに分かれています。


また、B欄についてはさらに

「新たに事業を始める方・税務申告を2期終えていない方(新創業融資制度)」

「税務申告を2期以上行っている方」(担保不要とする融資)

という欄に分かれています。

したがって、新創業融資制度の利用を希望する場合には、前者の該当箇所の欄にチェックをして申込みをします。

 なお、「税務申告を2期以上行っている方」の欄は、創業者ではなく、通常の企業を対象とした制度となるため、

あやまってこちらにチェックをしないように気をつけてください。

新創業融資制度が利用できるのは、2年ではなく2期まで

新創業融資制度を利用できるのは、「新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方」とされています。


ここでご注意いただきたいのが、期限が「2年」ではなく「2期」だということです。

例えば個人事業では、開業の時期にかかわらず決算期は12月となります。

そのため10月に開業したような場合には、1期目の期間は実質的に2ヶ月しかありません。

そのため、この場合は、2期全体を通しても1年2ヶ月程度しか申込める期間がないということになります。

これに対して法人の場合には、自分で自由に決算期を決めることができるため、いつ開業してもほぼ2年間の期間を確保することができます。

(例えば10月開業の場合には、決算期を9月にすることでほぼ2年間とすることが可能)


このように法人については、開業時期による制約はほぼありませんが、個人事業主の場合は何月に開業したかにより、

新創業融資制度を利用できる実質的な期間に大きな差が生じることに注意してください。

個人事業では代表者の連帯保証は必須

新創業融資制度では、法人がこの制度を利用する場合には、代表者が連帯保証人とならないことが原則です。

けれど、もし、代表者が連帯保証人となることを希望した場合には、利率が0.1%低減されます。


しかし、個人事業の場合には、このような優遇は適用されません。

なぜなら、個人事業では法人のように申込人と連帯保証人の法人格が分離されていないからです。

法人の場合には「申込人=法人、連帯保証人=代表者」となりますが、

個人事業の場合では「申込人=代表者、連帯保証人=代表者」どういう関係になってしまいます。

そのため、個人事業のケースでは、代表者が連帯保証人に入らないという優遇が適用になりません。

自己資金がなくとも利用できるケース

新創業融資を利用する場合には、原則として創業経費総額の1/10以上の自己資金が必要となりますが、

以下の要件を満たす場合には自己資金がなくても申し込むことが可能です。


〇 現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方

  1. 現在の企業に継続して6年以上お勤めの方
  2. 現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方

〇 大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方

〇 産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方

〇 民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方

〇 技術・ノウハウ等に新規性が見られる方

〇 新商品・新役務の事業化に向けた研究・開発、試作販売を実施するため、商品の生産や役務の提供に6ヵ月以上を要し、かつ3事業年度以内に収支の黒字化が見込める方

〇 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」の適用予定の方


これらのいずれかに該当する方は自己資金がなくても申し込みをすることができますが、

注意していただきたいのが、「自己資金がなくても、必ずしも融資が受けられるわけではない」ということです。


この自己資金が不要という要件は、あくまでも「自己資金がなくとも、新創業融資制度の申し込みをすることができる」ということを意味します。

自己資金の有無は、その後の事業の成否に大きな影響を及ぼす要因です。

そのため、自己資金がないということは、融資の審査においても事業の成功確率を下げるものと判断され、

自己資金がある方よりは不利になる可能性があります。


したがって、これらの要件に該当するから自己資金が不要ということではなく、

条件に該当する場合であっても、ある程度の自己資金は用意しておくことをおすすめします。


まとめ

「新規開業資金」は、日本政策金融公庫が取り扱っている創業者向けの融資制度の一つです。申込み条件が緩やかなため、ほとんどの創業者の方が利用することができます。

一方、「新創業融資制度」は、創業系の融資制度を利用する際に最大3,000万円(うち運転資金については1,500万円が限度)まで無担保無保証で借り入れをすることのできる制度です。

しかし、新創業融資制度はそれ独自で独立した融資制度ではなく、他の創業系の融資を無担保無保証で利用するための特別枠となります。

したがって、この制度を利用する場合には、単体ではなく「新規開業資金」や「女性、若者/シニア起業家支援資金」などと併用して利用する必要があります。

なお、法人がこの制度を利用する場合には、代表者が連帯保証人とならなくともよいという優遇もあるため、これから創業資金の借入れを予定されている方については、ぜひ、利用をおすすめします。


この記事の監修
Scheeme株式会社
ScheemeMAG編集部
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