日本政策金融公庫で借り換えはできない
借り換えとは?
「借換え」とは、ある金融機関で借りた資金を別の金融機関から借りた資金で返済することをいいます。
さらに低い金利で借りたい、返済期間を長くしたいなどという場合に、よく利用されます。
例えば、A銀行で借りた1,000万円の融資を、金利の低いB銀行で借りた資金を使って返済するようなケースがこれに該当します。
また、400万円の借入れがある場合に、600万円を新たに借り入れ、その資金で400万円の返済をし、残りの200万円を運転資金で使うという利用の仕方もできます。
リスケジュールとは異なる
借換えと似た制度として「リスケジュール」があります。
しかし、借換えが現在の借入れを新た借りた資金で返済するのに対して、リスケジュールは経営困難などの理由により、毎月支払う返済の元本を減額してもらう手続きとなります。
これまで10万円/月ずつ支払っていた返済の元本額を3万円/月にしてもらうなどがその一例です。
なお、通常の借り換えでは金融機関の同意などは必要ありませんが、リスケジュールをする場合には、借入先の金融機関の同意が必要となります。
また、借換えは通常の取引であるため、これをしてもとくに問題はありませんが、リスケジュールの場合には取引条件の変更となるため、これを行った場合には、その後の借入れが困難となりやすくなります。
借り換えができない理由
借換えの方法には、次の2種類があります。
① A金融機関で借りた融資を、B金融機関から借りた融資で返済するパターン
② A金融機関で借りた融資を、A金融機関の融資で返済するパターン
日本政策金融公庫では、原則として、このいずれの方法によっても借り換えができません。
このことは、日本政策金融公庫の借入申込書にも次のように明記されています
「原則として、他の金融機関の借入金のお借替えにはご利用いただけません。公庫資金においてもお借換えいただけない制度があります。」
なぜこのような制度になっているかといえば、それは「民業圧迫の防止」のためです。
日本政策金融公庫のような政府系金融機関は規模・資金力が大きく、有利な条件で融資をすることができます。そのため、民間金融機関からの借り換えを認めてしまうと、競争力で劣る民間金融機関の経営を圧迫する要因となってしまいます。
そのため、このような借換えは認められていないわけです。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者は「公庫融資借替特例制度」が認められる
以上のように、日本政策金融公庫での借り入れについては、同じ公庫内での借り換えもできないのが、原則です。しかし、例外的にこれが認められるケースがあります。
その代表的なものが「公庫融資借替特例制度」です。
この制度は、日本政策金融公庫で借り入れをしている方について、社会的、経済的環境や金融機関との取引状況の変化、東日本大震災、令和元年台風第19号等、経営改善、新型コロナウイルス感染症の影響などにより、資金繰りに困っている場合に認められる、公庫内での借替えとなります。
以上のいずれかに該当する方は、次のいずれかの融資への借り換えをすることが可能です。
・経営環境変化対応資金
・金融環境変化対応資金
・東日本大震災復興特別貸付
・令和元年台風第19号等特別貸付
・令和2年7月豪雨特別貸付
・企業再建資金
・事業承継・集約・活性化支援資金
・新型コロナウイルス感染症特別貸付
または新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付
ただし、この制度は、他の金融機関の借入れについては、適用となりません。
また、この場合には公庫の借入れの残債分を新たに借りなおすこととなるため、借換え後の融資については新規扱いとなります。
ただし、本制度の利用には、審査が必要となるため、借り換えができないケースもあります。誰もが無条件に利用できるわけではないことにご注意ください。
公庫融資借換特例制度
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/58.html
追加融資なら資金調達が可能
追加融資とは?
追加融資とは、現在の借入れに追加して、新たに借入れをすることをいいます。
例えば、日本で500万円の借入れをして返済中の場合に、これとは別にさらに600万円の借入れをするケースなどがこれにあたります。
借換えの場合には、既存の融資を新たな借り入れで返済するため、借入の口数は1本のままですが、追加融資を受けた場合には、借入れの本数は2本となります。
追加融資のタイミング
一般的に、金融機関では、既存の借入れがある場合、ある程度の返済実績がなければ追加の借入れを認めてもらいにくい傾向にあります。
そのため、追加融資を受ける場合には
・現在の借入れ額の半分程度まで、返済が進んでいること
・返済期間についても、その半分程度まで期間を経過していること
が望ましいといえます。
追加融資できる条件
なお、追加借り入れは、新規の融資となるため、その時の企業の経営状況について、改めて審査が行われます。そのため、上記の条件を満たす場合でも、業績や返済実績によっては、追加融資が認められないことがあります。
日本政策金融公庫のメリット
無担保・無保証人で融資を受けられる
日本政策金融公庫は、政府系金融機関のため、民間の金融機関とは異なった特徴があります。
1.低金利である
通常、創業者や中小企業などの信用力が低い企業では、高めの金利が設定されることがほとんどです。しかし、日本政策金融公庫の融資ではこのような方であっても一般的な金融機関より、比較的、低い金利で融資を受けることができます。
2.返済期間が長い
返済期間が長いということは、その分だけ金融機関のリスクとなるため、長期になるほど審査は厳しくなります。しかし、日本政策金融公庫は、同様の理由により、中小企業等に対しても長期間の融資を行っています。
3.無担保、無保証の融資制度が充実している
日本政策金融公庫の融資は、原則、無担保・無保証ではありません。
しかし、中小企業が利用しやすいように、借入れを無担保・無保証とする制度が充実しています。
このような制度としては、次のようなものがあります。
「新創業融資制度」
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04shinsogyom.html
創業後2期を経過するまでの創業者の方が利用できる制度で、最大3,500万円まで無担保・無保証で借り入れすることができます。ただし、開業後、税務申告を1期終えていない方については、創業に関する経費の1/10以上の自己資金が必要になるなどの要件があります。
「担保を不要とする融資」
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/dai3fuyou_m.html
担保を不要とする融資は、税務申告を2期以上行っている方が利用できる制度で、無担保無保証で最大4,800万円までの借入れをすることが可能となります。
通常の借入れの際に、これらの制度をあわせて利用することにより、無担保・無保証での借入れをすることが可能となります。
日本政策金融公庫の融資には、以上のような優れた特徴があるため、はじめて融資を受ける方には、とくにおすすめできます。
また、追加融資についても、その企業の実情や実績を見て融資をしてくれるため、赤字や債務超過の企業であっても、その後の返済計画がシッカリとできていれば融資応じてもらえることもあります。
とはいえ、創業者や中小企業が希望通りの融資を受けるためには、シッカリした事業計画書が必要となります。
したがって、もし、あなたが事業計画書の作成に自信がない、専門的なことがわからないということであれば、認定支援機関などのプロのサポートを利用することをおすすめします。
まとめ
日本政策金融公庫は、創業者や中小企業の融資に強い政府系の金融機関です。
低金利、長期返済、無担保・無保証制度などといった特徴があるため、融資がはじめという方であっても気軽に利用できます。
しかし、日本政策金融公庫では、他の金融機関の借入れだけでなく、同じ公庫の借入れについても、一部の例外を除き、借換えを認めていません。
また、追加融資には、ある程度の返済実績や財務内容の良さなどが必要で、誰もが利用できるわけではないため、これらの点にも注意して利用してください。