2006年までの旧商法では、自己破産した人は取締役になれないという決まりがありました。
しかし現在の商法ではこの決まりが撤廃されているので、自己破産してすぐであっても、取締役になったり会社を創業することは何の問題もありません。
公的な金融機関も、再挑戦のための融資制度をいろいろと用意しています。どのようなものがあるのか詳しく見てみましょう。
自己破産しても起業できる
自己破産とは、裁判所に申請を行うことで借金をゼロにしてもらう手続きのことです。
条件は厳しいですが、債務がすべてなくなるため借金苦から逃れて生活を立て直すことができます。
しかし自己破産手続きを行うと、信用情報に事故情報が掲載される、いわゆる「ブラックリストに載る」状態になります。
このため、クレジットカードを作ったりローンを組んだりといった契約を結ぶことができなくなります。
一定期間が経過すれば再び可能になりますが「お金を貸してもちゃんと返せるか分からない人」と見なされ、信用力に難があると判断されてしまうようになるのです。
では自己破産してしまうと、取締役になったり会社を起こしたりすることができなくなるのかというと、そういう訳ではありません。
現在の商法では、自己破産した人が取締役になったり会社を起こすことについては特に規制はありません。
ただし現職の取締役が自己破産する場合は、委任契約が終了するため一旦退任しなければならないという民法上の決まりが存在します。
その場合であっても、間を置くことなく臨時株主総会を開いて再就任することは可能です。
再挑戦のための融資制度
ただし、いくら商法に規制が存在しないとはいえ、自己破産してしまった人は金融機関から信用を失ってしまいます。
つまり創業融資の審査に通りにくくなってしまうのです。
だからといって諦める必要はなく、日本政策金融公庫には「再挑戦支援融資」や「新創業融資」といった過去の事業に失敗してしまった人を支援する仕組みがあります。
しっかりとした事業計画があれば、審査に通る可能性は十分にあります。民間の銀行に融資を断られてしまったとしても、諦めずにチャンスを探しましょう。
日本政策金融公庫の「再挑戦支援融資」は、過去に事業で失敗し廃業してしまった個人や法人経営者が対象です。
再挑戦支援融資には「国民生活事業」と「中小企業事業」があります。
2つあるのは、日本政策金融公庫が「国民生活金融公庫」と「中小企業金融公庫」を統合して作られた組織だからです。
2つの制度は利用対象者や使途、返済期間などの条件はほとんど同じですが、唯一融資限度額が大きく違います。
・中小企業金融公庫の限度額…7億2000万円
再挑戦支援融資を受けることができるのは、「過去に事業に失敗した人」「既に自己破産などの債務整理を済ませている人」「廃業の理由がやむを得ない事情だった人」です。
つまり着服や不法行為によって廃業してしまった人は利用することができません。
また、原則として万が一返済不能になったときの為に、保証人か担保のどちらかが必要になります。開業資金の3割程度の自己資金も必要です。
自己破産をした人はお金に余裕がない人が多いかもしれませんが、あまりに自己資金が少ないと新しく起こす事業に対する本気度を疑われてしまいます。最低限の元手は自分で貯めなければなりません。
利用できる融資は他にも
利用できる融資制度【信用保証協会】
再挑戦のための制度があるのは日本政策金融公庫だけではありません。それ以外の融資制度として、まず「信用保証協会」の制度があります。
信用保証協会とは、大企業に比べてどうしても信用力が弱くなる中小零細企業や個人事業主が、スムーズに事業のためのお金を借りることができるよう保証を請け負っている公的保証機関です。
県や市町村が提供している「制度融資」を受ける場合は、必ずこの信用保証協会の保証を受けなければなりません。
信用保証協会の保証制度には、全国の信用保証協会で共通のものと、各地方自治体の制度融資と結びついたものが存在します。
利用することができれば大きなチャンスとなるので、一度最寄りの信用保証協会に問い合わせを行うのがおすすめです。
利用できる融資制度【商工組合中央金庫】
政府系の金融機関である「商工組合中央金庫」にも再チャレンジのための支援貸付制度があります。
基本的な条件は同じで、設備資金や長期運転資金のためのお金を借りることができます。
商工組合中央金庫の制度で特徴的なのが、貸付限度額が定められていないという点です。
決算書や売上資料、計画書などを元に審査を受け、その上で貸付額が決定することになります。
商工中金とは?商工中金から融資を受ける方法
少し前であれば、会社を一度潰してしまったら一生失敗者として扱われるというのが当たり前でしたが、現在はその常識が変わってきています。
例え自己破産を経験したとしても、公的な融資制度が再挑戦を後押ししてくれるのです。
もちろん綿密な事業計画書や自己資金は必要になりますが、最初から諦めてしまうのはやめて、再起を目指していきましょう。