特に、財務に関する数字は日々チェックして、経営状況により判断することは非常に重要と言えるでしょう。
正しい経営判断を行うために、「予実管理」を徹底することが上手な経営に繋がります。「予実管理」は飲食店や美容室のような個人事業から30人前後の中小企業・数百人以上の大企業も同じく重要です。
リアルタイムの予実管理がしっかりできていれば経営はある程度安定しますし、状況が芳しくない時には早めに打開策を打つことができるのが「予実管理」となっております。
この記事ではそんな「予実管理」について「予実管理のメリット・デメリット」や「予実管理のやり方・方法」などもご紹介しています。
これから起業したい方や現在経営者の方だけでなく、中小企業の幹部の方にも参考にしていただきたいと思います!
予実管理とは
そもそも「予実管理」を簡単に説明すると、
「企業経営をする上で重要な数値目標(予算)をたて、その数字を基準として実際の数字(実績)と比較し、達成状況を把握する経営の手法」をさします。
予算と実績といった言葉で難しく感じるかと思いますが、わかりやすく噛み砕いた言い方をすると「目標と結果」となります。
予算と実績の管理「予実管理」では実際に立てた予算に対して、実績の達成率や運用状況に応じて対策を考え、なぜ目標の予算が未達だったのかを経営者や幹部・スタッフで検討し、予算未達だった原因に対して課題を見つけ改善PDCAを回すことが重要となっております。
課題の要素として
「そもそも立てた予算は経営者の希望に偏っていて、現場とのギャップがないか」
「季節指数や外部要因(政治や経済)に影響を受けていないか」
などあらゆる状況を確認して、目標値とのブレがある場合は修正し、いい部分はより投資していくといった意思決定をしなければいけません。
これは企業を経営していく上で非常に重要であり、長きに渡り会社を経営していく上で超えていかなければいけない経営者の業務となります。
予実管理はなぜ必要なのか?
これまで事業を経営してきた人からすると「予実管理」なんて、やってきていないので必要ない。と言われる方も一定数いらっしゃいます。
しかし、予実管理はという名前でなくとも、簡易的な数値管理はしているのではないでしょうか?
呼び方は予実管理でなくとも経営上、数値管理は必要と言えます。そんな数値管理「予実管理」が必要な理由や目的を順を追ってご説明いたします。
予実管理の目的
企業経営の中で重要な予実管理をする目的として以下の2つになります。
・経営状況を把握できる判断材料/予算達成に向けての営業活動
まず1つ目は、経営状況をリアルタイムでしっかりと把握できる”判断材料”を作ると言うこと。
そして2つめは目標達成に向けた方向を「予算設計」で示して、経営者・現場スタッフが一丸となって予算達成に向けて営業活動をすると言ったことになります。
目標を立てるだけでは予実管理とは言いません。やはり予算をつけた後に目標を達成するまでの過程をチェックすることが大切になります。
しっかりと予算達成までのプロセスを、モニタリングすることで最適なタイミングでの方向修正が可能となります。その結果として、予算目標の達成しやすくなると言えるでしょう。
予算と実績を経営者や幹部が各項目ごとに「日次」「週次」「月次」「四半期」で追っていくことが大切です。
・項目ごとの掛け合わせ・関連具合を見る
また、項目ごとに掛け合わせや関連具合を見ることも重要です。
「AAA 対 BBB」は数字の変化が似ているから、特定の課題を解決することで両者の数字が上がるのでは?と仮説を立てることも可能です。
例として、「売上高」x「予約数」x「ホームページのアクセス数」が挙げられます。
ある飲食店ではホームページ経由の予約が水曜日と木曜日に多くなっていました。
予約が集中する水曜日の、前日となる火曜日にホームページのアクセスが多くなる傾向が数値から伺うことができ、そして予約客の来店は金曜日・土曜日になります。
3つのグラフを並べてみることで、トレンドの山のずれが伺えるでしょう。
つまり、「売上高」x「予約数」x「ホームページのアクセス数」の3指標から売上を増やすために、火曜日にユーザーへのアプローチを集中させるべくWeb広告を出稿してトラフィックを稼ぐことで金曜日・土曜日の売上が上がるのでは?と仮説を立てることができます。
このように、今まで実績の点で見ていた数字分析を、関連したKPI指標と財務指標の横断的な予実管理を活用して線でみることによって、見えなかった課題も浮き彫りにすることができると言えるでしょう。
予実管理で重要な2つの指標
企業経営において効果的な予実管理ですが、予実管理をするにあたって大きく二つの指標群に分けることができます。
企業によって細かな指標は異なりますが、大枠は2つと言えるでしょう。
予実管理で重要な指標【財務指標】
財務指標とは、主に会計上使う指標のことを表します。
例えば、売上高や売上原価といった最重要な指標や、販管費に関する人件費や広告宣伝費、外注費などの変動があり一定数定期的に動く指標を使うことが良いでしょう。
家賃などの固定費を指標にしても変化は見られないと思いますので、できれば変動費を予実管理の財務指標にすることがおすすめです。
もちろん業種によっては大きく変わるかと思います。フランチャイズ展開で多くの店舗を持っており、毎月新規出店を行なっているような企業であれば、店舗家賃は重要な指標になるので、企業にとってカスタムしていくことが必要です。
どの財務指標を使えばいいかわからない方はまずはじめに、会計ソフトなどのデータを入れてみても良いかもしれませんね。
予実管理で重要な指標【非財務指標】
予実管理で使う非財務指標は、言い換えるとKPI(主要業績評価指標)といえるでしょう。
BtoBの企業ではアポイント数や商談設置数、資料請求数など営業手法によって大きく異なるかと思います。また、店舗型の場合は来客数やリピート数、一人あたりの購入点数など様々な指標を用いることができるでしょう。
「POSデータにある来店数」「予約システムにある予約数」「Webサイトのコンバージョン数」「カタログ請求数」「DM回収数」など様々なKPIが企業にはあるかと思います。
また、人事部が担当する人材採用においても「会社説明会開催数」「求人広告経由の応募数」「履歴書の送付数」など非財務指標を活用することができます。
予実管理の進め方
次に実際に、予実管理の進め方をご紹介したいと思います。
全体の目標を逆算ベースで設計
細かな部署やプロジェクトの目標設定の前に、会社全体の経常利益や営業利益から逆算で進めて行きましょう。売上ばかりにフォーカスしてしまうと予実管理ではなく、単なる売上の管理になってしまいますので注意しましょう!
会社の経営では「売上」が最大のゴールではなく「利益」を出すことがゴールとなります。
利益を出すことによって銀行からの融資を受けやすくしたり、内部留保により翌期に大きく事業投資をすることができたりしますので、求める部分は利益としましょう。
また、利益にフォーカスすることにより収益構造の改善にも繋がります。売上高を維持しつつ、コストカットに着目することによって、利益の残り方も大きく改善することができる点が、利益に対して逆算ベースで予実管理をの設計を組み立てるメリットと言えるでしょう。
全体予算を項目毎に分配する
また、利益ベースで目標を決めてから各項目毎に分配して行きましょう。
まずはじめに、財務指標から取り掛かるのが良いと思われます。財務指標から始める理由として、特に売上に関してはこれまでのデータから因数分解しやすく非財務指標に落とし込みやすいからです。
例えば、売上高100万円を目標にした場合に客単価がこれまでのデータから10万円とわかれば10個販売したら良いとわかります。そして、購入率・商談設置率・問い合わせ率などを割返していくと必要な見込み顧客数が導き出すことができます。
あとは、売上目標達成に必要な見込み客数を各月に分配することで、ざっくりとした財務・非財務の予算計画を作ることができます。
これは人材採用や従業員1人あたりの生産性にも置き換えることができるので、ぜひ参考にしてみてください。
財務指標に関する予算項目
大枠の予算組みができたところで、各項目に予算を落として行きましょう。
ここでは、ざっくりと予実管理で使っておきたい「財務指標」に関する項目をご説明したいと思います。
売上
全項でもお伝えしましたが、予実管理において「売上」はどのような企業でも重要となるでしょう。予実管理において売上は部署別・担当者別・プロジェクト別など細かく管理するのも良いでしょう。
仕入原価
財務指標の仕入原価においては、発生主義で記載していきましょう。
予実管理では、会計上の申告などとは違って提出の義務がありません。ですので、会計でいう所の資金繰り表・キャッシュフロー計算書に近いと言えるでしょう。
粗利益
粗利益に関しては、売上高から仕入原価を引くだけなので、簡単に計算ができるかと思います。
しかし、部署別の売上や共通原価など複雑な場合には、売上項目と原価項目を分けておく方が良いでしょう。
人件費
1年間の人員予定を元に人件費の予算を作成しましょう。
人件費は大企業・中小企業どちらでも非常に繊細な部分となります。
特に大企業の場合、全体の人件費予算も大きくなります。また退職金の支払いが重なるとキャッシュフローが厳しくなるので、あらかじめ予定を立てておくのが良いでしょう。
また、細かく人件費を分解するとこのようになります。
・雑給(パート・アルバイト)
・時間外手当
・福利厚生費
広告宣伝費
広告宣伝費の予算は、売上計画やマーケティング計画を元に予算を組みましょう。
広告費を予実管理することでROAS(Return On Advertising Spen)を分析することも可能になります。売上と広告宣伝費を対比させることで、広告の投資対効果を測ることが容易にできます。
ROAS(Return On Advertising Spen)とは?
ROAS(Return On Advertising Spen)とは、広告費に対してどれだけ広告経由で売り上げがあったか成果を計る指標になります。投資した広告費用の回収率を示し、計算して分かるのは広告費1円当たりの売上高です。
非財務指標に関する予算項目
予実管理で使っておきたい財務指標とは別の非財務指標(KPI)についてご説明します。
アポイント数
売上に関連するアポイント数は非財務指標(KPI)として管理しておきましょう。営業マン管理に使っている営業日報やアポイントリストなどを元に予算を設計しましょう。
商談数
アポイント数を管理すると同時に、商談数も一緒に管理できればより精度の高い営業管理ができます。
アポイント率と商談設置率を並べてみることで、どこに課題があるか分析することができます。
成約数(クロージング数)
アポイント数・商談数の後は成約数(クロージング数)も予算項目に入れましょう。
アポイント数>商談設置数>成約数>売上高
上記のように財務指標の売上高を因数分解することができるので、成約数もしっかりと管理していきましょう。
コンバージョン数
コンバージョン数とは、Webサイト経由での問い合わせや相談などの受注に近いユーザー行動をさします。
企業によってはWeb経由のコンバージョンの重要性が変わります。昨今では、BtoBやBtoC関わらず業界の特性によりますが、昨今ではWeb経由でのコンバージョンは非常に重要となっておりますので、できれば管理しておきたい指標です。
アクセス数
ホームページのアクセス数も非財務指標として管理しましょう。
コンバージョンと同じで、Webサイトのアクセス数は企業への興味関心度に関連しています。
エンゲージメント
SNSにおけるユーザーからの、共感や愛着具合をエンゲージメントと言います。昨今では企業のエンゲージメントツールとして企業Facebook・Instagram・Twitterが一般的です。特にFacebookで言えばイイねやシェアなどがエンゲージメント行動として計測してみましょう。
Facebookの場合、「いいね!」・シェア・コメント・クリック(写真のクリック・動画の再生など)のアクションを起こした人をリーチした人で割ることによってエンゲージメント率を調べることができます。
予実比から差異を分析する(伸び率、先月比、前年比)
予算実績は予算を立てて終わりではありません。
経営していく中での実績値をしっかりと予算と比較して分析してみましょう。
個別の項目ごとにみていく場合には、これらをチェックするのが一般的です。
・前月からの伸び率
・実績における昨対比
予実管理をする時の注意点
予実管理をするにあたって3つ注意しておきたいことがあります。
予実管理は社内で定着するまで、これらのことを徹底して実行することが予実管理の浸透させる近道となるでしょう。
現実とかけ離れた予算設計をしない
予算設計の段階で、注意して欲しい点として、現実とかけ離れた予算設計はしないようにしましょう。
予算設計が経営者や幹部の理想で進めてしまうと、現場のスタッフは予算達成のイメージがつきにくく、モチベーションを下げる原因となってしまいます。
実績の確認の段階で毎回予算未達成といった場合には、予算設計に問題があるといえます。
予算設計を昨対比2倍やコスト予算1/2など大きなものにせず、限られた人員で現実可能なものとしましょう。
リアルタイムな実績数値を記入を社内で徹底
実績の記入を怠るといったことは、予実管理を行う上でよく起こる失敗例となります。
月次の実績チェック日をしっかり決めておくことが記入漏れを防ぐ方法として有効です。
必ず問題点・課題の原因究明をする
予算と実績を元に何が「よかったのか」「悪かったのか」のチェックはしっかりと行いましょう。
また、施策を行なった際にはメモとして残しておく事で問題点の解決にも繋がります。
経営者や役員では現場の変化は見えないので、現場スタッフの日報などの些細な情報も時間があればチェックしてみましょう。
予実管理のまとめ
いかがだったでしょうか。
この記事では予実管理に関する手法や手順だけでなく、メリットやデメリット・注意点など網羅的に学習することができたのではないでしょうか?
予実管理は予算案を作ることよりも、
・経営者だけでなく幹部・現場スタッフが実績の記入にしっかりとコミットすること
・予実比を元に課題解決策を検討すること
が重要と言えます。
予実管理は意思決定には役立ちますが、打開策は自社で検討する必要があります。数値根拠を元に意味のあるより良い会議を行い、会社全体でPDCAを回すことが重要と言えるでしょう。