事業計画書を作成しようとした場合に、どのように書けばよいのかわからず、困ったという人も多いのではないでしょうか。
そんな時、役に立つのが「事業計画書テンプレート」です。そこで、今回は、事業計画書テンプレートのメリットとデメリット、また、有効的な使い方について解説していきます。
事業計画書テンプレートは融資に使えるのか?
◆事業計画書テンプレートの「融資」での利用
融資を受けるためには、融資申込書のほか、さまざまな書類の提出が求められますが、事業計画書の提出が必須というわけではありません。
そのため、一般的なテンプレートを利用して事業計画書を提出したからといって融資が受けられないということはありません。
ただ、金融機関によっては、金融機関独自の事業計画書の提出が求められたりすることがあるので、そのような場合には、指定のテンプレートを利用する必要があります。
たとえば、創業時融資に利用される日本政策金融公庫では、「創業計画書テンプレート」というものがあります。
金融機関が指定する事業計画書のテンプレートは、審査の補助書類なので、より事業内容を理解してもらうために、別途オリジナルの事業計画書を提出することもできます。
金融機関にとって資料が多い分にはマイナスの材料にはならないからです。
◆「融資」で事業計画書テンプレートを使う場合の注意点
事業計画書を作成する目的は、
①経営者が自分の事業計画を明確にするため
②従業員や関係企業に対し今後の事業の方向性やビジョンを示すため
③融資または出資といった資金調達をするため
などがあります。
事業計画書は、使用目的によって書き方も変わるので、融資でテンプレートを使う場合は、①や②を目的とするテンプレートを使ってはなりません。
さらに、テンプレートには資金調達でも、創業時のものと、既存事業者が使うものとで違いがあるので、その点も注意が必要です。
利用しようとするテンプレートが融資を対象としたものか、確認してから利用するようにして下さい。
テンプレートには、一般的に次のような項目がありますので、記入方法について簡単に説明します。
(1)会社概要
商号、事務所所在地、電話番号、ホームページ、役員の経歴、事業の概要、主要取引先などを記載します。
なお、創業時は、過去の実績がないので、代表者の経歴が重要になります。
(2)経営理念・事業の目的・将来ビジョン
どのような経営理念や目的があり、将来ビジョンはどのようなものかについて記載します。
教科書的なことを書くのではなく、自分の言葉で起業した思いを表現することが大事です。
(3)事業コンセプト
事業コンセプトは、自社にできること何なのか、どのように社会に貢献できるのかなど、その企業がもつ価値について記載します。
具体的には提供する商品やサービスがいかに優れているかを示すことが重要です。
(4)ビジネスの展開領域
ターゲットとする地域や狙う顧客層を記載します。
なぜ、その地域を選択したのか、ターゲットとする顧客層の選択に間違いがないかについて、官公庁や民間シンクタンクなどが公表している統計データなどを使い客観的な裏付けのある数字を示すことが大事です。
(5)製品・サービス、競業他社の状況
主力となる製品やサービスについて記載します。
また、同業他社の状況について記載した上で、商品の性能や価格など自社の優位性について説得的に説明できると印象がよくなります。
(6)営業戦略(マーケティング)
広告戦略、販売ルート、仕入ルートなどを記載します。いかに商品やサービスが優れていても、それを知ってもらえなければ、商売は成り立たないので、いかに宣伝し、販売ルートを確保しているかを示すことが重要になります。
また、世界展開をする場合には、為替の動向や政治情勢なども分析して示すことができれば、より説得力が増します。
(7)事業上の問題点・リスク
事業を行う上で生じうるリスクについて記載します。法的規制が強化される場合や技術革新の進歩により、業態の存立が危ぶまれるなどがあれば、その内容について記載します。
その他、政治情勢や経済情勢の変化に伴リスクや自然災害に対するリスクについて、どのように対策しているのかについて記載すると好印象になります。
(8)財務計画
今後の、売上計画、売上原価計画、人員計画、設備投資計画、資金繰り計画などについて、具体的な数字を記載します。
できるだけ商品やサービスごとに分類して、計画の根拠となったデータを示すと説得力が増します。
人員計画については、売上計画と連動した合理的なものかが判断されますので、人員確保数に給与や社会保険費を含めてどれくらいの費用が発生するのか具体的に算出して下さい。
事業計画書テンプレートのメリット
事業計画書テンプレートを使うメリット①【必要項目の漏れがない】
事業計画書テンプレートを使うメリットとしては、必要な項目があらかじめ用意されているので、必要事項をもれなく記載することができるという点が挙げられます。
特に、創業間もない企業や事業計画書を始めて書くという場合、何のフォーマットもないとどこから手をつけてよいかわからないと思います。そのような場合、テンプレートを利用すれば、一から作成するのに比べ、はるかに容易に作成することができます。
経営者であれば誰しも頭の中に事業計画はあるはずです。ただ、それを形にすることは容易ではありません。決められた項目を埋めていく中で、不足している点に気づいたり、予想売上や数値計画が甘かったりということに気づくことがあります。
また、自分が思うビジョンを文章にすることで、考え方を整理することもできます。
事業計画書テンプレートを使うメリット②【経営してく上で分析ができる】
数値目標については、事業計画書に記入することで実現しなければならないという強い動機が生まれます。実際にそれが実現しない場合でも、なぜ実現しなかったのかを分析することができるので、事業計画書を作成することは経営する上でとてもメリットがあります。
事業計画書には、市場動向や競業他社の状況なども記載する欄がありますが、マーケティング戦略を行う上で、それらの情報分析が役に立ちますし、予想リスクを書くことで、その対策を講じなければならないことに気づくこともできます。
事業計画書テンプレートを使うメリット③【融資で安心感を与えられる】
テンプレートを使う最大のメリットは、金融機関等の担当者に安心感を与えられるということです。融資担当者などは、事業計画を見慣れているので、定型的な事業計画書の方が見ていて安心感があります。
事業計画書テンプレートのデメリット
事業計画書テンプレートを使うデメリット①【定型的でありきたり】
事業計画書テンプレートのデメリットとしては、定型的でありきたりなものになりがちなので、熱い想いを伝えるのには向かないという点が挙げられます。
本来、経営者が思い描く事業計画は壮大で夢に満ちあふれているはずです。それを素直に表現することが大事なのですが、テンプレートを利用した場合、機械的に項目を埋めていくことになるので、どうしても淡泊なものになりがちです。
事業計画書テンプレートを使うデメリット②【VCや投資家には向かない】
先ほどメリットでは、テンプレートを使うことで金融機関等の担当者に安心感を与えられると説明しましたが、ベンチャーキャピタルが相手のような場合、事業の堅実性だけでなく、事業の革新性や独自性というものが評価されます。
そのような場合に、事業計画書はテンプレートを使うということになると、インパクトに欠け、事業内容のイメージの毀損にも繋がる可能性があります。
リスクもありますが、見たこともないような事業計画書でプレゼンすることで、「この経営者は他の人とは違う」ということをアピールすることができる場合もあるからです。
事業計画書テンプレートを使うデメリット③【融資担当者に事業が伝わらない】
事業計画書のテンプレートをそのまま使うと、事業内容が融資の際に担当者に伝わらないことがあります。融資担当者が全ての事業を理解してることはありません。中には何も知らない事業などもあるでしょう。その事業を融資担当者に説明する時、事業計画書テンプレートを1枚出すだけで、はたしてその事業内容は伝わるでしょうか?
デメリット①でも記載しましたが、テンプレートは定型的でありきたりです。そのまま書いてしまっては、事業内容を伝えるには不足しています。融資の際は、担当者が事業内容を理解し、融資をしても大丈夫と思ってもらわないと融資を受けることはできません。ですので、事業内容を伝えるにはテンプレートをそのまま使うのではなく、別途資料としてオリジナルの事業計画書が必要になるというわけです。
事業計画書テンプレートの探し方
創業融資を受けたい場合、最も代表的なものとしては、日本政策金融公庫の「創業計画書テンプレート」があります。このテンプレートは、下記の日本政策金融公庫のホームページからダウンロードすることができます。
他にも、銀行や信用金庫のホームページにも「事業計画書」のダウンロードサービスがあります。その金融機関から融資を受ける場合には、必ず指定の事業計画書を使わなければならない金融機関の場合、その事業計画書を使う必要がありますが、単にサービスとして汎用性のある事業計画書を提供している金融機関もあります。
いずれにせよ、エクセル等で提供されていることが多いので、その金融機関に限らず加工などして他の金融機関に対して使っても問題ありません。
その他、インターネットで、「事業計画書 テンプレート」と検索すれば、たくさん検索されるので、探すのに苦労することはないでしょう。
他にもクラウドで事業計画書が作成できるサービス「 Scheeme」の利用もオススメです。詳しくは下記の記事をご覧ください。
事業計画書をクラウドで作れるサービス「Scheeme-スキーム」 |
事業計画書テンプレートを有効に使おう
事業計画書テンプレートは、PDF、エクセル、ワード、パワーポイントなど様々なファイル形態で提供されています。加工しやすいという点では、PDFよりもエクセル、ワード、パワーポイントの方が優れているので、こちらを利用した方がよいと思います。
また、用途という側面からいうと、下記のようになります。
・口頭で説明する機会があるのであればパワーポイント
・数値を具体的に示してアピールしたい場合にはエクセル
・事業ビジョンや文章で相手を説得したいという場合はワード
これら用途を踏まえて書式を選択するとよいでしょう。
パワーポイントの注意点は、自由度が高いので、複雑になりすぎないということです。シンプルで見やすいものにするよう心がけて下さい。
ワードの注意点は、表機能が弱く自動計算とかができないので、数値のご入力には注意が必要です。
事業計画書は文字や数字が中心にはなりますが、よりオリジナリティを出すためには、表、グラフ、商品の写真など具体的に事業がイメージできるような内容を含めるとより信頼性がアップします。
◆「融資」「出資」で違う事業計画書の内容に注意
資金調達目的で利用する事業計画書は、相手に事業内容を理解してもらい、出資あるいは融資してもよいと思ってもらわなければなりません。
そのため、自分が書きやすいと思うテンプレートを選ぶのではなく、相手の立場に立って、わかりやすくて、説得的と思えるような内容の書式を選ぶ必要があります。
また、出資を募る場合と融資を申し込むのとでも求められる内容が違うので、どのような目的で事業計画書を使うのかを考えて選ぶ必要があります。
1. 「融資」を申し込む場合
具体的には、融資を申し込む場合、金融機関は、融資したお金が確実に返ってくるかという視点で見てきます。
そのため事業計画書の数値計画の部分が充実しているテンプレートを利用するとよいでしょう。
2. 出資を募る場合
他方、出資を募る場合には、出資者は、出資先の企業が大きく成長するのかという視点で見てきます。
たとえば、売り上げが横ばいで事業に支障がなければ融資としては問題なくとも、投資対象としては不適格と判断されてしまいます。
したがって、出資を募る場合に使用する事業計画書には、
この企業は将来大きく成長すると思ってもらえるかどう
配当をしっかり支払い続けられるくらい利益を出していけるか
上記を論理的に説得する必要があります。
◆良い事業計画書の5つのポイント
良い事業計画書は、5つのポイントがあります。
①適度にスペースがあり見やすいこと
②内容が簡潔でいて情報が網羅されていること
③事業内容が一見して理解できること
④売上計画や資金計画は確実な事実に基づくものであること
⑤嘘がないこと
びっしりと文字や数字が詰め込まれているものは誰も読みたくないので、簡潔であることが重要です。それでいて必要な情報は網羅されていて、どんな事業を行っているかがわかるものでなければなりません。
売上計画などは、どうしても過大で裏付けのない抽象的なものになりがちなので、事実に基づく堅実な数字を示すことが信頼を勝ち取ります。
そして、一箇所でも嘘があれば、全ての信用が失われるので、嘘は厳禁ということです。この点を踏まえて、事業計画書を作ってみてください。
事業計画書テンプレートガイドのまとめ
業計画書は、会社を理解して貰うためのツールなので、利用目的や見せる相手によって、内容を変える必要があります。
ネット上にはたくさんのテンプレートがあるので、まずはどのようなものがあるのかいくつかダウンロードして見てみると良いでしょう。