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新創業融資制度の返済期間の決め方とは? 決定要因別にも解説

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新創業融資制度の返済期間の決め方とは? 決定要因別にも解説
皆さんは、新創業融資制度の返済期間をどの程度に設定すればよいかをご存知でしょうか?多くの方が「返済期間が長い方が、支払額が少なくて有利」と考えますが、実はそれは間違いです。返済期間が長くなれば毎月の返済額は少なくなりますが、支払い総額は増えてしまいます。また、長すぎる返済期間は金融機関から嫌われるため、審査でも不利となりやすくなります。この記事では新創業融資制度を利用する場合の正しい返済期間の決め方と融資制度との組み合わせについて解説いたします。
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新創業融資制度の返済期間は単独で決められない!各創業融資との組み合わせで決まる

新創業融資制度の意味と役割とは?

日本政策金融公庫の新創業融資制度は、それ単独の融資制度ではなく、通常の融資に無担保無保証の枠を設定するための特別制度です。


日本政策金融公庫には、「新規開業資金」や「女性、若者/シニア起業家支援資金」といった創業者向けの融資がいくつかありますが、

それらのいずれについても、原則として、担保か保証人が必要となります。

しかし、創業者や中小企業で担保や保証人を用意できるとこは少ないことから、そのままでは融資を利用できる方が少なくなってしまいます。


そのため、日本政策金融公庫が、無担保無保証で融資を利用できるために用意した特別な制度が新創業融資制度となります。

新創業融資制度の具体的な利用法

このように新創業融資制度は、通常の融資を無担保無保証で利用できるようにするための制度です。

そのため、この制度を利用するときには、必ずベースとなる融資制度とセットで利用する必要があります。

新創業融資制度と融資制度の組み合わせ方法としては、以下のようなものがあります。

「新規開業資金」 + 「新創業融資制度」

「女性、若者/シニア起業家支援資金」 + 「新創業融資制度」

「新事業活動促進資金」 + 「新創業融資制度」


したがって、新創業融資制度を利用する場合には、この制度ありきで?なく、そのベースとなる融資制度にもとづいて返済期間を決めることとなります。


各創業融資の概要と返済期間一覧表

日本政策金融公庫で利用できる創業融資には多くの種類があるため、自分の状況にあった融資を選択した上で、返済期間を決めていくこととなります。

創業者が利用できる融資の概要と返済期間は以下のとおりとなります。

「新規開業資金」 

新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方が利用できる融資制度です。

創業者であれば、特別の要件を必要とせず利用できるため、日本政策金融公庫の創業者向け融資制度としては、最もオーソドックな制度となります。

なお、一定の要件を満たす方については、金利が優遇されます。

融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)

運転資金  7年以内 <うち据置期間2年以内>

設備資金  20年以内 <うち据置期間2年以内>

◾「女性、若者/シニア起業家支援資金」 

女性または35歳未満か55歳以上の方であって、 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方が利用できる融資制度です。

(技術やノウハウに新規性があるなどの一定の要件を満たす方については、金利が優遇されます。

融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)

運転資金  7年以内 <うち据置期間2年以内>

設備資金  20年以内 <うち据置期間2年以内>

◾「一般貸付」 

創業者の方だけでなく、ほとんどの業種の中小企業の方が利用できる融資制度です。

融資限度額  4,800万円(特定設備資金7,200万円)

運転資金   5年以内(特に必要な場合7年以内)<うち据置期間1年以内>

設備資金   10年以内 <うち据置期間2年以内>

特定設備資金 20年以内 <うち据置期間2年以内>

◾「再挑戦支援資金」(再チャレンジ支援資金)

新たに開業する方または開業後おおむね7年以内の方で、廃業歴等を有する個人または廃業歴等を有する経営者が営む法人であることなどの一定の要件を満たす方が利用できる融資制度です。

融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)

運転資金  7年以内 <うち据置期間2年以内>

設備資金  20年以内 <うち据置期間2年以内>

◾「新事業活動促進資金」 

経営多角化、事業転換などにより、第二創業を図る方で、「経営革新計画」の承認を受けているなどの一定の要件を満たす方が利用できる融資制度です。

融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)

運転資金  7年以内 <うち据置期間2年以内>

設備資金  20年以内 <うち据置期間2年以内>


注意!据置期間は返済期間に含まれる

融資の返済期間を決める上で気をつけたいのが、「据置期間」の設定についてです。

「据置期間」とは、融資の借入れをしたときに「元本の返済が猶予される期間」のことを指します。

据置期間中は、利息だけを支払えばよく、元金の支払いが不要となるためその分資金繰りの負担が軽減されます。


据置期間を利用した場合は、その期間は返済期間に含まれます。

そのため、据置期間を設定した場合でも、その分返済期間が延びるわけではありません。

たとえば、返済期間84ヶ月の借入れについて6ヶ月の据置をした場合の返済期間は84ヶ月のままとなります。

ただし、この場合は、はじめの6ヶ月については元金の支払いが据え置かれ、7ヶ月目から支払いが始まることとなります。

そのため、実質的には、78回(84-6回)で返済するのとほぼ変わりなくなるため、据置期間終了後の返済負担が大きくなります。


それともう一つ注意しなければならないのが、据置期間を利用した場合には、最終的に支払う利息の総額も増えるということです。

 

たとえは、500万円を60回、利率2.6%、元金均等方式の条件で計算した場合の利息の総支払額は337,415円となりますが、

据置期間を6ヶ月利用した場合の利息の総支払額は368,581 円と大きくなり、据置期間が長いほど利息の総支払額は多くなることとなります。


創業資金の借入では返済期間は長いのがいい、それとも短いのがいい?

創業資金の借入れで、「返済期間は長いのがいいのか?、それとも短いのがいいのか?」は、

申込人の状況や融資の種類などにより変わるため、単純に「返済期間が長いほど返済額が低くてよい」と考えるのは危険です。


本来、返済期間は、申込人の返済力にもとづいて決定すべきものです。

そのため、返済期間が短すぎる場合は毎月の返済額が過大となり、負担が大きくなります。

逆に返済期間が長すぎる場合には、いつまでたっても返済が終わらないだけでなく、

その分、利息を支払う回数が多くなるため利息の総支払額が大きくなります。


また、返済が長引くということは、それだけ元金が減るスピードが遅くなることを意味するため、金融機関からの追加融資を受けられる期間が遅くなります。

一般的に金融機関では、融資額の約1/3~1/2程度の支払いができていないと追加融資には応じないケースが少なくありません。

したがって、返済期間を長期にして元金の支払いを遅らせることは、追加融資の受けられる機会を先延ばしにすることにつながります。


返済期間が短い場合と長い場合のメリット・デメリットは以下のようになります。


◾それぞれのメリット

返済期間が短い場合

・支払いが早く終わる

・利息の総支払額が少なくなる

返済期間が長い場合

・1回あたりの支払額が少なくて済む

・余裕を持った経営をしやすい


◾それぞれのデメリット

返済期間が短い場合

・1回あたりの支払額が大きくなる

・支払いができなくなるリスクが高まる

返済期間が長い場合

・いつまでたっても支払いが終わらない

・元金が減りにくいため、追加融資が受けにくくなる

・長い返済期間は金融機関に歓迎されない

・利息の総支払額が多くなる


以上のように、返済期間が長い方がメリットが大きいとはいえないことから、

返済計画を立てるときには自分の支払い能力を見極めたうえで、設定する必要があります。


返済期間の決め方(決定要因別に解説)

返済期間を決めるときには、借入人の支払い状況がどの程度なのかということが最も重要となりますが、そ

れ以外でも融資の内容によっても左右されます。以下では、融資の各項目が返済期間に与える影響について考えてみたいと思います。


借入希望金額

借入れをする方の返済力が同じの場合、借入れ希望額が多い場合はそれだけ返済期間は長く、逆に少ない場合には短くなります。

しかし、借入人の返済力が高いほど、短い期間での支払いに耐えることができる一方、返済力が低い場合には、返済期間を眺めにする必要が生じます。


このように適切な返済期間はどのくらいかを算定する場合、借入人の返済力を抜きにしてれを考えることはできません。

そのため、適切な返済期間を決めるには、どの程度の返済力があるのかを正確に予想することが不可欠となりますが、

通常、金融機関では、次の計算式を使って、企業が返済できる利益から妥当な返済期間を算定しています。


 融資額 / (経常利益+減価償却費)


仮に、融資額が700万円の場合、予想される経常利益が80万円/年、減価償却費が20万円/年の場合は、

700万円÷100万円=7となるため7年(84回)が妥当と判断します。

しかしもし、経常利益や減価償却費が同一のケースで融資額が500万円ならば、

計算式は500万円÷100万円=5となるため5年(60回)が妥当と判断します。


もし、何らかの理由があって、この算定式で決められた期間よりも長くしたい、もしくは短くしたいというのであれば、その内容に応じて柔軟に対応してもらえますが、

そのような理由が内にも関わらず、単に1回あたりの返済額を少なくしたいという理由だけでは、希望をかなえてもらうことは難しいといえます。


なお、創業の場合には、参考にできる返済力の実績がないことから、創業融資の場合には事業計画書で予測した利益をもとに算定することとなります。


資金使途 設備資金か運転資金か

返済期間を決定するうえでは、その内容が運転資金か設備資金かによっても影響を及ぼしますが、その理由は2つあります。

・ 運転資金と設備資金とでは、返済期間の限度が異なるため

・ 運転資金と設備資金とでは、返済の原資が異なるため

➀ 運転資金と設備資金とでは、返済期間の限度が異なる

原則として、運転資金と設備資金とでは、返済期間の限度が異なります。

日本政策金融公庫の場合は、運転資金の限度は7年、設備資金の限度は20年となっているのが一般的です。

そのため、運転資金の借入れをする場合には、この限度を超えることができないため、返済計画もこれに見合ったものとする必要があります。

② 運転資金と設備資金とでは、返済の原資が異なる

運転資金と設備資金とでは、そもそも返済の原資が異なります。

本来、運転資金の場合の返済原資となるものは、売掛金の入金です。

通常、取引をかけで行った場合には、支払いが先行し、入金は数ヶ月遅れとなります。

しかし、その間の数ヶ月を待っているだけではその間の商売ができないため、その間の現金を補充するのが運転資金の役目となります。

したがって、運転資金を借りた場合の返済は、売掛金が現金化された入金額からこれを支払うことになります。


けれどそうなると、運転資金については、買掛金の期日ごとに借入れと返済をしなければならないこととなりますが、そのようなことは現実的ではありません。

また、運転資金には、社員の給与家賃なども含むため、それらについては利益の中からゆっくり返す必要があります。


以上のような理由から運転資金については、多少、余裕を持った返済期間が認められていますが、とはいえ売掛金による返済が原則となるため、設備資金と比べて返済期間の限度が短くなります。


一方、設備資金の場合の返済原資は、「設備の増産能力」が基本となります。

たとえば、現時点で100個/日の製品を製造できる機会がある場合に、設備の更新により130個/日の清算ができるようになったとします。

もし、この製品の単価が1,000円だとした場合には、1日当たりでは(130-100)×1,000円=3万円の、1:ヶ月の稼働日数を20日ならば60万円の売上増となります。したがって、設備資金で借りた資金は、この増えた売上げ分から支払うのが基本です。

なお、設備資金の返済期間は、その設備の耐用年数を限度とするのが原則です。

その理由は、耐用年数が、税法上で減価償却のできる限界だからです。そのため、設備資金は運転資金よりも返済期間が長いのが普通ですが、

それでもその設備の耐用年数を超えた返済期間は認められないというのが金融機関の考えとなります。


このように運転資金と設備資金では、返済の拠り所となる減資に違いがあるため、

借りる目的が何なのかにより、返済計画もそれにあったものとする必要があります。


返済方法

返済期間は、どのように返済するかによっても異なります。

一般的に融資の返済の方法には「元利均等」と「元金均等」の2種類があります。

元利均等

「元利均等」とは、完済に至るまでにかかる利息を計算し、それを支払い回数出割ったものです。

そのため、1回あたりの返済額は同じ額となります。

具体的には、住宅ローンの支払いなどで翌採用されています。

元利均等方式による場合には、毎月の支払額が同じとなるため、安定した資金繰りがしやすくなるというメリットがありますが、

その分元金均等の場合と比較して支払い総額が大きくなるという特徴があります。

元金均等

一方、「元金均等」は、元金だけを均等に分割し、それに応じた利息を加算していく方法となります。

そのため、元金均等でははじめの支払い負担が大きくなりますが、支払い総額は元利均等よりも少なくなります。


なお、事業性の融資の場合には、元金均等が原則です。

この支払い方法は変更できないため、事業計画書を作成する場合には、元利均等ではなく、元金均等出計算する必要があります。


元金据置期間

「元金据置期間」とは、融資の借入れをしたときに元本の返済が猶予される期間のことをいい、単に「据置期間」とも呼ばれます。

元金据置期間の特徴は、以下のとおりです。

① 据置期間は、返済期間に含まれる

据置期間の適用を受けた場合、その期間は返済期間に含まれます。つまり、据置期間は、返済期間全体の内数となります。

たとえば、返済期間60ケ月の借入れについて6ヶ月の据置をした場合の返済期間は60ヶ月のままとなります。ただし、この場合は、はじめの6ヶ月については元金の支払いが据え置かれ、7ヶ月目から支払いが始まることとなります。

② 利息の支払総額が据置期間なしより高くなる

据置期間を利用した場合には、最終的に支払う利息の総額が大きくなります。 

たとえは、600万円を60回、利率2.5%、元金均等方式で計算した場合の利息の総支払額は317,680円となりますが、据置期間を6ヶ月利用した場合の利息の総支払額は348,927 円と大きくなり、据置期間が長いほど利息の総支払額は大きくなります。

③ 資金繰りに余裕ができる

据置期間を設定することで、資金繰りに余裕ができます。

開業当初などの資金が十分でないときには、融資の返済は重い負担となります。

通常、事業が軌道にのるまでには、早くて3ヶ月、平均的には6ヶ月程度の時間がかかりますが、融資の返済は借入れをした月の翌月から始まります。

しかし、創業時などの資金繰りが厳しい時期に元金の支払いをしないことで、その分の資金を他の運転資金に回すことができることから、余裕のある資金繰りをしやすくなります。

④ 据置期間を利用すると、その後の元本の負担が重くなる

据置期間を利用した場合、融資の返済期間そのものが短くなるわけではないため、据置期間が長ければ長いほどその後の元金の支払いの負担が重くなります。


例えば600万円を5年(60回)で返済するケースの場合、毎月の元金の支払額は以下のとおりとなります。

        元金総支払額    1回あたりの元金支払額        

据置なし     6,000,000円       100,000円

据置3ヶ月    6,000,000円       105,263円

据置6ヶ月    6,000,000円       111,111円

据置12ヶ月   6,000,000円       126,000円


以上のように、据置期間を利用しても元金の総支払額には影響はありませんが、据置期間が長いほど1回あたりの元金支払額は大きくなります。

⑤ 据置を希望しても、必ず適用されるわけではない

据置期間は申し込んだから、必ず希望通りの期間になるというわけではありません。

具体的な期間は、申込人の資力や経験、事業計画書の内容などを総合的に考慮して、審査により決められます。

そのため、6ヶ月の期間を希望している場合でも、3ヶ月に短縮されたり、据置期間そのものが認められないということもあります。


据置期間には、以上のような特徴があるため、据置期間を設けた場合には、その後の返済が大きくなることや、

長すぎる据置期間は金融機関に認められないことなどを考慮し、適切な返済期間を設定するようにしましょう。


金利

金利が大きい場合には、その分、返済額の総額が多くなりますが、返済期間が長くなる場合も同様に支払額が大きくなります。

仮に、融資額500万円、返済期間が5年、元金均等のケースでは、金利が2.5%と3%とでは支払額に以下のような差が生じます。


金利が2.5%の場合の利息支払い額 317,680円

金利が3.0%の場合の利息支払い額  381.230円


融資額が800万円の場合には以下のようになります。

金利が2.5%の場合の利息支払い額 508,306円

金利が3.0%の場合の利息支払い額  609.980円 


日本政策金融公庫の新創業融資制度では、令和元年11月現在の金利は2.36〜2.85%同じと約0.5%近い金利差があります。

創業融資制度では、そのベースとなる融資や申込人の属性により異なった金利が適用されるため、具体的な金利は人ごとに違いますが、

有利な融資を選択したり、計画の内容を向上させることで、より支払額を少なくすることができます。


まとめ

日本政策金融公庫の新創業融資制度では、基本的に申込人が返済期間を選択することができます。しかし、返済期間はその方の返済力をベースに決定すべきものです。そのため、支払い負担が少ないということだけで、必要以上に長期の期で融資を申し込んだ場合には、なかなか返済が終わらないだけでなく、融資審査で不利になったり、利息の支払い総額が増えるといったデメリットもあります。また、返済期間は資金用途や返済方法、据置期間によっても影響を受けるため、これらについてもよく考えたうえで決定するようにしましょう。

この記事の監修
Scheeme株式会社
ScheemeMAG編集部
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