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制度融資の活用で資金調達の幅を広げよう!審査時間や利用の注意点を解説

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制度融資は、都道府県や市区町村自治体と信用保証協会、そして金融機関の3者が組み合わさることで、低金利の融資を可能とする資金調達方法です。ここでは、制度融資の仕組みやメリットとデメリット、審査時間や利用の注意点について詳しく解説していきます。
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制度融資とは?

制度融資とは、次の3者の連携および協力によって、中小企業もしくは小規模事業者の資金調達をスムーズに行うことを目的とした融資システムです。

・都道府県(または市区町村)自治体
・銀行などの金融機関
・信用保証協会

制度融資には起業を支援する側面もあることから、創業して間もない事業者からの申し込みも受け付けています。

制度融資の仕組みと目的

制度融資の大まかな仕組みは次のとおりです。

信用保証協会⇒事業者 信用保証協会が事業者を保証することで、金融機関からの融資を受けやすくする
事業者⇒信用保証協会 事業者は信用保証協会に信用保証料を納める
都道府県(市区町村)自治体⇒信用保証協会 事業者が納める信用保証料の一部を負担する
都道府県(市区町村)自治体⇒金融機関 事業者に融資する貸付金の金利の一部を負担する
金融機関⇒事業者 低金利での融資を実現
事業者⇒金融機関 借入金を事業収入より返済
信用保証協会⇒金融機関 事業者が返済不能となった際に、事業者の代わりに金融機関に融資金額を弁済

信用保証協会や都道府県(または市区町村)自治体がサポートすることで、金融機関から事業者への融資のハードルを下げることにつながります。

制度融資のメリットデメリット

ここからは、制度融資を受けることによるメリットやデメリットについて紹介します。

制度融資のメリット

制度融資を中小企業や小規模事業者が利用することで、次の3つのメリットが得られます。

・低金利での融資が受けられる
・借入期間が長めに設定されている
・担保や保証人がなくても融資が受けられる可能性もある

低金利での融資が受けられる
制度融資は、都道府県(または市区町村)自治体から融資金額の金利や信用保証料の一部負担により、低金利での融資が受けられる点が一番のメリットと言えるでしょう。
特に創業して間もない事業者にとって、資金調達の強い味方となり得るのは確かです。

たとえば東京都中小企業制度融資の「創業融資」では、以下の条件にて融資が受けられるようになっています。

東京都中小企業制度融資「創業融資」 内容
融資限度額 3,500万円
融資期間 運転資金:7年以内(措置期間:1年以内) 設備資金:10年以内(措置期間:1年以内)
信用保証料の補助 2分の1 ※全事業者が対象

参考資料
東京都産業労働局「東京都中小企業制度融資・制度融資一覧」
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/

融資期間で設けられている「据置期間」とは、利息分のみの支払いが認められている期間です
元金は据置期間が終了した後に支払いを開始できるため、返済の負担が緩和されるという見方もできます。

借入期間が長めに設定されている
制度融資は、借入期間が長めに設定されている点も、メリットのひとつと言えるでしょう。
東京都中小企業制度融資の「設備投資」は15年以内の借入期間が設定可能です。

東京都中小企業制度融資「設備投資」 内容
融資限度額 2億8,000万円
融資期間 設備資金:15年以内 (措置期間):2年以内
融資利率 年1.7%~2.4%以内
信用保証料の補助 設備投資:3分の2 ※全事業者が対象 企業立地促進:2分の1 ※全事業者が対象

参考資料
東京都産業労働局「東京都中小企業制度融資・制度融資一覧」
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/

他にも、埼玉県の制度融資の借入期間は最長で15年となっています。

埼玉県の制度融資 内容
融資期間 設備資金:最長15年 (通常:10年以内) 運転資金:最長10年 (通常):7年以内

参考資料
埼玉県「中小企業向け制度融資・制度融資の概要」
https://www.pref.saitama.lg.jp/index.html

担保や保証人がなくても融資が受けられる可能性もある
制度融資の中には、担保や保証人がなくても融資が受けられるメニューも含まれています。
詳しくは事業者が所在する都道府県(または市区町村)自治体の公式サイトにて確認してください。

制度融資のデメリット

制度融資には低金利融資などのメリットも得られる一方で、次の2つのデメリットも想定されます。

・申し込みから融資実行まで2ヶ月~3ヶ月が目安
・連帯保証人が求められるケースも

申し込みから融資実行まで2ヶ月~3ヶ月が目安
制度融資は、申し込みから融資実行まで2ヶ月~3ヶ月が目安と言われています。
その理由として、金融機関はもちろんのこと、信用保証協会の審査を通過する必要があるためです。
制度融資を利用する際には、余裕を持ったスケジュールで臨むことをおすすめします。

連帯保証人が求められるケースも
制度融資の保証人は、小規模事業者や中小企業の経営者自身が担うことになります。
ただし、配偶者が経営に関わっていたり、経営者自身の健康上の理由などで連帯保証人が求められるケースもあるようです。

制度融資を申し込む前に、都道府県(または市区町村)自治体や信用保証協会の公式サイトにて、あらかじめ確認しておいたほうが良いでしょう。

制度融資の手続きの流れ

制度融資の手続きの流れは以下のとおりです。

1.事業者の所在する都道府県(または市区町村)自治体の窓口に相談
2.自治体の「取扱金融機関」などに融資の申込みを行う(融資申込書の提出)
※自治体や制度融資のメニューごとに提出先が異なります
3.金融機関による審査
4.信用保証協会による保証審査
5.制度融資の実行

制度融資の申し込みが可能な事業者
制度融資の申し込みができるのは、中小企業または小規模事業者です。
従業員数または資本金のいずれかの条件に該当していれば申し込みの対象となります。

業種 資本金 従業員数
製造業など ※建設業、運送業、不動産業を含みます 3億円以下 300名以下 小規模事業者は20名以下
ゴム製品製造業 ※自動車や航空機用タイヤおよびチューブ製造業、工業用ベルト製造業は除きます 3億円以下 900名以下 小規模事業者は20名以下
卸売業 1億円以下 100名以下 小規模事業者は5名以下
小売業、飲食業 5,000万円以下 50名以下 小規模事業者は5名以下
サービス業 5,000万円以下 100名以下 小規模事業者は5名以下
ソフトウェア業、情報処理サービス業 3億円以下 300名以下 小規模事業者は20名以下
旅館業 5,000万円以下 200名以下 小規模事業者は20名以下
医業を主たる事業とする法人 規定なし 300名以下 小規模事業者は20名以下

参考資料「一般社団法人 全国信用保証協会連合会」ご利用条件
https://www.zenshinhoren.or.jp/

制度融資の申し込みの対象外となる業種

業種 摘要
農業 ・荒茶、仕上茶の製造業 ・もやし栽培農業 ・園芸サービス業などは除きます
林業 ・素材生産業 ・素材生産サービス業などは除きます
狩猟業 すべての業種が対象外となりま
漁業 すべての業種が対象外となります
水産養殖業 真珠養殖業は除きます ※加工まで一貫して実施することが条件
金融業、保険業 ・保険媒介代理業 ・保険サービス業を除きます
卸売業、小売業、娯楽業、宿泊業、浴場業 インターネット付随サービス業 風営法や性風俗関連特殊営業に該当するものが対象外となります
飲食業 風俗営業の許可を得ている業者の中でも、公序良俗に反するものが対象外となります。
サービス業 取立業は対象外となります ※公共料金などの集金業務は除きます
学校 学校法人経営の学校は対象外となります。
宗教、政治、経済、文化団体 その他の非営利事業および団体 LLP(有限責任事業組合) NPO法人以外は対象外となります

参考資料「東京都信用保証協会」ご利用いただける中小企業とは 
https://www.cgc-tokyo.or.jp/

制度融資の審査にかかる時間

制度融資の審査にかかる時間は、融資を実行する金融機関によって異なります。
2ヶ月から3ヶ月ほどが申し込みから実行までの期間と踏まえた上で、準備を進めていきましょう。
たとえば、東京都の制度融資(創業融資)のスケジュールは以下の流れで進行します。

1.事前準備(1週間程度)

まずは事前準備として、制度融資の申し込みに必要な書類を取り揃えます。

書類の種類 部数(法人) 部数(個人)
信用保証委託申込書 1部 1部
信用保証委託契約書 1部 1部
個人情報の取扱いに関する同意書 2部 2部
印鑑証明書 申込人:1部 連帯保証人:1部 申込人:1部
商業登記簿謄本 1部
確定申告書(決算書)の写し ※直近2期分 2部
所得税確定申告書の写し ※直近2期分 2部
法人税もしくは事業税の納税が確認可能な書類 1部
所得税もしくは事業税の納税が確認可能な書類 1部
見積書又は契約書の写し ※設備資金の場合のみ提出 1部 1部

参考資料
東京都産業労働局「東京都中小企業制度融資・必要書類」
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/

その他、信用保証協会との面談時に質問を受ける事業計画書や創業計画書も用意しておくと良いでしょう。

2.指定金融機関への融資申し込み

必要書類が準備できましたら、指定金融機関への融資申し込みを行います。
できればまったく取引のない金融機関よりも、預貯金の積立などで利用している金融機関を選ぶほうが、審査に好影響を与える確率が高まるかもしれません。

3.金融機関による書類審査(1週間~ほど)

金融機関は融資申込者から受け取った書類を参考にして、融資が可能であるか否か?について審査を実施。
審査の結果、金融機関の担当者が「融資が可能である」と判断した際には、信用保証協会に次の書類を送付し、次の審査へと進みます。

・信用保証委託申込書
・信用保証依頼書

4.信用保証協会の担当者との面談

続いて信用保証協会の担当者との面談です。おおむね30分から1時間ほどが、面談時間と捉えておくと良いかもしれません。
主に、事業計画書や創業計画書に記載された内容について尋ねられます。

担当者からの質問に対して、なるべくしっかりと答えられるように、事前に面談のリハーサルをしておくのもひとつの方法です。

より申込者の事業を知るために、オフィスなどへの訪問調査を実行するケースもあります。追加資料の提出も想定しておきましょう。

5.信用保証協会による審査(面談から1週間~ほど)

提出された書類や面談時の印象などを元に、信用保証協会の保証審査が行われます。
申込者が融資を受けるにふさわしいと判断した場合のみ、信用保証書を金融機関宛に発行。
融資の実行へと後押しをします。

6.金融機関による融資審査(1週間~ほど)

信用保証協会より信用保証書を受け取った時点で、金融機関の融資は実行へと移ることがほとんどです。
ただし、金融機関によっては、再度融資のための審査を実施する場合もあります。

7.融資の実行

審査の通過後、所定の手続きを経てから、ついに融資の実行です。
融資の実行と同時に、信用保証協会に信用保証料を納めることになります。

東京都信用保証協会の信用保証料を次の表にまとめています。

責任共有制度の対象となる合計金額 ※残高を含みます 信用保証料(年率)
500万円以下 0.27%~1.19%
1,000万円以下 0.33%~1.33%
1,000万円超(担保あり) 0.35%~1.39%
1,000万円超(無担保) 0.45%~1.49%
責任共有制度の対象外となる合計金額 ※残高を含みます 信用保証料(年率)
500万円以下 0.30%~1.38%
1,000万円以下 0.37%~1.54%
1,000万円超(担保あり) 0.40%~1.62%
1,000万円超(無担保) 0.50%~1.72%

参考資料
東京都産業労働局「東京都中小企業制度融資・お申込み条件」
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/

信用保証料は、金融機関からの融資金額(借入金)の金利(利息)とは別に支払う費用です。
信用保証料を納める代わりに、申込者が融資金額の返済が厳しくなった際に、信用保証協会がその時点での借入金の残額を弁済します。

信用保証協会が弁済した借入金は、申込者が信用保証協会に対して返済することになるのでご注意ください。

制度融資を利用する場合の注意点

制度融資を利用する場合の注意点として、以下の3つがあげられます。

・申込は地方自治体だが実際の融資は金融機関が行なう
・信用保証協会の利用は保証料が必要になる
・制度融資は他の融資との併用もできる

申込は地方自治体だが実際の融資は金融機関が行なう

制度融資の申し込みのスタートは、都道府県または市区町村自治体への相談です。
事業者が所在する自治体の窓口に赴き、指定金融機関を紹介してもらうことになります。

信用保証協会⇒事業者 信用保証協会が事業者を保証することで、金融機関からの融資を受けやすくする
事業者⇒信用保証協会 事業者は信用保証協会に信用保証料を納める
都道府県(市区町村)自治体⇒信用保証協会 事業者が納める信用保証料の一部を負担する
都道府県(市区町村)自治体⇒金融機関 事業者に融資する貸付金の金利の一部を負担する
金融機関⇒事業者 低金利での融資を実現
事業者⇒金融機関 借入金を事業収入より返済
信用保証協会⇒金融機関 事業者が返済不能となった際に、事業者の代わりに金融機関に融資金額を弁済

制度融資が低金利で実行される理由として、都道府県(市区町村)自治体が、金融機関からの貸付金の金利や、信用保証協会への保証料の一部を負担する点があります。

つまり、信用保証協会や自治体のバックアップによって、金融機関からの「融資を受けやすくなる」システムということです。
あくまでも借り入れや返済の相手は金融機関であることを忘れてはなりません。

信用保証協会の利用は保証料が必要になる

制度融資では、信用保証協会を利用することによる「保証料」を支払う必要があります。
そのため、実際に申込者が負担するのは以下の費用です。

・融資金額(借入金)+金利(利息)=金融機関への返済金額
・信用保証協会への信用保証料

制度融資の申込者は信用保証料を納めることで、借入金の返済が難しくなった際に、信用保証協会が肩代わりしてその時点での残額を金融機関相手に弁済します。
ただし、信用保証協会が弁済した借入金の残額の返済がなくなるわけではありません
返済先が金融機関から信用保証協会へと変更するだけの話です。

制度融資は他の融資との併用もできる

制度融資は他の融資との併用が可能です。
たとえば日本政策金融公庫の創業関連融資などは、低金利での資金調達へとつながります。

短期間での資金調達を想定した場合、クラウドファンディングや親族などからの贈与、ビジネスローンやファクタリングなども候補となり得るでしょう。

まとめ

ここまで、制度融資の仕組みやメリットとデメリット、審査時間や利用の注意点について紹介してきました。
審査期間が申し込みより2ヶ月~3ヶ月と長期に渡るため、その間の資金調達やスケジュールを踏まえた上で利用することをおすすめします。

この記事の監修
Scheeme株式会社
ScheemeMAG編集部
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