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銀行融資の流れとは?事前の検討から融資実行後の付き合いまで借り方を全部紹介

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銀行融資の流れとは?事前の検討から融資実行後の付き合いまで借り方を全部紹介|資金調達メディアScheemeMAG(スキームマグ)
皆さんはどのような流れで、銀行が融資を行っているかをご存知でしょうか?通常は、銀行に融資の申込みをするだけだと思いますが、どのような手続きしているのか?、どのような流れとなっているのか?ということを詳しく知ることにより、その後の申し込みに役立つだけでなく、有利に手続きを進めることができます。この記事では、銀行融資の流れと融資実行後の銀行との付き合い方について詳しく解説いたします。
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銀行融資の大まかな流れ

一般的な融資の手続きは、以下のような流れで行われます。

相談

融資の申し込みをする時には、担当者へ事前に相談を行いましょう。
銀行側としてもいきなり融資の申し込みをされても、対応できない場合や希望に添えないという場合も少なくありません。
しかし事前に相談をしておくことにより、ある程度銀行側の考えがわかるだけでなく、役に立つアドバイスをもらうこともできます。

なお、相談の時点では、以下のようなことを確認しておくと、その後に行う申し込みがスムーズとなりやすくなります。
・どのような融資が利用できるのか?
融資の申し込み前に、自分がどのような融資を利用することができるのかを確認しておくことは重要です。これを間違えてしまうとせっかく有利な条件で使える融資を見過ごしてしまったり、借りられる金額や審査にも影響を及ぼします。融資を申し込む前には、自分がどのような制度を利用できるのかを担当者に確認するようにしましょう。

・融資枠や保証枠に余裕があるか?
銀行の融資を利用する場合には、その企業ごとに設定された融資枠が存在するため、この枠を超えて申し込んだ場合、融資を受けることは難しくなります。また、これと同様に信用保証協会を利用する場合には信用保証枠というものがあるため、こちらについても余裕があるかどうかを確認しておくことが必要となります。

・希望する借入額は妥当なのか? 
自分が希望する融資の申込額が、現在の状況から見て妥当なのかどうなのかを確認することにより、申し込みが無駄になることや、審査で否決される可能性を減らすことができます。
企業の中には「そんなことを聞いても大丈夫なのか?」と思う方もいらっしゃいますが、これにより融資に影響が生じることなどはありません。

・融資を受ける際に条件などはあるのか?
企業の状況などによっては、融資自体は OK でも 何らかの条件が儲けられることもあります。
申し込みの段階では条件が明確になることは多くはありませんが、もし条件の提示をされた場合には、事前に検討することができます。

申込み・受付 

銀行では融資の申し込みがあった時には、 ヒアリング(事前の相談があった場合にはその内容)をした上で、融資の申し込みを受け付けるかどうかを検討します。
なお、申し込みがあったからといって必ずこれを受けつけるわけではなく、 企業の経営状況が悪い、返済の履歴に問題があるなどの場合には、この時点でお断りすることもあります。

担当者による起案

融資の申し込みを受け付けた場合には、融資担当者が稟議書の作成をし 、これを上席に回付します。 

上席による決済

担当者によって作成された稟議書は、通常、係長→課長→支店長代理→支店長といった順番で回付され、承認の決裁を取ります。
申し込みの内容が支店の決済権限の範囲内のものである場合には、そのまま融資の実行手続きに移ります。 

本店(審査部)による決済

申し込まれた融資の内容が支店の決済権限の範囲を超えるものである場合には、稟議書が本店の審査部に送られさらに審査が行われます。
審査の結果、役員の判断が必要なものについてはさらに回付されますが、審査部の権限内で対応できる場合には、支店に融資の可否が通知されます。

本店(役員)による決済

審査部で判断できない案件については、担当の役員に回付され判断されることになります。なお、この場合には、どこまでの決済を受けるかにもよりますが、支店決済の場合と比べてさらに2週間から4週間程度の時間がかかります。

支店への連絡・書類の差し戻し

支店の決裁権限を超えるため本店で決済がされた場合には、その結果とともに稟議書が支店へ戻され、支店において融資の実行または否決の処理が行われます。

申込人への連絡・融資契約手続き

審査の結果が出た時には、申込人へその旨の連絡が行われます。
なお、融資が OK となった場合には、金銭消費貸借契約の締結や手形の割引などの 融資の種類に応じた手続きが行われます。

担保設定手続き

融資の条件として土地や建物を担保にとる場合には、対象の不動産について抵当権または根抵当権の設定登記手続きを行います。

融資の実行(資金の振込手続き)

契約手続きや担保権の設定手続きが完了した時には、申込人の指定口座へ決定された融資額が振り込まれます。

事前に自社に銀行融資が合っているか、よく確かめる

銀行で融資を受ける場合にはその企業の業績や信用力だけでなく、 申し込み先の銀行の特長や相性なども考慮しないと、思わぬミスマッチを生じることがあります。
したがって、銀行融資の申し込みをする時には、以下の点について注意する必要があります。

自社の決算内容で本当に銀行融資が資金調達先として適切なのか検討する

融資の審査で最も重要な判断材料となるのが申し込み企業の財務内容です。
そのため、自社の決算内容で本当に銀行融資が資金調達先として適切なのかを検討することも大切です。

一般的に、金融機関からの借入れは次の順で難しくなります。

難易度低 信用金庫や信用組合のプロパー融資
         ⇩
     地銀のプロパー融資
                                 ⇩
難易度高 都市銀行のプロパー融資

そのため、財務内容がよくない場合には、銀行融資ではなく信用金庫や信用組合からの融資に切り替える、保証付き融資を利用するなどの対応が必要となります。

また、これらを含めても銀行等からの融資が難しい場合には、ビジネスローンや民間の手形割引会社の利用なども検討しなければなりませんが、その企業の事業に新規性や成長性があるといった場合には、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルなどからの出資も検討する余地があります。 

日本政策金融公庫や信用保証協会の活用も選択肢に入れておく

プロパー融資の利用が難しい場合には、日本政策金融公庫や信用保証協会の保証付き融資 などの政府系融資を検討しましょう。
プロパー融資では、ある程度の信用や実績、優れた財務内容などが必要となりますが、 日本政策金融公庫などの政府系金融機関では、財務内容の良し悪しだけではなく、企業の実情に即した柔軟な融資をしてもらいやすいです。

そのため計算内容が赤字であったり、既存の借入金額が多少大きい場合でも、「返済ができるだけの売上げの見込みがある」、「事業計画の実現可能性が高い」などの場合には、融資を受けられる可能性があります。

銀行に融資の申込みに行く

銀行融資を申し込みをする際には、あらかじめ基本的な準備をした上で臨まれることをおすすめします。
もし、これらの準備が不十分な場合には、改めて書類を用意しなければならない、 せっかくの申し込みが無駄になるといった可能性もあります。したがって、申し込みのときには、以下のことについて準備しておきましょう。

資金使途と返済財源を明らかにしておく

融資の審査においては、「資金使途」と「返済財源」の2つは最も重要な判断基準となります。
資金使途は通常、「運転資金」と「設備資金」のいずれかとなりますが、それだけでなく具体的にどのような用途で利用するのかを明らかにする必要があります。 また返済財源は、資金使途が運転資金なのか設備資金かにより異なります。

運転資金の返済財源は、「将来的な売上げ」です。そもそも運転資金とは、企業が営業をする上で前もって必要となる仕入れ代金や人件費などです。
そのため、その仕入れや人件費などを使って販売したものの売上げで返済する必要があります。したがって、返済財源が確保できるだけの見通しや計画が求められます。

一方、設備資金の返済財源は、その設備を利用して得られる増産分の利益です。そのため、購入する設備によりどのくらい生産力が上がるかということが重要となります。したがって、設備資金の場合の返済財源については、設備のスペックや将来的な生産計画が重視されます。

決算書は最低3期分用意する(必ず勘定明細書も付ける)

銀行融資の申し込みでは、3期分の決算書を求められるのが一般的なため、漏れがないように準備しましょう。
決算書は部分的なものではなく、勘定科目明細書も含めたすべての資料を提出するようにします。
また、決算書は税務署の受付印(電子申請の場合には、電子申請等証明書など)のあるものでないと、正式な資料として認められません。

なお、一部の企業では「赤字だから申告しない」というケースがありますが、一回でも申告をしないと融資を申込むときに3期分の連続した決算書を提出できなくなっしまうため注意してください。

銀行に初めて訪問するときはその銀行の融資取引先から紹介を受けるのがベスト

はじめての銀行を利用する場合には、できるだけその銀行の融資先企業から紹介を受けておくと手続きがスムーズとなります。
金融機関では犯罪防止の観点などから、はじめての取引先を警戒します。そのため口座を作るだけでも1ヶ月以上の期間がかかることもあります。
しかし、その銀行の取引先からの紹介などがある場合には、融資の手続きがスムーズとなりやすくなります。 

いきなり銀行プロパー融資から依頼するのはハードルが高いことを自覚しておく

銀行のプロパー融資を利用するためには一定の実績や信用が必要となります。
そのため取引の浅い企業や創業企業などではプロパー融資を利用できないことがほとんどです。
また、この場合の実績は融資に関する実績が対象となるため、どんなに長期間預金をしている場合であっても実績とはなりません。

したがって、はじめての銀行融資を利用する場合には、制度融資や信用保証協会付きの融資を利用することから始めるのが一般的です。

銀行融資を受けたいなら消費者金融・商工ローンの利用は避けておくこと

銀行融資を受ける場合には、できるだけ消費者金融や商工ローンの利用は避けるようにしましょう。
これらは金利が高率のため、経営を悪化させる要因となります。
また、銀行審査の際にこれらの利用がわかった場合には、融資を断られる可能性が高くなります。

先に税金や社会保険料の納付もきちんと行なってから申込みに行く

税金や社会保険料の未払い、滞納についても注意が必要です。これらは差し押さえ時の優先順位が高いため、銀行などがとくに警戒します。
また、税金の未納等がある場合には、納税証明書にもその旨が記載されるため、銀行にもその存在がわかってしまいます。
したがって、これらの未納等がある場合には、まずは整理してから融資を申込む必要があります。

銀行の融資審査を受ける

銀行で融資の審査をする際には、関連書類の確認や面談などの手続きが行われます。
しかしこの時にミスや問題のある対応をしてしまうと、審査で不利になったり、結果に悪影響を及ぼすこととなります。
そのため、事前に審査のポイントなどを理解した上で、手続きをすることをおすすめします。
■銀行融資担当者との面談は臆せず誠実に振る舞うこと、特にうそはNG
融資の申し込み時には、担当者との面談が行われることがありますが、その際には誠意をもって正直に会社の状況や今後の見込みを伝えるようにしましょう。
とくにウソや決算書の改ざんなどは、決してしないようにしてください。
もし、それらがばれた場合には、融資が NG になるだけでなく、以降の借り入れが非常に困難となります。
 ■審査中に融資書類で追加書類を依頼されたらできるだけ早めに出すこと
融資の審査中に追加の書類を求められた場合には、できるだけ速やかに提出しましょう。
いつまでも提出をしない場合には、それだけ融資の実行が遅れるだけでなく、審査にも悪影響となります。
また、もし、期限までに準備ができないような場合には、期限間際に連絡するのではなく、早い時期に報告するようにしてください。
■担保にできる不動産、有力な保証人がいれば、先に申し出ていれば審査が有利に進む
もし、担保にできる不動産や有力な保証人がいる場合には、あらかじめその旨を申し出ましょう。
担保や保証人があるかないかにより利用できる融資制度や融資額が変わってくるため、途中で申し出をした場合には改めて手続きをしなければならないこともあります。
また、担保や保証人がある場合には、審査における評価も高くなるため、より良い条件で融資を利用することができます。

銀行融資の契約・融資実行

審査で融資が OK となった場合には、融資の契約や振込手続きなどが必要となります。
しかし、これらの手続きをないがしろにすると、予定の時期に融資がされない、条件を見落としてしまうなどの可能性があります。 そのため契約手続きなどは、以下の点に 注意して行う必要があります。

融資契約書の押印前、かならず契約書の記載内容(特に 融資金額、金利、返済条件等)を再チェックしておくこと

融資契約書に押印する前には、もう一度契約書の内容を確認しましょう。
融資金額や金利、返済期間についての確認は当然ですが、その他にも、違約事項や特別な返済条件が内科などについての確認も必要です。
もし、内容についてよくわからないことや疑問点がある場合は、その場で確認するようにしましょう。

融資に係る手数料や担保設定費用、契約書印紙台などにも注意

融資の契約時には、融資手数料や担保の設定費用、契約書の印紙代についても注意してください。
とくに、融資額が大きい場合には印紙代が予想外に高くなることがあります。また、担保への抵当権等の設定についても、原則、不動産評価額の1,000の4の登録免許税と司法書士への報酬がかかるため、大きな金額となりやすくなります。

したがって、融資の契約をするときには、あらかじめすべての契約費用の見積もりを銀行からもらうことをおすすめします。

融資実行後の銀行との付き合い方

銀行から継続的にスムーズな融資を受けるためには、融資後の付き合い方も重要となります。
銀行は、融資後も企業の行動や財務状況をモニタリングしているため、銀行の協力が得られるよう対応に注意する必要があります。

融資実行後も良好な関係を保つためにするべきこと4つ

融資の際に行った約束は必ず守る
融資を受ける際に何らかの約束をしている場合には、必ずそれを守るようにしましょう。
経営者の中には、融資後にすべきことを約束していてもそれを守らないケースがありますが、このようなことは必ずチェックされ引継ぎされています。
したがって、約束を守らない、期日に大幅に遅れるなどの対応は、後日の融資の際に大きなマイナス評価となります。

決算書は積極的に開示する
企業の中には、決算書の開示を嫌がるところも少なくありませんが、できるだけ積極的に開示するようにしましょう。
通常、融資を受けている企業については、決算書を作成した時点での提出が求められています。
しかし、これを適切な時期に提出しない場合には、銀行から「何か提出ができない理由かあるのでは?」と勘繰られたり、「約束を守らない企業である」などと評価され、銀行との信頼関係を維持しにくくなります。 

債務者区分や銀行格付けを意識した経営をする
債務者区分や銀行格付けは、いずれも融資先企業の業績を評価するための仕組みです。
これらの位置づけが低い場合には、融資が出にくくなる、金利が高くなるなどの条件悪化につながるだけでなく、状況によっては融資が回収されてしまう可能性もあります。

なお、債務者区分や銀行格付けは銀行がこれを決定しますが、その方法は特別な分析や評価によるため、単純に赤字であるとか黒字であるというだけでは判断ができません。そのため、自社の正確な債務者区分や銀行格付けの位置を知るには銀行へ確認する必要があります。

プラスの材料は積極的にアピールする
「業績が上向いてきた」、「特許権などの知的財産権を取得した」、「専門雑誌に優良企業として紹介された」などの企業の業績や評価にプラスとなる材料がある場合には、積極的にアピールしましょう。
これにより銀行の信用が増すことが期待できます。
また、金融庁からの指導においても、このような材料のある企業については積極的に評価すべしとされています。

したがって、このような場合には、担当者へその事実やそれが今後の経営にどのように利点があるのかといったことも含めて報告することをおすすめします。

まとめ

銀行からスムーズに融資を受けるためには、目先のことだけでなく、どのような流れで手続きをしているのかや、どのように付き合っていけばよいのかなどを知っておくことも重要といえます。
企業の中には、取り合えず融資が受けられたらそれでよいとお考えの方もいますが、そのようなことはありません。銀行は融資後も企業をモニタリングしているため、むしろ、融資を受けるときよりもその後の対応や返済の実績が重視されます。

したがって、銀行との関係をよくし、信用を獲得するには、約束や期限を守る、自社の格付けを上げるための努力をするなどといった日頃からの対応が重要となります。

この記事の監修
Scheeme株式会社
ScheemeMAG編集部
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