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中小企業経営力強化資金とは?融資条件とメリットデメリット・流れを詳しく説明します

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皆さんは、「中小企業経営力強化資金」という融資制度をご存知でしょうか?「中小企業経営力強化資金」は日本政策金融公庫の融資の一つで、以前は無担保無保証で利用できる枠もあり、また、金利の優遇などもあったため、多くの方に利用されていました。しかし、現在ではその内容が大幅に変更されたため、だいぶ使いづらいものとなってしまっています。この記事では、「中小企業経営力強化資金」の概要、変更の内容、手続きの流れなどについて解説いたします。

中小企業経営力強化資金とは?

日本政策金融公庫の「中小企業経営力強化資金」の制度の概要は以下のとおりとなります。

対象者  次の(1)もしくは(2)に該当する方
(1)  次のすべてに該当する方
・経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む)を行おうとする方
・自ら事業計画の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方

(2)次のすべてに該当する方
・「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している方または適用する予定である方
・ 事業計画書を策定する方

資金使途   設備資金・運転資金

融資限度額  
 7,200万円(うち運転資金4,800万円)

返済期間   
 設備資金 20年以内<うち据置期間2年以内>   
 運転資金 7年以内<うち据置期間2年以内>

利 率    
 基準利率(1.06~2.15%:令和3年12月現在) 
 ※ただし、以下のいずれかに該当する方については特別利率が適用されます。
 
 ・「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している方または適用する予定である方
 
 ・「当面6ヵ月程度の資金繰り予定表」及び「部門別収支状況表」を含んだ事業計画書を策定している方

担保保証   原則、必要

その他     
 本融資制度を利用する場合には、「策定した事業計画期間内において年1回以上、事業計画進捗状況を公庫に報告すること」が要件となります。
 また、上記ご利用者の要件を満たさなくなったことが判明した場合、期限の利益を喪失することになり、繰上償還となります。

中小企業経営力強化資金のメリット

中小企業経営力強化資金のメリットとしては、次のようなものがあります。

メリット① 融資限度額が大きい

 中小企業経営力強化資金の融資限度額は、7,200万円(うち運転資金4,800万円)と新創業融資制度の3,000万円(運転資金については1,500万円)と比較すると、2倍以上大きなものとなっています。そのため、新創業融資制度の3,000万円の融資では不足、または1,500万円以上の運転資金を借りたいという方については、さらに大きな融資を利用できる可能性があります。

メリット② 新創業融資制度よりは金利が低い

 中小企業経営力強化資金の金利は基準金利となっていますが、これは新創業融資制度の基準金利(2.36~2.85%:令和3年12月現在)よりも最大1%以上、低い金利となります。
 ただし、本融資制度と新創業融資制度を併用した場合には、新創業融資制度の金利が適用となります。

メリット③ 自己資金が不要で申込める

 新創業融資制度を利用する場合には、「創業にかかる経費の1/10以上の自己資金」が必要となりますが、中小企業経営力強化資金の申込みには自己資金が不要です。
 しかし、制度的にはそのようになっていますが、融資審査の際にはある程度の自己資金がある方が有利となります。
 なお、中小企業経営力強化資金と併用して、新創業融資制度を利用する場合には、やはり1/10以上の自己資金が必要となります。

中小企業経営力強化資金のデメリット

 中小企業経営力強化資金のデメリットとしては、次のようなものがあります。

デメリット① 利用するための条件が厳しい

 中小企業経営力強化資金を利用するためには、大きく分けて次の1.または2.いずれかの要件を満たす必要があります。

1.  次のすべての要件を満たすこと
➀ 経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む)を行おうとする方であること

② 自ら事業計画の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方であること

 この要件による場合には、申込人は経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓を行おうとする方でなければなりません。
 そのため、たとえば新しい取り組みを伴わない一般的な既存の事業(通常の小売業やサービス業)をする場合や、市場の創出・開拓を伴わない事業については、利用ができません。
 また、それとともに認定経営革新等支援機関の支援を受けることが必要となります。

 「認定経営革新等支援機関」とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関(税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関等)をいいます。中小企業の経営力強化を目的としており、中小企業は認定支援機関において経営相談などの支援を行います。

 この要件による申請をする場合には、自らが作成した事業計画書について認定支援機関の指導または助言を受け、その旨の証明書を提出する必要があります。

以上1.の要件に該当しない場合には、次の2.の要件を満たす必要があります。

2.  次のすべてに該当する方
➀ 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している方または適用する予定である方

②  事業計画書を策定する方
 こちらについては、事業計画書を作成し、「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している方または適用する予定に該当するだけでOKのため、めんどうな認定支援機関の指導や助言などは必要ありません。
 なお、要件となっている要領や指針については、現時点で適用していなくとも、これから適用予定であれば問題ありません。
 しかし、適用予定として本制度を利用した場合には、後日にその確認(決算書に税理士等の認定書がついているかなど)がされる場合があり、その際に適用ができていないとペナルティーを科されます。

デメリット② 無担保無保証での利用ができない

 現在、中小企業経営力強化資金は、無担保無保証の制度ではありません。
 そのため、担保を求められることがある他、法人がこの制度を利用した場合には、その代表者またはこれに準じる方(実質的な経営者や家族従業員、事業の承継予定者など)の連帯保証を求められます。
 本融資制度は、以前は2,000万円を限度とする無担保無保証型の制度でしたが、制度改正により令和2年4月から現在のような形となったため、無担保無保証の優遇措置がなくなり一般的な融資制度と変わりがなくなりました。

デメリット③ 融資後の報告義務がある

 中小企業経営力強化資金を利用した場合には、「策定した事業計画期間内において年1回以上、事業計画進捗状況を公庫に報告すること」が義務となります。
 そのため、返済期間が長ければ長いほど、報告書の提出の負担が増えることとなります。
 また、利用者がこの義務に違反して報告義務を怠った場合には、その時点における融資の残額のすべてを一括して返済しなければならないという厳しいペナルティーがあります。

中小企業経営力強化資金の融資の流れ(利用方法)

認定支援機関の選定・相談
 中小企業経営力強化資金を利用するためには、認定支援機関を選定し、事業計画の内容について相談した上で、指導または助言を受ける必要があります。相談の際には、あらかじめ中小企業経営力強化資金制度を利用したい旨を伝えておくとその後の手続きがスムーズとなります。
 なお、認定支援機関には次のような相談をすることができます。

経営状況の把握 (財務分析、経営課題の抽出)
事業計画作成(計画策定に向けた支援・助言)
事業計画実行(事業の実施に必要な支援・助言) 等
 もし、知り合いの認定支援機関がいない場合は、下記の「認定経営革新等支援機関一覧」から検索することができます。
認定支援機関検索:https://ninteishien.force.com/NSK_CertificationArea

必要書類の準備・作成
 中小企業経営力強化資金では、事業計画書等の作成について認定支援機関からの指導や助言を受ける必要があります具体的にどの書類についてどの程度の作成やサポートをお願いするかについては、認定支援機関とよくご相談ください。

 この融資申し込みの際の必要書類としては、次のようなものを準備します。
・借入申込証
・事業計画書
 ※中小企業経営力強化資金用の事業計画書フォーマット
  https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html
・代表者の身分証明書
・履歴事項全部証明書(法人の場合)
・過去2年分の源泉徴収票または確定申告書(個人の場合)
 過去2年分の決算書(法人の場合)
・すでに借入金がある場合は償還表など
・営業所の賃貸契約書
・事業で使用している通帳コピー
・印鑑証明書
・家賃や水道光熱費、その他ローンの支払い状況がわかる資料
・設備購入の場合には見積書


必要書類を日本政策公庫に提出
 作成した書類を日本政策金融公庫へ提出します。
 書類の提出方法には「支店に持参する」、「郵送する」、「インターネットで申しこむ」の3つの方法がありますが、公庫の支店によっては持参が制限されていることもあるため、申込先の支店にご確認ください。

融資面談の実施・審査
 はじめての融資申込みの場合には、日本政策金融公庫の担当者との面談が必要となります。しかし、すでに日本政策金融公庫で融資をうけている方については、面談がないのが普通です。

 ただし、すでに融資をうけている方であっても、申込額が大きい場合や、以前の計画の内容と大場な変更がある場合などには、再度、面談が行われることもあります。
 面談は、通常は申込先の支店で行われますが、申込人の営業所となることもあります。
※面談時間は30分〜1時間程度ですが、計画の内容が複雑である、不振な点があるなどの場合には1時間を超えて面談が行われることもあります。
 また、面談の際には、認定支援機関の人間の同席を認めてもらえることもありますので、一人での対応に不安がある方は、事前に日本政策金融公庫の了解を取るようにしましょう。
 面談の終了後に、書類の内容や面談の結果にもとづき、審査が行われます。なお、審査の一環として必要に応じ、事務所などの現地調査が行われることがあります。

融資決定・契約・実行
 審査の結果、融資の可否を判断します。融資の可否にかかわらず、結果については、本人に文書や電話により連絡がされます。
 融資がOKの場合には、1週間〜10日以内に日本政策金融公庫の支店において、融資に関する金銭消費貸借の契約の締結をします。
 その後、1週間前後の期間内に、申込人が指定した口座へ融資額が振り込まれます。
 ※ただし、インターネット銀行の口座には振込ができませんのでご注意ください。

中小企業経営力強化資金を借りるときに注意したいこと

新創業融資制度と中小企業経営力強化資金の関係について
 中小企業経営力強化資金を利用する場合で、一定の創業者の要件を満たす方については新創業融資制度を併用することができます。
 新創業融資制度とは、新たに事業を始める方や事業を開始して間もない人に貸付をする制度で、以下のような特徴があります。

〇 利用できる方  
 新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方。
 新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方。

〇 資金の使い道  
 設備資金および運転資金  

〇 限度額     
 3,000万円(うち運転資金1,500万円)

〇 返済期間     
 各融資制度に定めるご返済期間以内    

〇 利率      
 2.36~2.85%(令和3年12月現在)

〇 担保・保証    
  原則、不要  法人が借入れをした場合には、代表者個人には責任が及ばない。
 ※ただし、代表者が連帯保証人となる場合には、利率が0.1%低減される。 

新創業融資制度と中小企業強化資金の違いは、以下のとおりとなります。

➀ 新創業融資制度は、無担保無保証枠を設定する特別な制度
 新創業融資制度は、通常の融資制度に無担保無保証の枠を付加するための制度です。
これに対して中小企業強化資金は、通常の融資制度となります。

 新創業融資制度は、他の融資制度を無担保無保証とするだけのものなので、これ単体では利用できず、必ず他の融資制度とあわせて利用することとなります。
 現在、中小企業経営力強化資金を利用するためには、担保か保証が必要となります。そのため、たとえば、これを無担保無保証で利用したいという場合には、別途、新創業融資制度などを併用する必要があります。


② 両融資は利用できる対象者が異なる
 「新創業融資制度」は、起業前か創業後2期目の申告を行うまでの間で利用できる融資制度です。これに対して「中小企業経営力強化資金」は、創業期の借入れだけでなく、2期目の申告が終わった後の方でも利用することができます。

③ 適用される利用限度額等の範囲が異なる
 中小企業経営力強化資金では、融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)となっていますが、これに対し、新創業融資制度の利用上限額は3,000万円(うち運転資金1,500万円)となります。
 しかし、現在の中小企業経営力強化資金は、利用にあたっては担保か保証人が必要となるため、これを無担保無保証で利用しようとするならば、新創業融資制度をあわせて利用する必要があります。

 そのため、もし、中小企業経営力強化資金に新創業融資制度を併用した場合、利用限度額はどちらの額が適用されるのかといえば、それは無担保無保証で融資を受けるか、もしくは担保などを提供するかにより異なります。
・3,000万円まで無担保無保証で利用したい場合 新創業融資制度の限度額が適用
・3,000万円を超えて融資を利用したい場合 中小企業経営力強化資金の限度額が適用

 新創業融資制度は、そもそもベースとして利用する融資(この場合には中小企業経営力強化資金)を無担保無保証にするために上乗せして使うための制度です。しかし、その利用限度額は3,000万円までとされているため、この額を超える融資については利用ができなくなってしまいます。
 したがって、中小企業経営力強化資金を使って4,000万円の融資を受けたいと考えた場合、4,000万円のうちの3,000万円部分については新創業融資制度で無担保無保証にし、残りの1,000万円について担保提供するというような使いかたはできません。

 このようなケースでは、申込み額全部の4,000万円について中小企業経営力強化資金が適用となるため、4,000万円全体についての担保が必要という形となります。つまり3,000万円を超える融資の場合には、新創業融資制度は利用できないというわけです。
 また、新創業融資制度と中小企業経営力強化資金を併用する場合には、利率についても新創業融資制度のやや高い利率が適用されることになります。

中小企業経営力強化資金を使わない方がよい理由

 以前はいろいろとメリットの多かった中小企業経営力強化資金ですが、令和2年3月に行われた制度改正により、メリットがなくなってしまいました。そのため、現在では利用する価値がほぼなくなってしまっています。

無担保無保証枠の2,000万円がなくなってしまった
 中小企業経営力強化資金は、以前(令和2年3月末まで)まではチャレンジ枠として2,000万円の無担保無保証の枠が設定された融資制度であったため、新創業融資制度を利用しなくとも2,000万円までの金額であれば、この制度だけで無担保無保証の借入れができました。
 しかし、現在では、この制度単独では無担保無保証とならないため、法人が利用する場合にはその代表者の方が連帯保証人となる必要があります。
 そのため、もし、この代表者の連帯保証を外したいのであれば、新創業融資制度やその他の無担保無保証とするための制度を利用する必要があります。

金利の優遇がなくなった
 この制度では、改正前までは1.81%程度の優遇された金利で利用することができました。
 このため新創業融資制度の金利が2.3〜2.8%であることと比較しても1%ほどのアドバンテージがありましたが、現在は一般的な普通金利が適用されるため、以前のような金利面でのメリットもなくなっています。

利用するにあたっていろいろな制約が多い
 中小企業経営力強化資金は誰でも気軽に使える制度ではありません。この制度を利用するには、

・市場の創出・開拓が可能となる革新的なビジネスモデルで、かつ認定支援機関による指導および助言を受けていること

・事業計画書を作成し、「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している方または適用する予定であること
のいずれかの要件を満たさなければなりません。

 しかし、いずれにしても申込み要件のハードルが高く、一般的な小売業やサービス業の方が利用するのはかなり難しいといえます。

融資後にも報告義務がある
 この融資制度を利用した場合には、「事業計画期間内において、年1回以上、事業計画進捗状況を公庫に報告すること」が義務付けられており、この義務を怠った場合には期限の利益を喪失し、借入額が繰上償還となります。

 つまり、以上のことをまとめると、中小企業経営力強化資金は、申込みの要件のハードルが高く(認定支援機関の支援や、中小企業の会計に関する基本要領の利用が必要)、融資後も返済が終わるまで定期的な報告をしなければならないにもかかわらず、特別な優遇措置がない制度であるといえます。
 そのため、もし、創業者の方がこれから融資を利用するのであればこの融資制度よりも、
創業者については簡単に利用できる「新規開業資金」に「新創業融資制度」を併用して利用する、
または申込人が創業者以外の場合には、「普通貸付」に「担保を不要とする融資制度」を併用して利用することをおすすめします。

まとめ

 中小企業経営力強化資金は、以前は、申込みの条件が厳しい代わりに、「2,000万円までの無担保無保証枠がある」「金利が1%以上低くなる」などの優遇があったため、とくに創業者の方にとっては魅力的な制度でした。
 しかし、令和2年3月の制度改正により、これらの優遇はなくなったにもかかわらず、厳しい要件だけが残るという残念な制度となってしまっています。
 このことから、これからこの制度を使って融資を受けるメリットはないどころか、かえってデメリットの多い制度となってしまっているため、もし、創業者の方で無担保無保証の制度を希望する場合には、新規開業資金などに新創業融資制度をあわせて利用することをおすすめします。

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この記事の監修
Scheeme株式会社
ScheemeMAG編集部
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