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個人事業主が利用できる融資は?融資の種類と選び方のポイントを解説

個人事業主が利用できる融資は?融資の種類と選び方のポイントを解説|資金調達メディアScheemeMAG(スキームマグ)
個人で事業を行う場合には、さまざまなシーンで資金が必要となります。事業開始の時には店舗の取得費や物件の契約費などが、また、営業をする際には、事務所の家賃、仕入代、従業員の給与などが発生します。そのため、経営をスムーズに始めるためには、目的にあった融資を選ぶ必要があります。この記事では、個人事業で利用できる融資の種類や選び方、注意点についてご説明します。
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個人事業主が利用できる融資の種類

個人事業で利用しやすい融資としては、以下のようなものがあります。

⒈日本政策金融公庫

①融資の特性やメリット

日本政策金融公庫は、民間金融機関の補完を目的として、創業者や中小企業の資金調達の支援を行っている政府系金融機関です。


信用力の少ない創業者や小規模事業者であっても、低金利・長期・無担保無保証で融資を受けることができます。


日本政策金融公庫は、国民生活事業部門と中小企業事業部門の2つに分かれており、個人企業や小規模企業向けの小口融資については国民生活事業が、中小企業向けの長期事業融資については、中小企業事業がそれぞれ対応しています。


※日本政策金融公庫では、農林水産事業への融資も行っていますが、本説明では割愛させていただきます。


日本政策金融公庫の中で、個人事業主におすすめできる融資には、次のものがあります。


・新規開業資金

新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方が利用できる融資です。


融資限度額 :7,200万円(うち運転資金4.800万円)

返済期間:運転資金7年以内 設備資金20年以内

利  率:基準金利を適用。ただし、一定の条件を満たす場合には、さらに優遇金利が適用されます。


 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01sinkikaigyoum.html

・女性、若者/シニア起業家支援資金

女性または35歳未満か55歳以上の方であって、 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方が利用できる融資です。通常の融資より、やや低い金利で利用することができます。


融資限度額 :7,200万円(うち運転資金4,800万円)

返済期間:運転資金7年以内 設備資金20年以内

利  率:原則、特別利率Aを適用。ただし、一定の条件を満たす場合には、さらに優遇金利が適用されます。


 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/02zyoseikigyoukam.html

・一般貸付

創業者の方を除く、ほとんどの業種の方が利用できる、最もオーソドックスな融資です。借入れにあたっては、他の融資のような特別な条件が必要ありません。


融資限度額 :4,800万円(運転資金・設備資金ともに利用可)

返済期間:運転資金5年以内 設備資金10年以内

利  率:基準金利を適用

 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/jiyusij⑷_m.html

・担保を不要とする融資

税務申告を2期以上行っており、担保や第三者保証人なしで利用したい方向けの融資です。なお、個人事業主の場合は、無担保無保証で利用できますが、法人の場合は代表者が連帯保証人となる必要があります。


融資限度額: 4,800万円

返済期間:各融資制度に定めるご返済期間以内

利  率:本融資に専用の金利を適用(基準金利:2.06~2.45%) ※2021.08時点

②必要書類

個人事業主が日本政策金融公庫の融資を申し込む時には、以下の書類が必要となります。(ただし、このすべての書類が必要となるわけではありません)


【創業融資の場合】

・ 創業計画書

・ 代表者の身分証明書

・ 借入申込書

・ 自己資金の確認できる通帳(直近6か月〜1年分)

・ 不動産の賃貸借契約書(事務所等を賃貸する場合)

・ 営業許可書、資格または免許を証明するもの(許認可等が必要な事業の場合)

・ 見積書、契約書(設備を購入する場合)

・ 納税証明書(必要に応じて)

・ 確定申告書(開業後1期間を経過している場合)

・ 試算表(決算時より6ヶ月以上経過している場合)


【通常の融資の場合】

・ 借入申込書

・ 代表者の身分証明書

・ 企業概要書(はじめて日本政策金融公庫を利用する場合)

・ 事業で使用している通帳(直近6か月〜1年分)

・ 納税証明書

・ 確定申告書2期分

・ 試算表(決算時より6ヶ月以上経過している場合)

・ 見積書、契約書(設備を購入する場合)

・ 事業計画書(必要に応じて)

・ 支払明細書(すでに借入金のある場合)

・ 不動産の賃貸借契約書(事務所等を賃貸の場合)

・ 営業許可書、資格または免許を証明するもの(許認可等が必要な事業の場合)

・ 印鑑証明書

③主な流れ

日本政策金融公庫では、以下の流れに沿って融資の手続きが行われます。


⑴融資の相談

はじめて融資を申し込む場合や、特別な事情がある場合には、あらかじめ事業所を管轄する支店で相談することをおすすめします。事前に相談をすることで、今後の手続きの進め方や書類の確認をすることができます。


https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/dai3fuyou_m.html

⑵融資申し込み

管轄の支店に融資の申し込みをします。なお、融資の申し込みは直接、支店に書類を提出する他、郵便やインターネット経由でも行うことができます。なお、創業以外の融資の場合には、担当者から事前に必要書類のチェックシートを渡されるのが一般的です。


⑶担当者との面談

はじめて日本政策金融公庫を利用する場合は、融資申し込み後1〜2週間内に担当者との面談が行われます。面談場所は、支店窓口または事業所のいずれかとなります。面談時にも持参する書類がありますので、担当者の指示に従ってください。ただし、通常、2回目以降の申し込みでは面談は省略されます。


⑷融資の可否についての連絡

面談から1~2週間後に、担当者から融資の可否に関する連絡があります。連絡は、電話または郵送で行われます。


⑸融資の契約手続き

審査の結果、融資がOKの場合は、支店において融資に関する契約(金銭消費貸借の締結、担保の設定手続き等)を行います。


⑹資金の振込

融資の契約が完了した場合は、5~10日程度で融資された資金が振り込まれます。


参考:https://scheeme.com/mag/jfc_a2

https://scheeme.com/mag/jfc_a16

⒉銀行融資

①融資の特性やメリット

申込人の属性や財務内容がよい場合には、銀行からプロパー融資を受けることができます。プロパー融資とは、銀行が信用保証協会などの保証機関を使わずに、自らの責任にもとづいて貸し出しを行う融資のことをいいます。


しかし、プロパー融資は、銀行がリスクを負う貸し出しのため、取引きの浅い企業や信用力の低い企業では利用するのが困難です。

②必要書類

銀行融資の場合の必要書類は、基本的に日本政策金融公庫の場合と同様となります、しかし、通常は、公庫融資の場合よりも多くの書類を求められる傾向があります。

③主な流れ

日本政策金融公庫の場合と同様、支店での相談、必要書類の提出、面談、契約手続き、資金の振込などが必要となります。

⒊信用金庫

①融資の特性やメリット

銀行融資の場合と、ほぼ同様となります。ただし、信用金庫は地元の中小企業を主な顧客としているため、銀行に比べて、プロパー融資が利用しやすいという特徴がある半面、金利などは高めとなります。

②必要書類

銀行融資の場合とほぼ同様となります。

③主な流れ

銀行融資の場合とほぼ同様となります。

⒋制度融資

ほとんどの個人事業では、制度融資を利用することができます。制度融資とは、自治体(都道府県や市町村)と金融機関、信用保証協会の3者が共同して、中小企業の融資を受けやすくするための仕組みです。信用保証協会が公的な保証をするため、保証人のいない企業でも有利な条件で融資を利用できます。

①融資の特性やメリット

制度融資は各自治体が独自に行っている仕組みのため、それぞれで内容や条件が異なります。そのため、それぞれの自治体ごとに、利率が優遇される、信用保証料の補助があるなどといった特徴があります。


制度融資を利用できるのは、その自治体に在住する企業に限られるため、埼玉県の企業が東京都の制度融資を利用することはできません。また、都道府県と市町村の制度融資を同時に申し込むことはできません。


なお、制度融資を利用する場合には、金利とは別に信用保証料が必要となります。

②必要書類

必要書類は基本的に、銀行融資等と同じものが必要となります。ただし、これらの書類以外に信用保証協会へ提出する書類(個人情報に関する同意書、信用保証委託申込書など)が必要となりますが、これらの書類については、ダウンロードできないため、金融機関から入手する必要があります。

また、自治体ごとに求められる書類に違いがあります。

③主な流れ

制度融資の手続きの流れは、窓口の金融機関に融資の申し込みをした後、内容に問題がなければ、信用保証協会の審査に回されます。信用保証協会における審査でOKの場合には、その旨(保証承諾)が金融機関に通知され、金融機関ではこれにもとづき融資を行います。


ただし、制度融資の申し込み先は金融機関の他、地域によっては商工会などとなるケースもあるため事前の確認が必要です。

⒌ビジネスローン

①融資の特性やメリット

ビジネスローンとは、個人事業主や法人を対象とした金融商品です。


事業に必要となる資金が対象となるため、個人の生活資金などでの利用はできません。ただし、事業目的であれば、その使い道が限定されていないのが一般的です。


また、一般的な消費者金融のカードローンは総量規制の対象となりますが、ビジネスローンは事業性の融資であるため、総量規制の対象外となります。ビジネスローンには、財務内容が赤字であっても借りやすい、審査が早いなどの特徴がありますが、その反面、銀行融資より金利が高いところが多く、計画的に利用しないと資金繰りに支障をきたす危険性があります。

②必要書類

ビジネスローン申し込み時の必要書類としては、次のようなものがあります。

・借入申込書

・身分証明書

・年収証明(源泉徴収票等)

③主な流れ

ビジネスローンの申し込み方法には、主に直接、店頭出向いて申し込む方法と、インターネットから申し込む方法の2つがあります。

⒍カードローン

①融資の特性やメリット

カードローンとは、金融機関や信販会社等が発行するカードを利用して借り入れするタイプの融資です。専用貸出機や提携のATMを利用してすぐに現金が引き出せるため、利便性が高く、利用の際に複雑な手続きが必要ありません。


なお、ビジネスローンとカードローンの大きな違いとしては、借入れたお金の利用目的があります。ビジネスローンでは利用目的が事業資金に限られるのに対して、カードローンでは利用の目的が限定されていません。ただし、金利の高いものが多く、利息制限法の上限に近い金利となっているものも少なくないため、事業で経常的に利用することはおすすめしません。

②必要書類

カードローンの必要書類は、ビジネスローンとほぼ同様となりますが金額が小さい場合にはもっと簡単な手続きで利用できる場合もあります。なお、カードローンは限度額の範囲であれば繰り返し借入れ・返済ができますが、利用の手続きが必要なのは、はじめの申し込み時だけとなります。

③主な流れ

カードローンの申し込み方法には、ビシネスローンと同様、直接、店頭へ出向いて申し込む方法と、インターネットから申し込む方法があります。

ファクタリング

ファクタリングとは、企業の売掛金を現金化する仕組みです。厳密には融資ではなく、回収予定の売掛金を業者に売却する手続きとなります(実質的な債権譲渡)。なお、売掛先の信用を調査するため、審査には1日~1週間ほど時間がかかるのが普通です。


ファクタリングには、将来に入金される売掛金を現金化できるというメリットがありますが、取引先に資金繰りが厳しいなどの情報が漏れてしまう可能性があります。


また、一般的に手数料が高額なものが多いことにも注意してください。

少人数私募債(疑似私募債)の募集

少人数私募債とは、企業が自社の信用力にもとづいて、身内や取引先などから資金を調達する方法です。


しかし、無担保・無保証による借入れとなるため、信用力の大きさや協力先の存在などが結果に大きく影響します。一定のルールに従って募集をすれば、証券取引法等による手続きをせずに、取締役会などの決議だけで資金を募集できますが、50人未満に対してしか募集をすることができません。


なお、正式な少人数私募債は株式会社などの会社しか発行することができませんが、個人事業でも、ほぼ同じスキームを利用することにより、これを行うことが可能です。(疑似私募債)

融資を選ぶ上でのポイントは?

個人事業主が利用できる融資には、日本政策金融公庫や制度融資、ビジネスローンなどがありますが、いずれについても、借入れの際には以下の点に注意する必要があります。

・事業性資金の融資にする

カードローンを除き、個人事業主が利用する融資は、「事業資金のため」となるので、個人の買い物や住宅改築などの目的で利用することはできません。そのため、申し込みの際には、事業のどんなことに使うのかといった、資金使途が明確になっている必要があります


もし、個人的な利用が発覚した場合には、融資全額の返還を求められることもあるため注意してください。

・無理のない返済計画をたてて借りること

融資をする側が最も重視するのが「どうやって返済するのか?」、「返済財源はあるのか?」ということです。これがいい加減だったり、根拠がない場合には、融資はされません。これらを明確にするためには、事業計画書の中で「今後の返済の見通し」や「返済の根拠」などを明らかにする必要があります。とくに返済の根拠については、その裏付けとなる資料(契約書や発注書など)により、これを明らかにすることが融資の成功につながります。

・開業届を提出していること

個人事業をする場合には、開業届を提出していることが必須となります。この届出は、個人事業を行っていることの唯一の証明となるため、この届出がない場合には、金融機関から事業資金の融資を受けることができません。


なお、開業届は所轄の税務署以外にも、各都道府県や市町村に対しても提出する必要があります。また、融資を受けるときには、税務署等による収受印が押されたものが必要となるので、届出の際には忘れずに控えをもらっておきましょう。

・確定申告をしていること(税金を滞納していないこと)

金融機関などで融資を受ける場合には、確定申告をしていること、各種の税金について納税をしていることが条件となります。


確定申告については、通常2期分の提出を求められるため、前年に申告漏れがあると融資が受けられなくなってしまうことがあります。また、納税証明書には、いくつかの種類がありますが、個人事業の場合は、通常、次の書類のいずれかまたは両方を提出します。


納税証明書(その1) 納付すべき税額・納付した税額および未納税額等の証明

納税証明書(その2) 所得金額の証明(個人は申告所得税に係る所得金額)

融資にまつわる不安を解消するには?

個人事業の場合、事業の規模が小さい、経営が安定していないなどの理由で、融資に不安を持たれる方もいると思います。


しかし、次のようなことに気をつければ、スムーズに借入れをしやすくなります。


・融資窓口に相談する(各融資の窓口)

銀行などの融資に不安がある場合には、まずは窓口に相談されることをおすすめします。とくに、信用金庫は、地域の創業者や中小企業を顧客としているため、相談がしやすいといえます。


なお、日本政策金融公庫では、事業融資の相談先として以下の窓口を用意しています。


参考:事業資金相談ダイヤル 0120-154-505(行こうよ!公庫)


また、銀行等へ相談をする場合には、以下の点について担当者からアドバイスを受けておくと、その後の手続きが円滑に進みます。


【相談しておくとよい項目】

・どのような融資制度が最適か?

・希望する融資額や、期間、利率

・今後の手続きの進め方について

【相談時に持参した方がよいもの】

・身分証明書

・事業の内容などをまとめたもの

・通帳


・商工会議所などの公的な機関で相談する

各地の商工会議所や商工会では、事業融資や資金繰りについての相談をすることができます。商工会議所等では、各方面の専門家と提携していることから、内容に応じたきめ細かな相談が可能です。なお、マル経融資については、商工会議所等が窓口となっており、申込みにあたっては商工会議所等の審査と推薦が必要となります。

・認定支援機関でのサポートを受ける

認定支援機関とは、正式名称を「経営革新等支援機関」といい、中小企業の支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者を、国が支援機関(税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関等)として認定したものです。認定支援機関には各分野の専門家がいるため、内容に応じた相談をすることができます。


しかし、これらは国の直接の機関ではないため、一部を除き、利用には費用が発生するのが一般的です。

まとめ

個人事業では、法人と比べると信用力が劣るため、資金の調達をしにくい場合があります。

しかし、この記事でご紹介した機関や方法を活用すれば、個人事業であっても、融資をうけやすくすることができます。


ただし、カードローンやファクタリングのような高金利のものは、その後の資金繰りの悪化の原因となるため、本当に必要な時に一時的に利用することをおすすめします。


また、融資を受ける場合には、個人事業であっても、法人と同様の審査がされるため、申込みにあたっては、しっかりした計画と事業の見通しを説明できるようにしておく必要があります。

この記事の監修
Scheeme株式会社
ScheemeMAG編集部
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